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03_02 押しかけ生産職(元受付嬢)


 騒ぎの収まった会議室で、レーマさんが依頼を冒険者パーティに振り分けている。

 

「次、北岬要塞の歩哨を希望するパーティは……いないですね。では『タイホウの志』に依頼します。よろしいですか?」


「しょうがないですね」


「グランベッリの収穫は、『プラント・ハンター』か『青のアルバトロス』にお願いしたいのですが、『青のアルバトロス』、頼めますか?」


「うーす」


 流れるように振り分け作業が進んでいく。


「港湾整備……はちょっと無理ですね。ポーション作成は……」


「はいはいっ! やりますやらせてください!」


 となりで明緑色の元・受付嬢がやかましく手を上げてアピールしている。

 そんなに騒がなくても生産系の仕事を受注するパーティは他にいないよ。


「はい、ポーション作成は『プラント・ハンター』に依頼……と」


 ここまで、『プラント・ハンター』による生産系依頼の受注率は百%だ。

 依頼はすべて、さっきからうるさい受付嬢がこなす事になっている。


 つまりどういうことかというと、受付嬢、もといクローリスがプラント・ハンターに加わることになった。

 ギルドマスターのレーマさんから”籍を置くだけでもいいから”と頼み込まれて押し切られた格好だ。


 そして早くも後悔している。

 たまっている生産系依頼がここまでとは思っていなかったのだ。

 今回は討伐系依頼は諦めることにしよう。



「それじゃあ、新しいパーティメンバーを迎えたプラントハンターにかんぱーい!」


 リオンの声とともに三つのジョッキがガツンとならされる。


「この不肖クローリス、身を粉にしてがんばります!」


 テーブルの向こうから身を乗り出してエールのジョッキをガツンとぶつけて笑うクローリスはご機嫌だ。


 ここはギルドや商会倉庫と海の間の広場。

 夜限定でテーブルが並べられ、飲み食いに使えるらしく、魔導灯の光の下で照らされた周囲には夜店がでている。

 夜の潮風のなか、冒険者の他にも水夫や荷運び労働者も加わって、賑やかに食事をすることができる。


「これだけの人数が飲み食いしているなんて、壮観だな」


 立ったまま喉を鳴らし、一息ついて見回すと改めて人数の多さに驚く。

 そこかしこで僕らと同様、立ち上がって乾杯する姿がみられる。


「夏のグランベイの風物詩らしいですよー。雨の日以外は殆どの食堂がこっちに店を出すって」


 白のチュールスカートにワインレッドの巻きスカート、白の七分丈のシャツにごく薄いラベンダー色のケープという、見た目の割に大人しい街着をきたクローリスが、モスボアの白腸詰めにプツリとかみつきながら解説する。


 なるほど、食堂自体がこっちに出店しているのか。


「ねぇねぇクローリスさん、その髪の色、どうなってるの?」


 リオンがクローリスに詰めよって質問していた。

 たしかに、僕も気になっていた。

 ギルドにいた時、クローリスの髪は明緑色だったのだ。

 しかし今の彼女の髪は暗青色、この魔導灯の光のしただと実質黒髪だ。


「ふふー、それはねー」


 得意げなクローリスが、青色の石がはめ込まれた木製のヘアピンを外す。

 そして、革の巻きスカート風バッグから水色の石がついた銀のかんざしを取り出し、さして髪をまとめた。


「私が開発したオシャレ魔道具で変えてるのです!」


 クローリスがドヤ顔で説明している間に、額を出して左側に流していた黒い髪の色が抜け、またたくまに銀と水色の髪色になってしまった。


「どうです? こうやってインナーカラーを入れると可愛くないですか?」


 手ぐしで髪をすくと、クローリスの銀髪の内側が明青色になっているのがわかる。


「可愛い! クローリスさんすごいよ! 認識系の魔道具ってつくるの難しいんだよ?」


「やだなぁ、クローリスとか呼び捨てでいいですよー。あ、でもクロちゃんはやめて。トラウマがあるから」


 なるほど、魔道具だったのか。そしてリオンとすっかり仲良くなったな。


 夕食を食べながら身の上話を聞くと クローリスは帝国から流れてきたらしく、グランベイに入ってから冒険者になろうとギルドに立ち寄ったらしい。


 ブラディアの冒険者は皆、領都で登録し、ブートキャンプをすると思われているけど、他の地方のように、既存のパーティに入れてもらいそのまま冒険者になる事も可能だ。

 ただこの方法は入れてもらったパーティの活動に十分な貢献をするのが前提になる。


 クローリスは生産系のスキルは持っていても、戦闘はからっきしだったらしい。

 いくつかの戦闘系パーティに入れてもらったけど、実力不足とすぐ追い出された。

 そこでギルマスに泣きついて、生産系の仕事をするパーティが現れるまで、受付嬢のバイトをして食いつないでいた、というわけだ。


「私だってたくさんスキルをもらったんだから戦闘職もできるんですよ? でも武器がないんです! 私のベースの戦闘スキルが銃剣道だけなんですよ。銃のない世界でこれってどんな罰ゲームです⁉」


 酔いに任せてクローリスが愚痴を吐き出しているっぽいけど、ところどころ分からない単語がでてきた。


「”銃”ってなんだ?」


 とりあえずきくと、あ、わかるわけないですね、とつぶやいてから説明してくれた。


「ええと、筒から鉄を打ち出す弓? で伝わります?」


 ん? 筒から鉄を打ち出す?

 真っ先にシド港でサイモンが使っていた武器を思い出した。


 ロックウォールを貫通したほど強力な武器だ。

 二度目はロックウォールの後ろに大楯を展開して弾を収納していたけど、あんな武器をバルド教徒が多数持っているなら分析して対策を練らなきゃいけない。


 そう思って、僕はサイモンを倒した時に奴らがもっていた武器を収納していたのだ。


「銃ってもしかしてこれか?」


「あーーー!! あるやないですか銃!」


 バックパックから出して見せた結果は、どうやらあたりらしい。

 周りの人がいっせいに振り向くほどの大声でクローリスが長い筒を指さしていた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 美味しそう。プツリという表現がとても良いです。 パンパンな粗挽きソーセージ食べたくなるね。 〉白のチュールスカートにワインレッドの巻きスカート、白の七分丈のシャツにごく薄いラベンダー色のケ…
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