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05_04 アルバ魔法文明の遺物


「血殻の……柱?」


 リュオネがタブレットをのぞいている間にも数を表す数字のケタは増えていく。

 僕はふたたび右眼を光らせる神像をみつめた。


 瞳に宿るブルーモーメントの光は大楯や手元のタブレットと同じ色だ。

 神像が書庫の事を”神像の右眼”と呼んだ事といい、血殻が収納されていく事といい、どうやらこちらを害する存在ではないみたいだ。


「ザート、数字が止まったよ!」


 リュオネの声で我に返り、あわててタブレットに目を戻すと、”血殻の柱”という名前の下に、タブレットの一行を占めるほど長く数字が続いていた。


 箱の内側に青い光がともる。

 予想通り、そこにはバックラーがあった。


 ただし、形が変わっている。

 素材はそのままだけど、丁度バックラーを半分に折るかたちで、とがった両端を結ぶように”峰”が できていた。

 さらに、直角だった持ち手が峰に沿うように変化していた。

 どういう事だ?


『内部の血殻を補充しました。使用履歴より形状を最適化させました。世界に散った魔素の回収を続けて下さい』


 僕の疑問に答えるように、神像から平坦な男性の声がした。

 最初の二つは理解できたけど、残り一つがわからない。


「魔素の回収とはどういうことですか? ここはなんのための施設なんですか?」


 神像からの返事はない。

 箱から神像の右眼を取り出してみる。

 やはり何もおこらなかった。

 場の緊張は次第にとけていく。


「いっぺんに色々起こりすぎだよ……」


「ほんと、そうだな。害意はないってわかったけど、結局一方的に話しただけだったし」


 リュオネの大きなため息を聞きながら一通りの機能を確認する。

 全部使える事を確認すると、僕もようやく肺に溜めていた緊張を吐き出した。


   ――◆◇◆――


「ふぁー、こんな遠くにあったんですねぇ」


 最後に地上に出てきたミワが第三十字街を眺めておどろく。

 ここから十字街までは一ディジィくらいありそうだ。

 僕達は予想以上に遠くまで進んでいたらしい。


 地下祭壇の安全を確認した僕らは探索を終え、戻ることにした。

 帰りは遺跡の手前にコリーが螺旋階段を作ってくれた。

 あとをついて行くだけで地上まで抜けられたのだから、コリーの土魔法の練度は高い。

 さすが兵種長だけある。

 

「団長ー、通路とこの階段どうする? 残すなら魔力を通してしっかり固めるけど」


「通路は一般住民が入れないようにつぶそう。螺旋階段はのこしてくれ。おわったら人が入れないように岩でフタをするから」


「何それこわっ」


 凝血石を渡すと、コリーはおどけながら早速作業をはじめた。


「ちょっと宝探しをするつもりが、おおごとになっちゃったね」


 リュオネが空に向かって伸びをする。

 後ろでミワたち衛士隊も、まねをするように伸びをしていた。

 やっぱり未知の場所を探査したので、皆疲れていたのだろう。



 この探査は短かったけれど、考えるべき事がいくつかでてきた。


 一つ目はバックラー、もとい”神像の右眼”はやはり油断すればうしなう”道具”であること。

 自分がある程度の地位と実力を得たから奪う人もいないだろうと、心のどこかで慢心していた。

 不意を突かれればいくらでも奪える事を前提に使わなくてはいけない。


 二つ目は”神像の右眼”を含めた法具全般についてだ。

 法具は世界の各所で、様々な形で存在している。

 遺跡に放置されていたり、祭壇でまつられていたり、骨董市で売られていたりする。

 けれど、結局滅びた文明の遺物だと思っていた。


 それなのに、さっきまでいた神像のように、何らかの施設がまだ動いているようだ。


 ”魔素の回収”という神像の指示は現代からすれば意味不明だ。

 今の世界は魔素で満ちているのだから。

 アルバ魔法文明の時代に何があったのだろうか。

 もしかしたら、ただの高度な魔道具、という以上の意味が法具にはあるのかもしれない。

 法具を持ち続けるには、その意味を知らなければいけない気がする。


「ザート! おそいよー」


 丘を下りながら考え事をしていると先を進んでいたリュオネが戻ってきた。


「ほら、はやく帰らないと、子供達がないちゃうよ?」


 差し伸べられる手をとり、引かれるままに丘を下る。


 それと、三つ目はリュオネ。

 法具をうしない、まるで世界がすべて敵になるような不安に潰されそうになったのに、リュオネのぬくもりとまなざしを感じた瞬間に安心し、冷静になれた。

 リュオネのような存在を、僕は他にしらない。


 気がつけば考えているので、べき事、といえるか微妙だ。

 どちらかといえば、考えていたい事、なんだろう。


 それが許されるように、僕はこれからも努力をしていこうと思う。



——そう思っていた矢先。


「あれ? ビーコじゃない?」


 リュオネが差す指の先に、ビーコらしい影がこちらに向かうのがみえた。



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