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06_49 アルドヴィン王国軍、ライ山を登る

《???視点:ムナクソ注意》


 山から吹き下ろしてくる冷たい向かい風も気に入らない。

 私を監視する僧兵達の冷めた目も気に入らない。

 この間まで最年少教授とかいってこびへつらっていたくせに。


「予定より遅れてるだろうが! これじゃいつまでたっても異界門に着かない、もっと魔力を込めろ!」


 異界門まで突貫工事で森を切り開いた運搬道を進みながら私は発破をかける。

 法具を運ぶゴーレム達の動きが悪いので操作している土魔法使いを怒鳴りつけると、反抗的な目が返ってきた。


「なんだその目は? これは教主が直々にお命じになられたことだぞ!」


 ま、予定のペースなんてしらないけど。

 魔法兵達はため息をつきつつ魔力回復ポーションをあおって作業を続ける。

 束になっても私に叶わないくせにむかつくなぁ。


 教主様は”ウジャトについて嗅ぎ回っていたブラディアのスパイに資料を盗まれました。先にウジャトに接触されたらどうしましょう”ってあおっただけで異界門を一回ぶち壊してウジャト教団を呼び寄せる案を受け入れてくれた。


 大変結構なんだけどやっぱりききたい。


「いいの? もしウジャト教団がこなかったら異界門開いたままだよ? そこから出てくる化け物でブラディアを潰せるのはいいけど、【新約の使徒】の事を認めることになっちゃいそうだけどいいのクソ教主様?」


 ってね。

 この場合神界への門を開いた功績って私のものになるのかな、なるよね?

 そんな事を考えていると、前から斥候が坂を転がるようにこちらにかけてきた。


「さ、サイクロプスだ!」


 その姿を見て運搬兵も護衛のバルド僧兵も浮き足立ってしまった。

 あーあ、みっともない。

 こいつら対人戦闘はそれなりのくせに魔獣を相手にするのを冒険者にまかせっきりだったせいか、すぐビビるんだよなぁ。


 でも、サイクロプスなら仕方ないか。

 帝国で冒険者やってた時も、単独で狩れる奴なんて【新約の使徒】やソロになった私みたいな奴くらいだもんね。


「お前等は法具を守ってろ、あいつは私が倒す」


 バルド僧兵が露骨にほっとする。

 馬鹿か、お前等が持ってる銃は飾りかっての。


「さて、一つ目君、覚悟はいいかね?」


 こちらを視認したサイクロプスが坂道を駆け下りてくる。

 あの巨体が法具に当たったらまずい。


『スパーク』


 ステッキをクルリと回して地面をトンと突くと、ステッキ型の魔道具に貯めておいた雷魔法がヘッドから敵に伸び、サイクロプスの足下からステッキの石突きに帰ってくる。

 魔素をつかってはいるものの、ようするに電気回路だ。

 雷魔法には憧れがあったけど、こっちの世界に来てみればなんてことない、発動まで時間がかかる、対人には向かない魔法だった。


 その点この雷を操る魔道具はいい。

 発動もすばやく攻撃は見えない。

 威力はあまりないかわりに肉体を強制的に硬直させる。


 一撃で仕留めるのが強いとは限らない。

 目潰し然り、毒しかり。

 一瞬の隙を作った後に連続して攻撃をたたき込めば相手はなすすべも無く倒れる。


「はいドボーン」


 駆け下りる途中で身体が硬直したせいで坂を転がり落ちてきたサイクロプスの身体がモートで掘っておいた穴に吸い込まれる。


 けれど、穴の中に落ちたサイクロプスは大したダメージも受けずに身体を起こす。

 そんなに深く掘っていないから、胸から上が地上に出ている形だ。

 丁度切りやすい位置に首があるけど、残念ながら私は剣術スキルを持っていない。


「だから私はコ・レ」


 ちょっと卑猥なサイズの銃弾を取り出し、穴の中に投げ入ると、直後に爆発と共に火柱が穴の中から噴き出した。


『ゴァァァ——!』


「ハハハハハハハ‼ 吹っ飛んじゃったかな? どこがとは言わないけど!」


 次第に小さくなっていく咆哮とともにサイクロプスの身体が穴の中に沈んでいく。

 凝血石を取るために地面を持ち上げていくと、サイクロプスが普通の死体のままでてきた。


「んっだよ、こいつら凝血石にならないのかよ。手榴弾使った分損したじゃねぇかクソが」


 腹が立ったので死体をステッキで突き刺していると後ろからおどおどした声をかけられた。うっざ。


「なに?」


 立派な筋肉をした男がキョドりながら口をひらく。


「そろそろ大型法具の輸送を再開したいのですが、魔物の死体を横に移動していただけないでしょうか?」


 それを聞いた私は一瞬で目の前の奴を殺したくなった。


「私が、代わりに、戦ってあげたのに、なんで、お前が指図してくるんだよ!」


 ステッキの石突きをガツガツと気が済むまでたたきつける。


「オゴッゴッ、チガ、指図じゃないんです! ガッァァ、スミマセン!」


 のたうち回って胎児みたいに手足を縮こまらせた王国騎士を見て急に冷めた。

 素の身体能力がどれだけ恵まれていようと、基礎スキルの身体強化しだいでその差は覆せるし、神様からもらったスキルがあればいくらでも痛めつけられる。

 やっぱ魔法とか銃って偉大だ。


「おい、コイツ連れてけ。それから行軍再開だ! 遅れた分急ぐぞ!」


————!!!


 号令をかけた瞬間、山頂の方から衝撃とともに煙が降りてきた。


「全員マスクつけろ!」


 クソが! 目に見えるレベルの魔素なんて実験室でしかみたことねぇぞ!






いつもお読みいただきありがとうございます。


今回、敵視点で一話をいれました。

次回より本章がクライマックスに入りますので、今しばらくご辛抱ください。



面白かった、続きが読みたいと思った方は、ブクマや『★★★★★』を押して応援してください。

よろしくお願いします!

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