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03_06 浜辺での魔獣討伐

 今日は曇りだったので、討伐系の依頼をこなすため海岸に来ている。


「うわ……」


 クローリスが引くのも無理はない。海岸に白いエビが羊の群れのように歩き回っているんだ。

 僕だって引いてるわ。


 こいつら、本来は海底にいるんだけど、なぜか大量に打ち上がってきたらしい。

 戦闘の記録がないから調査をしながら討伐する、というのが仕事だ。

 

「気持ち悪いけど、今日はこいつらを討伐しなきゃいけないんですよね。久々にやってやりますよ!」


 クローリスのやる気は十分だ。

 生産職志望だった彼女だけど、それは銃剣という武器が見つからなかったせいで、本来戦いが嫌いなわけではなかったらしい。

 今日は銃剣でどういう動きをするのか見せてもらおう。


「リオン、そいつらってどれくらい強い?」


 先に何体か倒して強さを見ていたリオンにきいてみる。


「ソフトシェルロブスターの足は戦闘中でも全然遅いよ。斬撃には強いけど、刺突には弱いかな。ただ、ソードロブスターがまじっているよ」


 リオンが近くをはっていたエビの頭に剣を突き立てると、剣はあっさり貫通し、エビは黒い泥と凝血石に変わった。

 ソフトシェルロブスターという名前の通り、甲羅は全然硬くないらしい。


「じゃあリオンはソードロブスターを優先して倒しておいてくれ」


 うなずいたリオンが群れの中のソードロブスターを倒して回っていく。

 これで安全に討伐できるな。


「ところでクローリス、銃剣道で使う槍ってこれでいい?」


 僕は前に古城で入手した「朽ちた槍×5」を「精巧な短槍×2」に変え、一本をクローリスに渡した。


「そうですね。動きだけならこれでも再現できます」


 銃剣道ってスキル名から、銃と剣を両手にもって使う武術だと思っていたけど、話を聞いてみるとどうも違った。

 銃で中距離攻撃をした後、敵に肉薄された時のために銃の先に付ける刃物を銃剣というらしい。

 銃剣道はその刃物をつかった近接戦闘技術の事だった。


 一ジィほどの長さの銃の先にナイフ以上の長さの刃物を付けるので、剣というよりは槍に近い動きをするという。


 その動き次第で、銃に丁度良い刃物を付けよう、という話になっている。


「さて、じゃあ行きます!」


 突進したクローリスは素早い突きでロブスターを倒す。

 続けて周囲のロブスターを倒していく。

 その動きは直線的で素早く、上中下段に突きも使い分けている。

 

 ただ一方で、槍を頭上で構えて回転させてから穂先でロブスターの頭を叩いたり、槍の柄をしごいて間合いを変えて切りつけたりしては首をひねっている。


「クローリス、どうした?」


「んー、実は私が元の世界で使ってた主武器って長巻っていう武器なんですよ。その動きも試してみたんですけど、やっぱり槍とは勝手が違うみたいですね」


「長巻?」


「薙刀の親戚、というか、この世界だとグレイブが近いんですけど、刀身が曲刀なんですよ。銃剣でその動きができればいいなと思って試してたんです」


 そういってまたクローリスが槍を回す。実に手慣れた動きだ。

 なるほど、複数の武器の心得があるなら試したくなるよな。


「曲刀って、この二本ならどちらが近い?」


 ティランジアの片手曲刀とホウライ刀を書庫から取り出してみせると、クローリスがホウライ刀の方に激しく反応した。


「日本刀! こっちの方です」


 受け取って丁寧に鞘から抜くと、クローリスはなにやら恍惚な表情を浮かべ始めた。


「うわぁ……こういうのが使えるなんて、異世界きてよかったぁ……」


 切っ先を曇り空に向け、上から下までゆっくりと見ていく。

 クローリスの反応をみると、やっぱりこのホウライ刀は良い物なんだろうな。

 というか、好きすぎないか? いつまで見てるんだ?


「クローリス、それを銃に取り付けても銃剣になるのか?」


 さっきの動きを見る限り、クローリスは突くより斬る動作に慣れている。突きが主体の銃剣道のスキルと長巻の斬る動作を組み合わせば面白いんじゃないかな?


「そうですね。スキルが発動するなら、ぜひこの形の刀を使いたいです。さすがにこの名刀そのものを使うのは恐れ多いですけどね」


 ホウライ刀をかえすクローリスは上機嫌だ。

 この様子だと、上質なホウライ刀はクローリスのものになりそうだな。


「わかった。とっとと討伐を終わらせて、明日街の鍛治屋にいこう。装備も新調しなきゃいけないしな」


「ザート、ソードロブスターを倒し終わったよ!」


 リオンと合流した所でソフトシェルロブスターを一掃する。


「ロックニードル・ケントゥリア!」


 空に出した大楯からロックニードルの雨をソフトシェルロブスターの群れに降らせると、殆どのロブスターが身体を泥と凝血石に変えた。


「ロックニードルを一度に百発って、チートですね……」



 その後ギルドにもどり、頭数や調査結果を提出すると、結局ソフトシェルロブスターの報酬は五万ディナになった。

 

 新たに同じ宿に泊まることになったクローリスを加え、三人で宿に向かう道を歩いている。

 早めに帰る事ができて気分がいい、と言いたいところだけど、ブツブツと隣からなにやら聞こえてくる。


「魔法一発で五万ディナ……魔法一発で五万ディナ……」


 たしかに弱い魔獣に範囲攻撃をしたから大多数を倒せたけど、簡単なのは魔法のせいじゃないんだよ。


「クローリス、リオンがソードロブスターを先に倒していたのは何でだと思う?」


 急に話を振られて驚いたのか、クローリスが目を白黒させる。


「強い敵だから……ですか?」


「ソードロブスターはやっかいな敵なんだ。硬い殻で体当たりして、よろめいた瞬間に剣状の頭を振り回してくる。けれど、狭い場所ならそういう攻撃方法ができない」


「あっ、リオンはソフトシェルロブスターを障害物にしてたんですね!」


「そう。もし順番を逆にすれば、ソフトシェルロブスターを倒した後、高速で動き回る八体のソードロブスターを相手にしなきゃいけなくなっていた。僕らは安全に、楽に魔獣を倒すようにしている。だから戦術は大事なんだ」


 僕とリオンはあまり打ち合わせをしてこなかったけど、クローリスもこれから戦闘に参加するんだから、事前にしっかりする必要があるな。


   ――◆◇◆――


「それじゃ、今日は銅級冒険者としてふさわしい装備を整えに行こう!」


「「おー!」」


 今日は快晴、カラリとした暑さの中、グランベイ北部、要塞の麓にある工房街に向かっている。

 こういう買い物イベントはみんなで行った方が良いよね。

 絆が深まるのもあるけど、みんなで吟味すれば衝動買いなどを防げるからね。


「ねぇザート、買う物の順番ってどうなってるんだっけ?」


 歩きながらリオンが予定をきいてきた。

 クローリス加入のせいで後回しになっていた武器の新調を楽しみにしているから、待ち切れないないんだろうな。


「まずは宿で世話になっているヨハネス商会に紹介された、フルト甲冑工房で防具の追加・新調をするよ。調整があるから早めに行っておいた方が良いからね」


 僕とリオンは領都である程度整えているけれど、夏の沿海部が予想以上に暑いし、もう少し弱点を補強する必要がある。


「私の装備を全額パーティの資金でそろえてもらっていいんですよね? いまさら分割払いとか言ってもききませんよ?」


「いわないって。途中加入でも装備品はパーティの資金からだすよ」


 クローリスは一から装備を調える必要があるけれど、命には代えられない。昨日の動きから、僕とリオンほど近接戦闘は得意じゃないから、弓兵の装備をベースにすることになりそうだ。


「それが終わったら、ウーツ工房で武器を見る。具体的にはリオン用の粗製のロングソードと、クローリスの銃剣の部品にする粗製のホウライ刀を手に入れる」


 銃の情報はまだ秘密にしておいた方が良いから、刀の銃剣への加工は鍛冶屋には頼まず、素人仕事だけど僕がやることにした。


「最後にフルト甲冑工房に戻って装備を受け取ったら一旦解散しよう」


 いくらパーティでも四六時中一緒にいたら疲れるし、プライベートも大事にしたいからね。



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