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05_09 銀級昇格試験(3)



「ハンナ、あんたばかじゃないのぉ? 射線に団長がいるのを確認しないまま打つなんて、るのからないのかはっきりしないから失敗するのよぉ」


「やるかバカ! あれは純粋な過失だ!」


「そうよね、過失よねぇ。次はどんな処分がまってるのかしらぁ?」


「うぐぐ……」


 後ろが騒がしいのはいつものことだ。

 さて、手負いの獣は恐ろしいと相場が決まっているが、ジャンヌはどう出るのか。

 通常であれば二の矢三の矢を打てば事は足りる。

 だがジャンヌは弓ではなくホウライ刀をかかげ、マンティコアの右から切り込んだ。


 マンティコアは後ろ足の踏ん張りがきかず、ジャンヌの動きに追いつけない。

 マンティコアは反射的に毒の尾を大きく振り回した。

 視界の外にある敵に対して武器を振り回して対処するのは人も魔獣も同じだ。


 しかし刀にとって横振りの肉ほど切りやすいものはない。

 ジャンヌは尾を両断し、さらに後ろ足の腱も切り裂いた。

 たまらず地に伏したマンティコアの胸に切っ先を突き込んでジャンヌは狩りを終える。


   ――◆◇◆――


「相変わらずつまらない戦いをするわねぇジャンヌは。あんな戦いの後じゃたぎらないわぁ」


 いつの間にか隣にいたエヴァがため息交じりにつぶやいた。

 それには答えず壁の上を見ると、既にそこにはデボラがいた。

 殿下はまだ来ないか。


「次はエヴァが倒せ。さっさと倒さないと殿下がくるぞ」


「え? やだーっミワちゃんはやく結界切ってー!」


「は、はいーっ!」


 ミワの声とともマンティコアが結界の内側に飛び込んだ。


「殿下には私の戦い方なんて恥ずかしくて見せたくないけどなるべく楽しみたい……! なんて二律背反アンビバレント!」


 などとこぼしながら手早く髪を結い上げ、小作りの顔を露わにする。


「あまりギルドの心象を悪くすると昇級できなくなるぞ」


「わかってるわよぉ。今回は自重するわぁ」


 エヴァはあまり当てにならない事を言いながら敵へとかけていく。


「見せて大丈夫かぁアレ?」


 バスコが肩に独鈷杖とっこじょうを乗せてやってきた。


「本人は自重するといっていた。エヴァも今回の目的を忘れるほど馬鹿ではないだろう」


 エヴァはたいして身体強化もせず、マンティコアに先手をとらせた。


——ギャリン


 金属音とともにエヴァにせまったマンティコアの右前脚から爪が三本飛んだ。

 ほぼ同時に左前脚からも爪が四本飛ぶ。

 エヴァは三ジィほど後ろに立っていた。


 一跳びで開いた間合いを自ら悠然と、その肢体をみせつけるようにマンティコアに近づいていく。

 魔獣の攻撃が強く早いのは四肢による加速があるからだ。

 前脚の指を奪われ、間合いをつぶされたマンティコアがそれでも無防備にみえるエヴァの首筋めがけてかみつこうとする。


——ギャリン


 しかし次の瞬間にはマンティコアの鼻が宙を舞っていた。

 神経のあつまった箇所を切り取られ、哀れな魔獣が悲鳴を上げる。


 地面をころがったマンティコアが起き上がった時には、エヴァは目の前にいた。


 マンティコアにとって起死回生の反撃である毒の尾が伸びる。


——ギャリン


 しかし尾はエヴァを貫かず、マンティコアの頭蓋骨は二本の逆鉾さかほこによって地面に縫い止められていた。

 尾は力なく崩れ、黒い泥となっていく。


——金属音の後には痛みが来る。

 マンティコアは攻撃の直前に鳴る金属音で条件付けをなされていた。

 だから最後に毒の尾を止めてしまったのだ。


「やだねぇあの音。俺までトラウマになっちまいそうだぜ」


 バスコはかぶりをふりながら自らの独鈷杖の鞘をはずした。


   ――◆◇◆――

 

 最後はバスコだ。

 殿下の釣ってきたマンティコアの顔にバスコは独鈷杖の先をつけている。


『ファイアアロー!』


 独鈷杖の両端に朱い炎がともると同時にバスコが杖を槍のように繰り出す。

 槍の動きに合わせて魔法の矢が次々と向かう。

 マンティコアは素早くよけていくが、じょじょに刺さる矢が増えていく。


 マンティコアがダメージにかまわずバスコに突撃する。

 が、バスコは不敵な笑みを浮かべたままだ。


「『ファイアバースト!』」


 独鈷杖をくるりと反転させ、反対側に残っていた炎を自分のいた場所に突き刺すと同時にとびすさる。

 一瞬遅れてその場に着地したマンティコアを激しい炎が包む。

 バスコが得意とする遅延式魔法により動きをとめたマンティコアは、そのまま槍の連撃を浴びて泥になった。


 バスコは空気を読んで早めに勝負をつけたようだ。


「よーし終わったー。パーティ討伐の所をソロで討伐してるんだからギルドマスターも文句言わないだろ」


 伸びをするハンナをはじめ、皆一仕事終えたとばかりに側塔に向かおうとする。


「まてお前たち、団長がまだ——」


 そう口にしたと同時に、地鳴りと木々の裂ける音がはっきりときこえた。



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