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01_03 登録し、歴史を学ぶ



「これが冒険者ギルド……でいいんだよな?」

 門は横に広がって城壁とつながっている。なるほど、城壁の外に行くのは冒険者しかいないんだからギルドが門番というわけか。


「依頼、新規登録は右?」

 近づいて紋章を見上げるとその下に案内書きが貼り付けてあった。


 門の下に入ると両側にはコの字型のカウンターが広がっていた。

 図書館ほどでは無いけれど、広場の喧騒よりは静かな空間が広がっている。

 なんか思っていたのと違うな。もっと殺伐としていると思っていた。


「ご依頼ですか? それとも冒険者ギルドへの新規登録でしょうか」

 入り口近くに立っていた案内役っぽいおばさんが聞いてきた。

「あ、新規登録です」

「では番号札の番号で呼ばれますので、しばらくお待ちください」


 番号が書かれた板を受け取り適当な長椅子に座ってまつ。

 なにこれ銀行?


「ブラディア冒険者ギルド本部にようこそ。登録手続きを担当しますリザです」

 美人だけど、キリッと整えたブルーの髪や服装で距離感を感じるリザさんに促され、椅子についた。手続きは淡々と進んでいく。


「では他ギルドの身分証、または西大門で発行された仮身分証をいただけますか?」

「はい」

 おじさん兵士から受け取った紙を手渡す。


「ザート様、ですね。ザート様は読み書きはお出来になりますか?」

 うなずくと、向こうもこちらの身なりで察したのか、『ですよね』と苦笑した。


「では詳細は冊子を見ていただくとして、重要な点だけ話しますね」


 しばらくリザさんの説明を聞いた。かいつまむとこんな感じだ。

 冒険者資格については、取得について条件は無い。

 取消要件については、殺しなど重罪は一発アウト。資格を失って犯罪奴隷堕ちとなる。

 情状酌量、軽微な違反についても三回で実質アウトだ。

 階級については鉄、銅、銀、金、白金がある。

 そして各階級の中でも一位から十位まで細かく分かれているらしい。


「では登録のため、血をいただけますか?」

 血に残る魔力で本人特定ができるため、重要な契約では血の登録が必須だ。

 黙って指を差し出すとリザは失礼しますと言って針のついた魔道具でパチンと指を挟んだ。


 リザはテキパキと手を動かし、子供の手の平ほどの鉄板を渡してきた。

「こちらがザート様の冒険者としての身分を証明するプレートです」


 今日の日付の後に”ザート”とだけ刻まれた鉄板を見る。

 このプレートが今の僕なんだな。


 新しい自分を手に入れるという人生一大イベントは、こんな風にあっけなく終わった。


    ――◆ ◇ ◆――


 この世界には魔力の素たる魔素をため込んだ魔素だまりが点在している。

 魔素だまりには魔力をためこむ魔獣が棲む。

 魔獣は通常の獣とは異なる影のような存在だ。殺すと身体の一部やアイテム、血が固まったような凝血石を残して泥となり大地にしみこむ。

 凝血石は魔素とほぼ同義であり、魔法をつかうための重要な資源だ。

 冒険者は凝血石を得るため、魔力をため込んだ魔獣を狩る事を生業としている。


 アルドヴィン王国の北東部は特に魔素だまりが多い土地であり、強い魔獣の発生源として古来より恐れられていた。

 八代前のアルドヴィン王は、災害をもたらすこの地を問題視し、ある貴族の三男に問題の解決を任せた。


 貴族の名はカール=ソフィス。土地をブラディアと名付け、新たに家を興し、初代ブラディア辺境伯として開拓を始めた。

 それがブラディアの歴史のはじまりとなる。


 辺境伯はまず、魔獣の中央への侵入を阻むため、北のブラディア山から東のレミア海まで長城をつくった。

 そして、その長城の中央に城塞を建設した。

 今では長城は第一長城壁と呼ばれ、城塞は都市の核となっている。

 辺境伯領領都ブラディアはこのように誕生した。


 凝血石が貴重な時代になると、辺境伯は冒険者とともに、新たな長城壁を作った。これが現在の第二長城壁である。

 側壁を加え、第一と第二長城壁に囲まれた地帯で冒険者が強力な魔獣を倒した結果、その一帯の魔力は乏しくなり、弱い魔獣しかでてこなくなった。

 これにより安全な農地が確保された。


 後はこの繰り返しだ。最も強い冒険者達が城外の脅威を取り除き、壁を作る。

 壁の内側で中堅・駆け出しの冒険者が小型の魔獣を狩る仕組みができあがった。


 現在ブラディアには街のすぐ外側の第一城外から最前線の第五城外まで、フィールドが五つある。

 冒険者は強くなるほど外側のフィールドに行くことが許される。これがランク制の始まりであり、王国の冒険者ギルドの基準となった。



「――なっが」

 宿でくつろぎながら冊子を眺めていたけれど、気がつけば夜になっていた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 変に悲壮、深刻ぶらず淡々と進める序盤の出だしは好ましい
[気になる点] 「番号が書かれた板を受け取り適当な長椅子に座ってまつ。なにこれ銀行?」 この発想って、前世の記憶持ちってこと?
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