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01_11 冒険者の人生設計

 真剣なリズさんの濃紺の瞳は静かな夜の海の様で、嘘で汚すのがなんだか罪深いような気がした。


「そうですね……今は軽戦士ですけど、狩人になりたいです」


 最強を目指す、みたいなありきたりで漠然とした希望を正直に答えた。


「知ってるでしょうけど、ソロ冒険者はオールラウンダーよ。護衛の金級ならともかく、その上の狩人のソロとなると、最近なら『蛮勇』『解析』『一重』くらいしかいなかったわ」


 リズさんはため息をつきつつも真面目に心配してくれているようだ。


「差し支えなければなんで金級冒険者の中でも魔獣狩りに特化した狩人まで目指すのか訊いてもいい? 実際殆どの冒険者は銅級で気楽に暮らしているのよ」


 確かに、食い詰め者はあくまで食うためにブラディアに来たのであって、人並みの生活ができればそれで目的は達成だ。わざわざ上を目指す理由はない。


「僕は、領主になりたいんです」


 静かに、リズさんにしか聞こえない声でつぶやく。

 最初はただ生きて行ければ良いと思っていた。

 でも、叔父の遺産の力を知って、自分の中の怒りに気づいてしまった。


――復讐したい。


 それは一族への怒りではなく、まともなスキルをとれず、家族の場所を守れなかった自分に対しての復讐だ。

 たとえ一族に戻れなくても良い。

 家を興して暖かい場所をとりもどしたい。

 貴族の中でも法衣貴族ではない、領地もちの貴族であれば、武力さえ磨けば居場所を失わずにすむ。他人から必要とされる。


 たまたまかもしれないけど、マザーが僕に狩人としての叔父の遺産をくれた事に感謝している。

 将来、何かの弾みで自分の本心に気づいて、何もできない自分に絶望して死ぬかもしれなかった。


「ザート君」


 静かなリズさんの声で我に返った。


「ごめんね。流れで訊いてしまったけど、今の話は誰にも話さないから安心して」

「そうですね。お願いします」


 恥ずかしくて曖昧な笑みを浮かべてしまった。


「話を戻しましょうか。なぜ最初に目標を訊いたかというと、冒険者には人生設計をしてもらいたいからよ」


「人生設計、ですか」


 正直ちょっと意外だった。偏見だけど、受付嬢は冒険者のやる気を高めるためにきれいどころを集めただけ、というイメージだった。


「そうね。少し前まで『コスパ』だけを基準に仕事して行き詰まる冒険者が多かったの。だから今は冒険者の目標を訊いて、それに応じた依頼を提案するアドバイザーもしているのよ。昔はただの『嫁候補』だったけどね」


 リズさんが不敵に微笑む。すいません、ちょっとそう思ってました。


「ということで、ザート君の場合だけど、スタイルは堅実。武器も、結構良い物を選んでいるわね。バックラーも見たことは無いけど安物じゃない。実戦講習は受けてるでしょ?」


「はい。もちろん」


 実戦実習は新人研修の終盤に受けるもので、引率と一緒に少人数で魔獣を狩るというものだ。

 ギルドもさすがになんの心構えもなく殺しにいけ、と放り出しはしない。


「それじゃ、以上で聞き取りを終わります。ごめんなさいね、思ったより時間がかかっちゃって。今からだと宿を取るのがむずかしいかも……」


 らせん階段から射す光は少し赤みがかっているから十六時は過ぎているんだろう。

 見回せば他の冒険者はとっくに宿を取りに行ってしまったようで、ギルド内には職員しかいなかった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 急に金級がどうとか護衛の上の狩人とかいう話が出てきてよくわからないんだけどなんか説明あったっけ
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