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法陣遣いの流離譚  作者: 空館ソウ


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08_55 女神が指揮する空の戦い(シャスカ視点)

(シャスカ視点)



『疾く戻れ。竜騎兵の斥候より報告があった。アンギウムに隊列を整えた亜竜種の群れが迫っておる』


 ザートに状況を伝え、いくつか言伝てを頼まれた後に通心を切り視界を青から正常に戻す。

 ザートめ、我を伝令代わりにするとは不敬じゃが、非常時ゆえ目をつむってやろう。

 さて、奴が戻るまでやるべき事をするか。


「シャスカ様、団長は今どこに?」


「うむ、奴も敵の動きに感づいたのか、すでにティランジュからこちらに向かっておるとの事じゃ。いくつか指示を頼まれたので伝えるぞ」


 敵の群れを見つけてきたボリジオの問いに答え、階段の下の面々に目を向ける。

 神殿の前に集まったのはジョアンを筆頭とするウジャト教団の信徒、バスコら伯軍の幹部、エンツォをはじめとする戦える開拓者の顔役達だ。

 よもや我自らが手勢を指揮することになるとはのう。


「まず現状じゃが、黒竜ザハークに率いられた複数種の竜種の群れが魔物を乗せ、ゲルニキア教国軍とともにアンギウムに向かっておる。竜種の種類についてはバシルら竜騎兵が確認中じゃ」


 ザートによればサロメはザハークの傀儡と化していたらしい。力を完全に失ったとはいえ、神であるサロメがザハークに従っていたというのが腑に落ちないが、今考えても仕方が無い。


「おいおいまずくないか? 亜竜の群れはともかく、黒竜は真竜で、しかもジョンさんやザートと同じ神の使徒なんだろう?」


 普段の酒場の亭主姿ではなく腰に二刀をさした黒い革鎧姿のエンツォが腕組みを解いて聞いてきた。


「確かに敵の中でも黒竜ザハークは別格じゃ。けして正面から戦ってはならぬ。ただ、黒竜もわざわざ軍勢を伴ってきておるのに初手をみずからつける事はすまい」


 アンギウムを壊滅させるだけならばザハーク一人でも可能だ。それをしないという事は軍勢に戦わせる事に何かしらの意味があるのだろう。


「ザハークを倒す術はザートが持っておる。我らがすべきは奴が戻ってくるまで竜種の群れと戦い続ける事じゃ」


「アンギウムについては長城壁の外側にコリー達がつくっておいた防御陣地があるのでそれを使う事になるだろうが、統制のとれた竜種にどう対処するんだ?」


 普段は船に乗っているバスコが手をあげてきいてきた。


「敵は軍隊でいう所の兵種ごとに進軍しておる。やつらが攻城戦用に軍を編成する前に叩く」


「具体的には? 私の開発した設置型魔弾はどう使うのが最適かしら。先制攻撃としてか陣地に引き込んで使うかでだいぶ設置方法が変わるのだけど」


 すっと手をあげたミンシェンがぐいぐい詰めてくる。

 うぬぅ、悪気がないというのが一層質が悪い。

 


 あのあと、細かい戦の流れについてザートの指示をもとに何とか話をまとめ、各自を行動にうつらせた。

 いま我はジョアンと共にボリジオのマコラに乗って侵攻しつつある敵を目指している。

 不在のオルミナに代わり、今竜騎兵隊を率いているのはボリジオだ。

 能力でいえばバシルの方が上らしいが、奴は人格に問題がある。その点理性的なボリジオは安心だ。


 それに、今から始める作戦ではバシルにやってもらうことがあるしのう。


「ふふん、さしずめマコラは旗艦という所じゃな」


 ぺしぺしと背中を叩くとマコラはチラリとこちらを見て一鳴きした。うむうむ、愛い奴よ。


「あんまはしゃぐんじゃねぇよ。俺らが失敗すれば敵の飛竜種がまともにアンギウムを襲うんだからな?」


「わかっておるわ。まず制空権を奪わねば地上の奴等を分断する事もかなわぬ」


 ジョアンに言い返しながら腰につけた安全帯を確認していると、アンギウムに残した面々を思い出した。


「時にボリジオ、カレンの様子はどうであった?」

 

「竜に乗せるのはもちろん、地上での戦闘もおぼつかないので神殿の衛士隊と一緒にいるように言っておきました」


 素っ気ないボリジオの声に少し苦いものが混じる。同僚の現状に思う所があるのだろう。

 本音をいえば空中での立体的な戦闘に優れているカレンには随伴兵として来て欲しかった。


「やはりチャトラの卵が孵らないのがひびいておるのかのう……」


 ザートが竜の実を融合させたガロニスの卵からはディアガロニスが孵化しているが、第一に試したチャトラの身体にあった竜の実を融合させた卵は未だ孵化していない。

 今も孵らぬ卵を抱いているカレンを皆が心配している。


「シャスカ様、敵影が見えて参りましたのでご準備下さい」


 ボリジオの言葉に慌てて前を向く。

 いかん、物思いにふけっておった。

 今ここは戦場じゃ、ふぬけておる場合では無い。

 頬をぴしゃりと叩き、マコラの背の上に立って遠方を望むと大小の飛竜種の影が見えた。


「我らの竜騎兵隊も増えたが、向こうの飛竜種の群れもずいぶんと多いのう」


「なんですかシャスカ様、もしかしてびびっちゃいましたか? 確かにあの中には初見の飛竜種もいるかもしれませんがね」


 慌てて振りかえると、右後方からキビラにのったバシルが近づいてきた。

 こやつまた風の魔法で音を拾いおったな!


「うるさい! 盗み聞きなどせず、お主はとっとと準備せい!」


「へいへい……っと」


 肩をすくめたバシルはバイザーを下げ、鞍の形を戦闘用に変えた。

 バシルにあわせて他の竜騎兵達も準備を始める。

 一連の動きには迷いがない。例え初見の飛竜がいようともやることは変わらぬ、という事か。

 よし、我も腹をくくるか。

 鼻から息を吸い、口から吐ききると同時に半眼を見開く。


「バシルよ、せっかくさきがけの功を立てる機会を与えてやったのじゃ、しっかりつとめよ!」


「おう!」


 バシルの気合いにあわせ、右手をたかだかとあげる。

 ミンシェンとクローリスにつくらせた青の戦装束は蒼天にあってなお鮮やかだ。

 柔らかにたなびく袖を戦旗とし、右手を前に向かって振り下ろす。


「始めよ! ウジャトの敵、ザハーク軍を打ち破るぞ!」


いつもお読みいただきありがとうございます。

作戦の中身はザートと各幹部が決めているのでシャスカがなんちゃって指揮官です。

でもなんだかんだで愛されているので号令をかけると兵士の士気はあがるのです。


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