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06_37 魔人について(生体実験)


「……通常の骨だ」


 割れた骨のかけらを鑑定して凝血骨で無い事を確認する。

 骨を膝に戻し、開いていた皮膚を戻すと、ほどなく肉体は元に戻った。


 なぜ骨にこだわるか、それはこれからする実験に関係がある。


 コトガネ様から、牙狩りがもつ魂魄の考え方を教えられた。

 生物は魂を主とし、魄を従として肉体に備えることで生物として機能するものらしい。

 この場合、魄というのはほぼ骨、特に頭蓋骨と同じといっていい。

 凝血骨ではない骨も血殻の機能をもっているというのだ。

 そして、魄に魔素が過度に蓄積するなどして、魂魄の主従が逆転すると人間が魔人に変わるという。


 しかし皇国の牙狩りは牙持ち、つまり魔人を人間に戻すという事は不可能と考えている。

 それは魂魄への干渉手段がなかったためだ。


「ではこれから魔人の魂魄の分離実験を始める」


 魔人の魔素を極限まで抜いておとなしくなった魔人を収納し、目をつぶる。

 神像の右眼のなかで魂魄を分離するためだ。


 これは魔人の骨が凝血骨だった場合は成功していない。

 凝血骨の有無が魂魄への干渉の基準になっているかもしれない。


 神像の右眼で魔人の身体を凝視するように解析を進めていく。


 深く、もっと深く。


 深海を泳いでいた時のような圧迫感と叫び出したい焦燥感に耐えていると、ようやく魔人の魂魄という文字が浮かび上がってきた。

 薄れる意識のなかで魂魄を分離できた事を確かめると、右眼への集中を解いていく。


 目をひらくと拘束台が見えてきた。


「団長、大丈夫ですか?」


 台の隣に立つエヴァに顔を向ける。


「ああ、問題ない。台に魔人の魄、身体を出すぞ。魔素を抜いているから動きは遅いけど油断しないでくれ」


 拘束台の上に出した魔人の身体を団員が手早く拘束していく。


「拘束したな。では今回は三分後に魂をもどす」


 魄が無くても動く魔獣のように、魂が無くても魄は動くのだ。

 そう考えながら時間を計っていると、糸がきれたように魔人の身体が止まった。


「……なるほど、魔素がきれたから魄の動きも止まったか」


 魔素をくわえても動くことはない。

 一度切れると魄もただの死体と変わらなくなるようだ。

 これはもしかすると人間が”起き上がり”でアンデッドやスケルトンが動き、倒れるのと同じ仕組みかもしれない。

 

「ブツブツ言いながら死体をいじってる姿って傍目から見てヤバいですよぉ」


 顔を上げるとエヴァが同類を見るような目で笑っていた。


「僕はどんなものについても探究心があるんだ。死体に限ったことじゃない」


 これは事実だ。嘘は言っていない。


「時間が経っても魔人に戻るか魄が死体になるだけか。今日の実験は終了する。違うアプローチが必要なようだ」


 フリージアさんやジョアン叔父を魔人から人に戻すには反転した魂魄の主従を戻す手段をみつける必要があるのだ。

 そのために、僕はもっと手を汚す必要がある。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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