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法陣遣いの流離譚  作者: 空館ソウ


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08_04 シリウス・ノヴァでの新しい生活(4)

「……なにが『お土産期待してまぁす』だよほんと」


 メリッサさんの研究棟を出た後、僕とスズさんはシリウス・ノヴァから続く空堀を歩き、離れた場所まで来ていた。

 ゴツゴツした岩の丘を登ると切り立った崖が眼下に現れる。

 ここは以前シリウス・ノヴァの建材の石を採掘した場所だ。

 広さ二百ジィ四方、深さ十ジィの穴は落ちれば人でも魔獣でも出る事はできない。


「そう文句を口にする割には、最近エヴァに甘くありませんか?」


「心外な事言うな。向こうが慣れ慣れしく接してくるんだ」


 以前は僕がリュオネの近くにいると殺意を向けてきたり、時々本物のナイフを向けて脅したりしてきたけど、最近はそれが反転したかのように親しげに接してくる。

 リュオネの伴侶として認めたからなんだろうけど、少しなめられている気がしなくもない。


「……殿下の機嫌を損ねないようにしてくださいね」


「気をつけます」


 結婚してからのリュオネは以前より少しだけ独占欲が強い。

 もちろん、エヴァみたいに病的なものではなくて、健全なものだ。

 じーっとにらんできたり、尻尾を当ててきたりしてアピールしてくるので、正直いって可愛い。

 機嫌が直るのにちょっと時間がかかったりするけど、後に引かないのはパーティを組んだ最初のころから変わらない。


「義弟よ、顔がだらしなくなっているぞ」


 視界の端にうつった銀髪に視線を落とすと、横からのぞき込むアルンのにやけ顔があった。


「アルン、心臓に悪いからやめて欲しいんだけど」


 いつのまに来たのか。

 ちょっと気を抜いていればすぐに脅かしてくるのだからこの義姉も性質が悪い。


「そういうな。ミコト様が船で皇国に帰られた後、私はかなり暇なのだ。なにしろリュオネの奴が何もさせてくれないのだからな」


「それは貴方が働き過ぎで心配だからです。副兵種長にしたビザーニャのサティが諜報のとりまとめをしているんですから、しばらくはシリウス・ノヴァでおとなしくしていてください」


 威圧感のあるスズさんの言葉にアルンがぐぅと唸って顔をしかめた。

 アルンは放浪癖というのか、同じ場所にじっとしていられず、常になにかしていないと気が済まないのだそうだ。

 そしてする事がなくなるとぐったりしてその辺の床に落ちていたりする。


「それならこれから二人がする事にまぜてくれ。まさか逢い引きというわけでもないのだろう?」


 スズさんの顔をみるとすごい目で睨まれた。逢い引きしそうな表情じゃないよ?


「わかったわかった。だから二人ともその怖い目つきをやめてくれ。冗談の通じぬ奴等だ」


 アルンが引きつった笑顔で手を上下に振る。

 どうやら僕も相応に厳しい顔をしていたらしい。


「で、話を戻すが、二人で下の穴で狩りをするのだろう? 私も混ぜてくれ。さすがに腕がなまってきたのだ」


 さっきとはうって変わって真面目な顔をしたアルンが得物の刺突剣の柄を叩く。

 そう言われては、断れないな。

 僕達も同じ理由でここにきたのだから。


「わかった。じゃあ三人でこの狩り場の魔獣を間引こうか」


 穴の中を見渡すと、左手の方角に動くものがあった。

 木も丘も無い荒野だからほとんど隠れる場所はない。

 崖の下に飛び降り、一気に獲物の方へと駆ける。


 作った時に試した通り、この場所は受肉した魔獣や竜種の死体を置いて他の魔獣を誘い込む罠になる。

 外に出られない魔獣は弱り、後から来た魔獣の餌になる。

 自分達の都合に良いタイミングで魔獣と戦う事ができるこの場所は、軍や民兵の訓練の場所および凝血石を得る場所として有効利用されている。


「ぬ、凋落したイルヤの民か」


 近づいてみると、動いていたのはメドゥーサヘッドの集団だった。

 けれど、同士討ちをしているようにみえる。


「メドゥーサヘッドより体格が良いですね」


 戦っている相手は全体的にメドゥーサヘッドを太くしたような蛇頭だった。


「じゃあ、まず肩慣らしをしようか」


 魔鉱拳銃に中位風魔法の魔弾を込めて左肘を支えにして狙いを定めて放つ。

 目の前で発現した暴風にメドゥーサヘッド達が吹き飛ばされた。


「では私から行きます」


 スズさんが軽くステップを踏んだかと思うと、あっというまに風に抗っていた筋肉質な蛇頭に肉薄し、逆鉾を突き立てていた。


「義弟! 私は吹き飛ばされた方に行くぞ!」


 スズさんとさほど変わらない速さでアルンが駆けていく。

 その身体、全然なまってないよね?


 そうこうしている内に穴の中に響く戦闘音が激しさを増してくる。

 二人ともメドゥーサヘッドに追いつかれる事は無いから大丈夫だろう。

 そんな事を考えていると、戦闘音の響きに違和感を覚えた。


「上か!」


 反射的に落城の岩を撃ち出すと、岩に当たった何かが鈍い音を立てて地面に落ちた。

 その塊はうねり、転がり、這いまわっていた。


「蛇の群れだと?」


 一匹一匹が人の足ほどある赤褐色の蛇が絡まり合い、岩の直撃を受けたにもかかわらず活発に動いていた。

 あれが崖から落ちてきたのか。

 蛇の塊の大きさは一、二ジィはある。

 ばらばらに来られると面倒だな。


「——っ!」


 けれど次の瞬間、身体を悪寒がかけぬけた。

 蛇の頭がいっせいにこちらを向いたからだ。

 あれらは全部同じ意思で動いている。


 中央の蛇の口の前に火の玉が生まれ、外側の蛇の口から風が巻き起こった。

 砂塵で敵の姿が消える。


「ヴェント・センタ!」


 一足右に跳ぶと同時にレナトゥスの刃で元いたところを切り払う。

 残像にも似た、神像の右眼につながる青い光に白い炎が吸い込まれていった。

 そのまま右に駆けると、その後ろを追いかけるように石の玉、毒の雨が高速で過ぎていった。


 どれも魔弾かそれ以上の速さだ。

 それに収納した感覚では魔鉱砲程度の攻撃にもかかわらず上位魔法並みの魔力を感じる。

 あまり大量にはストックしておけない。


「排出!」


 たった今収納した攻撃を蛇の塊に撃ち返してやる。

 しかし、外側の蛇達から出る風がそれらの攻撃をことごとく逸らしてしまった。


「なるほど、飛び道具を使うなら矢避けの手段も持っているというわけか……」


 初めて見る魔獣は、予想以上に手強そうだ。

 


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