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04_32 初幹部会議



「——はい。ではそのように」


 スズさんの了承の言葉とともに僕はひとつため息をついた。

 グランベイでの休暇をおえた僕は、ビーコから降りたあとそのまま団長室に入り、スズさんとの打ち合わせをした。

 内容は僕が休んでいた間に起きたことの報告と、今からする幹部会議の進行についてだ。


 僕が救出にいった、第一・第七小隊が守る難民団が王都に到着してからほどなく、南方を回っていた第三・第六小隊が守る難民団も到着したらしい。

 すでにリュオネが十字街までつれ帰り、拡張した居住区に入っているという。


 十字街までティルク難民の護送を終えた事で、難民保護という第一の目標が達成された。

 そして元皇国軍も外国で活動中の第八小隊をのぞいて十字街にそろった。

 

 スズさんとも協議したけど、結局各小隊長にはそのまま幹部になってもらった。

 僕ら【白狼の聖域】は元皇国軍が母体なので、その形をなるべく残したい。

 ただ、パーティという単位になる以上改編は必要だけど、それは会議で議題にするつもりだ。

 

「それにしても、さすがスズさん。ハンナへの処分が適切だね」


「ええ、上をあなどる事無く、下にあなどられる事無く、本人が反省できる内容を心がけました」


 珍しく楽しそうな笑みを浮かべるスズさん。

 きっと僕も同じような笑みを浮かべているだろう。


    ――◆ ◇ ◆――


 団長室にリュオネとオルミナさんが来たので会議室に向かう。

 室内の円卓には幹部が座り雑談をしていたけれど、僕達が入ると一斉に立ち上がった。

 

「では、幹部会議を始める前に、初対面の人はあいさつをしておいてください」


 スズさんが当然のように司会進行をはじめるけれど、僕を含め、文句を言える人はいない。

 そして僕の前に長蛇の列が形成されていく。

 はいそうですね。

 僕が来るまでに皆さん雑談されてましたものね。

 イジメか?


 そんな事を考えながら目の前の人を見上げていた。


「オットー=グラーツです。皇国軍では重戦士で構成される第三小隊の隊長をしておりました。何卒よろしくお願いします」


 短めの暗緑色の髪と彫りの深い顔立ちに蓄えたあごひげが特徴の偉丈夫だ。

 身長は二ジィに届くほどあり、身体が分厚い。

 

「パーティ【プラントハンター】およびクラン【白狼の聖域】のリーダーを務めるザートだ。加入してくれてありがとう」


 クラン設立の経緯などは皆知っているのではぶかせてもらう。

 得物は大身槍で、などと言葉を交わしていると、後ろから蜂蜜のような甘い声がきこえてきた。


「おーそーいー。オットー、後がつかえてるわよぉ」


 文句をいって前に進み出たのは波打つ明赤色の髪を結い上げた艶やかな美女だ。


「エヴァ=エッジワースでーす。遊撃メインの第六小隊で隊長をしてましたぁ」


「あ、ああよろしく……」


 私服の露出がフィオさんとは違った意味で激しい。

 抽象的にいうと慎ましくないエロスだ。

 遊撃って遊び人的なあれじゃないよね?

 いや、なんだかんだ言って小隊長だし、人格的にもちゃんとした……


(侯主様にふさわしいか、一挙手一投足見定めるから、よろしくねぇ)


 去り際に耳元ですごいドスをきかせてきた。

 半笑いの瞳はサクラ色のはずなのに病みしか見えてこない……

 だれだよ人格的にちゃんとしてるとか言ったの!

 遊び人の方がまだましだったよ!


 続いてきたのはセミロングの明黄色の髪をセンターで分けた中性的な青年だ。


「……っすいませんでしたぁっ!!」


 握手と思わせてからのいきなりの土下座である。

 えっなに? エヴァにつづいて何これ?


「ポール、謝罪は押しつけるものではないわぁ。ちゃんと説明なさぁい?」


 エヴァが戻ってきてポールの襟首をつかんで引き上げた。

 言っていることはまともだけど、僕はその行為に引いてるよ?


「あの、僕は索敵部門の第七小隊隊長、ポール=クロベです。ハンナさんの暴走を止められず、先日公爵領で待ち伏せされてしまい、結局団長に救出されるまで身動きがとれませんでした。もうどうお詫びすればいいのか……」


 困惑した顔はもはや半泣きだ。狼耳は完全に寝ているし、不憫過ぎるじゃないか。

 あとエヴァ、いい加減離してあげて。


「あー、その、悪いのはハンナなんだからポールがそこまで抱え込むことはないよ。第七小隊が作戦通りに動いてくれたから、僕も安心して動く事ができた。ありがとう」


 ねぎらいの言葉と一緒に立たせると、明黄色の瞳がキラキラとしてせまってきた。


「団長ぅー!」


 感極まった声とともに抱きつかれた。

 自分より年上のお兄さんに。

 この感情表現の激しさは索敵担当としてどうなの?

 なかなか離してくれないので近くにいたバスコさんにはがしてもらう。


「ポールが悪かったな、ついでだから俺も名乗っとくか。バスコ=アズナール。知っての通り、俺が預かってるのは海戦にむいた魔法戦士の小隊だ。ついでにいえば、コリーの姓はバーノン、工兵部隊を指揮する。ジャンヌの姓はヴィレットで弓と刀を使う軽戦士部隊を指揮している。後第八小隊のイネスは……まあ、そのうち本人が来るだろう」


 最後だけ言葉をにごすので気になったけど、これで皇国軍の自己紹介は終わったかな。

 後初めて会う人は……


「初めまして。私はゾフィー=アロンと申します。ウルヴァストン子爵の元で働いておりました、文官のとりまとめをさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 明紫色の髪をショートカットにした、メガネが印象的な美人だ。

 スズさんとはまた違ったクールさを持った人だな。

 文官の採用はクローリスに任せていたんだけど、大丈夫だよな?


「あの、なにか……?」


「い、いいえ! なんでもありません。クローリスのフォローをよろしくお願いします」


 さっきのエヴァの件があったので疑ってしまったのが顔に出ていたのかな。

 良くない良くない。

 さて残すところは、アレだな。


 僕が送った視線の合図に、スズさんが不敵な笑みで答えた。

 

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