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04_15 スズさんと内政


 クローリスとランチを食べてから午後の面接をして、ブラディア王都の拠点に向かった。


 クランはだいたい自分達の財を誇示するために貴族の邸宅のようなものをつくるらしいけど、僕らは違う方向性で建物を探した。

 僕の目の前にある建物は、もとは大規模な宿として使われる予定だったものだ。

 木造四階建てのロの字型をした建物で、内向きにむかったテラスがあってクランに所属する一般冒険者が快適に寝泊まりできるようになっている。

 ちなみに完全な賃貸だ。


「お帰りなさいませ、ザート様!」


 入り口で僕を出迎えてくれたのは黒髪の猫獣人の女の子、ハイネだ。

 庶務をする職員を募集した際、ヌマル亭の人達がまるごと応募してくれたらしい。

 スズさんのことだから僕らが知り合いだったっていう事も加味しての採用っぽいけど。


 ハイネの両親の決断も、おそらく独立戦争をみこして応募してきたのだと思う。

 こういった感覚は庶民の方が優れていて、領都のなかで先が読める人はすでに動き出している。


「ただいまハイネ。スズさんはどこにいるか分かる?」


「えっと、さっきは三階の吹き抜けにいましたー」


 ハイネに部屋の用意を頼んで入り口近くの階段をつかい三階に上がると、四階まで吹き抜けになっているサンルームでスズさんが何かメモをとっていた。


「ああ、もどったのですね、リーダー」


 暗緑色の髪を編み込んだ頭をこちらにむけながらも手元でペンを動かすのをやめない。


「ただいまスズさん、何書いているんだ?」


「前に頼まれていた居住区のデザインです。今のところプランは三つですね。みてもらえますか?」


 今日文官の面接をしたので統治する人材の目処はついた。

 人の次に必要なのはハコを作るための都市計画だ。

 ティルク人がどれくらい第三十字街にやってくるかわからない以上、柔軟で拡張性の高い計画を練っておく必要がある。


 都市の主な産業は農業しか選択肢はない。

 農業は適切な指導者と優れた土地があればほぼ成立する産業だし、食料を自給できれば他領から買い付ける費用も少なく出来る。


 けれど、ブラディア王からは”管理可能な土地で”というオーダーをもらっている。

 つまり従来の開放的な農村、ではだめという事だ。

 ティルク人だって皆善人というわけではないし、膂力のある種族も多いため弱者でもない。

 難民として領内に入れてから夜盗になられても困るのだ。

 

「というわけで、C案では長屋の背中をまるごと一枚の壁にして通り抜けができないようにしました」


 スズさんが差し出したフリップには十字に伸びる長城から直角に伸びる長屋が描かれていた。

 十字に描かれた長城の凹みから、正方形が幾重にも縞模様を描いている。


 特徴的なのはその角が結ばれていない点だ。

 そこは大通りとなっていて、長屋に住む人は大通りを通ってほかの列の長屋や十字街まで移動する。


「長屋の前は畑です。長屋の背中は一枚の壁ですので、逃亡は中央の大通りを通らなければ出来ません。人が増えれば外側に同様の長屋を作るので、拡張も容易ではないでしょうか」


 うん、管理が容易で拡張性もある。農業も必要十分な形でできるだろう。

 ちょっと無機質だけど、戦時という状況を考えれば納得もしてもらえるだろう。


「わかった。スズさん、アウトラインはC案にして煮詰めて欲しい。建築ができる文官も採用しているから、彼とディテールを詰めたら引き継いでくれ」


「……わかりました」


 なんだかスズさんがうろんな目をしている。

 建築の仕事を取り上げられるのがいやだったのかな?


「スズさんには次の仕事が待ってるよ。拠点の管理や建築ばかりさせるわけには行かないだろ?」


 スズさんは皇国の外交にも精通しているし、指揮官の能力も高い。単体の戦闘力もある。

 こんな優秀な部下を遊ばせるなんてもったいない。

 

「いえ、なんであなたみたいな人が冒険者を……いえ、失礼しました」


 頭を下げるスズさんに僕は手を振った。


「そのうちね。仕事、頼んだよ」


 うぬぼれてはいないけど、今回の件がブラディア王に評価されれば僕の望みは実現に近づく。

 僕の過去なんてその後、いくらでも暴けば良い。

 でも今はその時じゃないんだ。

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