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01_07 法具の練習と魔砂の謎


 今、目の前には茂みに潜むイノシシの魔獣、ブッシュボアがいる。

 距離は三ジィ。かなり近い。

 普通のブッシュボアは人を見つけると一直線に突進してくる。

 遠くから突進してきて途中で息切れする間抜けな奴もいる位だ。


 だからブッシュボアは見つけても襲わず、見通しの良い所で遠くから挑発すれば鉄級冒険者でも倒せる。


 けれど目の前のボアは挑発せずに動かず、むしろゆっくりと近づいてきた。

 至近距離から突進すればこっちが避けられないと踏んでいるのか。

 魔獣でも頭の良い奴がいるもんだ。


 長柄鎌を下段にとってしかける。


——バヅッ


 下位魔法のライトニングだ。

 ボアの身体が雷撃で硬直したところに下段から鎌を切り上げ、ボアの右前脚を切り裂くと森に悲鳴が響いた。


「スキルがなくても魔法自体は使えるんだよ」


 魔獣に粋がってもしょうがないな。

 起き上がってなお暴れ回るボアの腹に鎌を打ち下ろし、静かになったところで首にとどめを刺した。


 ブッシュボアの身体は黒い泥となり、煙のように消える。

 一握りの凝血石が残っていた。



   ――◆◇◆――


――ザクッ、ザクッ

――カッカッ、カッ……ザザン

 誰もいない森で一人黙々と作業をしている。


 長柄鎌で下草を刈り、枝打ちをし、ツルをかき切っている。

 要するに、今僕は当初の予定通り、森の掃除をしていた。


「法具の練習すればいいのに、わざわざ森の手入れまでしなくていいのによ」


「いえ、仕事しながらでも練習はできますし」


 モルじいさんが去って行く。

 これは掃除でもあるけれど、法具をつかう練習の準備でもある。


「こんなものかな」


 しばらく掃除して、ため息をついた。

 これでこの森の掃除は終わった事になる。

 土の上は切り落としてきた草木で覆われていて、緑の匂いでむせかえるようだ。


「さてここからだ――発動」


 一瞬で左手にバックラーが現れる。よくわからないけど、バックラー自体も収納・取り出しが出来るらしい。

 普段は指輪だけしていればいいのでとても便利だ。


「収納」


 マジックボックスの入り口『大楯』を目の前に展開する。

 大楯は地面の下一ジィまで広がっている。もちろん土の中の物も回収したいからだ。

 もしかしたらお宝が眠ってるかもしれないと思うとワクワクしてくる。


 この状態で歩き回ると、目の前で刈った草の山が面白いように消えていく。

 ちなみに切り株や土はそのまま残る。

 

 調べた結果、『収納』は枠に収まるものしか収納できない。

 つまり、切り株のように根っこが枠の外に出ているものは収納しない。

 土みたいなぽろぽろしたものは収納できるけど、そのままにしたら他人に怪しまれてしまう。


 そこで僕は『収納』と『排出』を同時にできるように練習した。

 土だけ排出することで、地中の土以外のものを回収できるようになったのだ。

 これは結構難しかった。できるようになった自分を褒めてあげたい。


 この『書庫』がどこまで収納できるのかためすために、収納した枝や草をあえて排出せず収納し続けているけど、もうそろそろ中身を見てみよう。


「んー、まだ余裕があるけど、何が採れたかな?」


 ちょうど良い切り株があったので座って本のページをじっくりみることにする。


・カヴァの小枝

・シルトアイビーのツタ

・ボアベッドの枝

・ボアベッドの枝

・ボアベッドの枝

……


 ページをめくるたびに後悔が増してくる。

 これアイテム一個一個がご丁寧に出てくる奴だ。一個一個出す手間を想像するとうんざりする。


 いや、なにか手はあるはずだ。ジョアン叔父が使っていたものだし。

 もちろん、こんな馬鹿な使い方をしなかっただけ、という可能性もあるんだけど。


「なんとかならないかな……」


 ページに載せた指をぐりぐり動かしてアイテムの順番を変えていると、同じアイテムの名前が重なったときに、文字が明滅している事にきづいた。


「点滅、しているな」


 いつも説明がでる右のページを見るとアイテム説明とは違う色の四角が現れていた。


『すべての同一アイテムをまとめますか? Y/N』


    ――◆ ◇ ◆――


「点滅、しているな」


 いつも説明がでる右のページを見るとアイテム説明とは違う色の四角が現れていた。


『すべての同一アイテムをまとめますか? Y/N』


 同意の印であるYを即座に指で押す。すると、ボアベッドの枝が『ボアベッドの枝×783』に変わった。


「ですよね、この魔道具作った人だってそうかんがえるよね!」


 ほっとした。というか、この方法に気づかなかったら枝783個もいちいち排出していたのかと思うとぞっとした。


 他のアイテムも一括にしていく。よし、ようやくお楽しみの時間だ。


「さて、何が採れているかなっと」


 まあ、生きているものは取れないし、そもそも果物や値打ちモノなんてこんな場所におちているはずがないんだけどね。


……

・小石×147

・平石×40

・イノシシの骨×2頭分

・白蛇の抜け殻×1

・凝血石(低位)×2

・凝血石(魔砂)×584

……

「え、凝血石?」


 モルじいさんが前に倒した後、そのままにしていたんだろうか?

 いや、下位の凝血石はそれで良いかもしれないけど、凝血石(魔砂)ってなんだ?

 気になったので5個くらい出して見た。


「ちっさ!」


 手の平にでてきたのは麦の粒よりまだ小さい。

 太陽にかざして見える赤色で、かろうじて凝血石だとわかるものだった。

 最低位のバグ系の凝血石だって爪の先はあるのに……


 うんうん悩んでいると、綺麗になった森の入り口からモルじいさんが歩いてきた。


「この森はこんなに綺麗だったか?」


 しきりに首をひねっている。


「綺麗って、そりゃ掃除したんだから綺麗でしょう」

 

「いや、掃除はいいんだ。入り口に積み上がっていた葉っぱや枝はお前がやったんだろう。そうじゃなくて、魔素が『ない』んだ」


 魔素がない?


「まぁ、森はたくさんあるし、俺の勘違いかもしれん」


 年かのう、とモルじいさんはため息を一つついて切り株に座った。

 ちょうどいい、さっきの凝血石を見てもらおう。


「あの、こんなのがみつかったんですが……」


 切り株の上に下位の凝血石、それから手の中の凝血石(魔砂)を並べた。

 モルじいさんを顔を寄せてそれらをまじまじと見る。


「低位の魔石はボアかスネークだろう。手負いがここに逃げ込んで死んだのかもしれんな」

「こっちの粒はなんですか?」


「その粒は古戦場でたまに見つかるやつだ。大規模魔法などでは一部の魔素が燃え残る事がある。まあこの森なら二、三粒はでるだろうが、とくべつ珍しいわけでもないし、使い道もないからなぁ。ま、記念にでもとっとけ」


 帰るか、と、モルじいさんがさして興味もなさそうに歩いていってしまったので、言いそびれてしまった。


「これ、二、三粒どころか百個単位であるんですけど……」



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