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06_02 魔法防御の盾



 私とアルバトロスの三人は第三十字街の冒険者ギルドから出て、下に降りるために十字街内周階段をおりています。

 私もふくめて全員の銀のプレートをみる顔がにやけています。


 やっぱり位階だけじゃなくプレートの色が変わるのは気持ちいいです。

 しかも銀となればなおさらですね。


「それにしても、相変わらずすごい勢いで大増築をしているわよねー」


 冒険者証を胸元にしまいながら、階段から中央を眺めてオルミナさんがぼやく。

 十字街の中央柱の周りにつららのように伸びる建物群が見えている。

 上から垂れ下がる建物なんてもとの世界でも見たことがない。

 二百ジィほど先にある重力や危険度を無視した建築におもわずため息がもれた。


「まあ、戦争になれば、ここを重要防衛拠点にする、ってことだな。まったく、ブラディアの王様も抜け目がねぇよ。ティルク人を守るために居る俺達を利用しようってんだから」


 私達【白狼の聖域】は人数こそ軍よりは少ないけど、皆が現役の冒険者や軍人で、装備も新式、凝血石も大量に備蓄している。

 武力としては他の冒険者クランから抜きん出ている。

 そのクランが必死に守る場所《聖域》があるのだ。

 そこを利用したがるのは当然の流れだろう。


「じゃ、私達はこれから居住区の商店街に行くから、また夕方ね」


 そういってオルミナさんとショーンのカップルは居住区の目抜き通りに向かっていきました。


「じゃ、私達もいきましょうか」


 残された私とデニスは予定通りウィールド工廠にむかう。


「そういえばデニスの好みのタイプってどんな人です?」


 道中ひまなので、特に思う所もなく、デニスに異性の話をふってみる。

 私とデニスは同じく装備開発を担当するため、工廠への行き帰りが一緒になることが多い。

 最初はいかにも無口ですって感じだったけど、今はお互いに気安く話ができている。


「うむ……そうさな。気が強いドワーフの女が好みだな。しかし、ドワーフ自体がなかなかおらんからあまり贅沢も言えまい」


 デニスの鼻から出たため息がひげを揺らす。

 デニスの意外な一面です。 尻に敷かれたい願望があるとか?


 私はさらに掘り進めようとしたけど、デニスはむっつりとして建物の中にはいってしまった。

 残念。デニスとの恋バナはまた今度にしましょう。


「おはようございまーす」


「「「はざまーす!」」」


 大部屋のほうぼうから返事が返ってくる。

 彼らは生産職としてクランに所属している職人達だ。

 ドワーフだけではなく、避難してきたティルク人や中つ人も、能力があれば加入している。


「おう、おまえらこっちだ」


 すっかり現場の親方が板についてきたウィールドさんが別室から顔をのぞかせていた。


「はいはーい」


 私とデニスは銀級昇級試験に向かう前まである装備の開発をしていた。

 けど壁にぶつかったまま試験日になり、しばらく工廠には顔を出せずにいたのだ。


「ウィールドさん、盾の件は……お?」


「あ……おはようございます」


 新人さんかな? 可愛いドワーフの女の子が立ちあがって頭をさげます。

 鍛冶はしないだろうから付与術師?


「お前らがいない間に現場に入ったビビだ」


「ビビです。このあいだ銅級に上がったばかりの付与術師ですが、よろしくお願いします」


 ドワーフにしてはすらりとした身体のせいで、中つ人の小さいお嬢さんのように見える。



「ここの責任者のクローリスです。拠点にいることが多いけど、開発もしっかりやってるから、よろしくね!」


 なんだか年下の妹か後輩ができたみたいでうれしい。いろいろ教えてあげよう。


「……」


 ん? なんか違和感が。目の前のビビさんの目がみるみる険しくなっていきます。


「おい、デニス、あいさつしといたほうがいいぞ」


 人になんて興味が無い、あのウィールドさんが他人にアドバイスしている!

 何があったの!?


「あ、ああ。わしはデニスだ。竜騎兵隊で随伴兵をしている」


 デニスがあわてて自己紹介をするけど、ビビさんの険しい目つきは変わらない。

 見かけは幼いけど、これは相当気が強いパターン?


「ウィールドさん、ビビさんには今なにをやってもらっているんですか?」


 ここは私が潤滑油になってあげよう。


「おう、それだ。ザートが魔法を吸収する盾を作れなんて無茶を言っていたから難儀していたが、このビビが新しいアプローチの盾をつくったぞ!」


 ウィールドさんが手に持っていたカイトシールドを掲げてみせる。


「ふんふん、どんなアプローチなんです?」


 薄い紅色に染まった血殻で出来た盾をうけとってみる。


「そいつは魔法を相殺するんだ」


「は?」


 思わず変な声がでてしまった。

 防御に関係する付与術ができるのは耐性付与までだ。

 それなのに相殺?


「迫る魔法を分析する魔法陣に、そこからの情報をもとに同量の魔力を込めた反対属性の魔法を出す魔法陣をつなげました。魔素の消費が激しくて、魔法の打ち合いをするのと変わらないのが課題なんですけど……」


 いや、いやいやいや。

 その盾があれば魔術士は同時に二回魔法をうてるのとおなじだから!

 

「うむ……すごいなおぬし」


「ドワーフならこれくらい当然よ。あなたもこれくらいやってみせなさいよ」


 デニスの賞賛を軽く流すビビさん。

 ちょっと得意げなところがやっぱりかわいい。


「さっそく耐久実験させてもらうぞ!」


 デニスが中庭に走って行ってしまった。

 あんなに浮かれているデニスは初めて見たかもしれない。




「ぬぉぉぉ盾がぁ!」


「バッカじゃないの!? 真正面から大筒をうてば魔弾本体が盾にぶつかるでしょ!」


 冬の中庭に二つの悲鳴が響いた。


「めずらしいな。ああいうのはお前の仕事じゃなかったか?」


 ウィールドさんがたいへん心外な事をいってくる。

 本当に心外だ。私は失敗してもあんなにあわあわしてない。

 ……してないよね?


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