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06_34 ザートの密命


「うわ」


 団長室で書類仕事をしているとクローリスが入ってくるなり一歩後ずさった。


「うわってなんだよ」


 まめに失礼な奴だな。


「いや、ザートが団長の机にいるのがめずらしくてですね、つい」


 気まずそうにクローリスが目をそらした。

 確かに普段から色々な場所に行っているけど、今日はたまたま予定が変更になったんだよ。


「クローリスは団長がいないときその机を使ってますからね。今日も使うつもりで来たんでしょう」


 ブラディア各地のギルドから送られてくる血殻の量を確認していたゾフィーさんが顔を上げて説明してくれた。


「ゾフィーさんばらすなんてひどい! 別に悪いと思ってないですけど!」


 別に普段使ってないならいいじゃないですか、と開き直るクローリス。

 悪いと思わないのかよ。


「ゾフィーさん、この後スズさんの所に行きますよね? この子ちょっと連れて行って手伝いさせてください」


 ゾフィーさんがため息とともに立ち上がり、悲鳴を上げるクローリスを連れて部屋を出て行った。

 参謀室にはいくらでも仕事があるから、当分帰ってこないだろう。

 さて、コトガネ様との稽古もあるし、仕事はとっとと終わらせるか。



「はいるぞー」


 書類をまとめていると、シルトが返事もまたずに入ってきた。


「お、遠征どうだった?」


「マンティコアも倒したけど、奥にもサイクロプスとかミノタウロスとかいたから倒してきたぞ」


 そういってポーチから大ぶりの凝血石をいくつもだし、得意げな顔をして机の上に並べてきた。


「へぇ、さすがだな」


「おう、これで俺も銀級だ。お前の叔父さんを助けにライ山までいけるぞ。いつ行くんだ? 年内か?」


 シルトもライ山でジョアン叔父と戦う貴重な戦力なので急いで銀級になってもらった。


「気が早いよ。今、王国を担当している第八に調査をしてもらっている」


「……ガルムから聞き出した魔法考古学研究所のドロシーか」


 隠す事なく顔を歪ませ、シルトが吐き捨てる。

 シルトは魔法考古学研究所など”学府”を憎んでいる。

 ミラディの事件でミラディとサイモンに復讐は果たせたけれど、直接一族を手にかけた者はまだ学府の中にいるからだ。


「やっぱりその件、俺にまかせてほしかったぜ」


 熱くなるシルトを一瞥し、僕はだまって盾剣を取り出した。

 シルトが黙って差し出した具足のシリンダーから大楯を使って魔素を抜く。


「駄目だな。お前がいったら情報を聞き出す前に殺しかねない。殺せるならな」


「どういう事だよ」


 不満そうな顔をしてシルトがかみついてくる。


「そのままだよ。シルトより強い奴がいるかもしれない。学府はそういう所だ。特に魔法考古学研究所は六花の具足や神像の右眼のような法具を集めて研究している。力押しすべき相手じゃない」


 今はな、といって話を結ぶ。

 シルトはしばらく僕の手にある盾剣を見つめた後、握りしめた拳をほどいた。


「そうだな。俺の一族を殺した奴らが弱いはずがない。なめてかかって良いはずないか」


「そういうことだ。第八には研究所が所蔵している法具についても調べるように伝えてある。情報収集はその道のプロに任せて、俺達はやるべき時に全力で戦えばいい」


 第八で何人が生きて情報を持ちかえれるのか。

 化け物の巣窟に潜入させるという命令を出した時から常に抱えている、答えの出ない問いを振り払い、僕は盾剣を収納した。


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