04_08 結成パーティーと今後の方針
フィオさんの説教でエンツォさんとバスコさんが沈むのをカウンターで見ながら、久しぶりにハーブエールのウルフェルを飲んでいる。
この物件は元々大規模な宿屋だったんだろう。間取りや設備が宿屋のそれと一緒だ。
ちなみに説教が始まる前に、フィオさんとエンツォさんがアドバイザーだということは改めて皆に紹介している。
ケンカの原因はフィオさんらしい。
先に来ていたフィオさんがカウンターを掃除していた所にバスコさんが来て、そんな派手な格好でクランに出入りするな! とか言ってしまったらしい。
ウブか!
あれでもフィオさん的には押さえてるんだけど、今後が心配になってくる。
その後はエンツォさんが帰ってきて口論になり、狼獣人同士、上下関係はっきりしようという流れだったらしい。
エンツォさんの強さも知れ渡ったから結果的に良かったけど、何をやっているのか。
まだたまにエンツォさんにかみついているバスコさんを見ながらツマミを食べていると、誰かに名前を呼ばれたような気がした。
怪訝に思って後ろを見回すと、五人がけのテーブルの間をぬってアルバトロスがやってくるのが見えた。
「ザートぉ、ちょっとぐらい待ってくれてもいいじゃねぇかよぅ」
ショーンさんがちょっとすねた口調でいってくる。
かわいくないからね、それ。
「ごめん、僕らが来た時にはもう始まってたんだ。文句はケンカを始めたそこのマスターと小隊長にいってやって」
そういえばエンツォさん達にアルバトロスを紹介しなきゃな。
「エンツォさん、フィオさん、彼らが最初のクラン加入パーティ【アルバトロス】です」
エンツォさん達の名前を聞いたら普段自由なアルバトロスの皆が皇国軍みたいに固くなってしまった。
「はじめまして。アルバトロスリーダーのショーンです! 槍を使います」
「私はオルミナです! 竜使いです」
「デニスと申す。得物は斧」
僕の紹介に間髪入れず三人がそれぞれ自己紹介をする。
皆直立不動で固まったままだ。普段とのギャップが激しい。
硬直がとけたオルミナさんが慌てて僕を引き寄せて質問してきた。
「ちょっとザート君! クラン【サバイバー】の元幹部二人じゃない! こんな人達がクランに来るなんてきいてないわよ!」
ああ、エンツォさん達はジョージさんのクランの幹部だったな。
「アドバイザーが来るって伝えましたよね? 子爵がよこしてくれたアドバイザーが彼らですよ」
僕もさっき知ったんだけどね。
確かにエンツォさん達なら大規模クラン運営のノウハウとか教えてもらえそうだ。
最初は固かった【アルバトロス】も、酒をのむうちになれてきたみたいだ。
今は普通にしゃべるくらいにはなっている。
「すごいわぁ。今どのクランにも真竜なんていないし、複属性ならなおさらよ」
フィオさんが本気で感心するのでオルミナさんがしきりに照れている。
カウンターでは男四人も打ち解けて話しているし、ちょうどいい頃合いかな。
「みんないいかな! ちょっときいてくれ」
五人で一班、合計八班を組んでいるバスコ隊がいっせいにこちらを見る。
さすがの練度だ。
コトガネ様から牙狩りの講義を受けているリオンも、領都ギルドへの出向が決まった事についてスズさん相手にグチっているクローリスも一応顔を向けてくれた。
「盛り上がっている所悪いが、クランの今後の予定について話しておく。【白狼の聖域】はここ第三十字街を本拠地として、領都とグランベイに拠点を登録している。直近でしなければならないのは皆の実績づくりだ。具体的には第三長城外で指定の魔獣を狩ってくる事。皆が銅級冒険者として活動するためにはクリアしなければならない課題だ」
ティルク人の中で【白狼の候主】は特別だから、リオンの所属するクランには一般の冒険者の加入希望も増えると予想できる。
これで【白狼の聖域】の厳格さが広まればいいんだけど。
「元軍人である皆なら問題ないと思うが、できるだけ速やかに課題をクリアしてほしい。スズの話では、じきに君らのいた駐屯地パトラから大隊の本隊がくる。彼らが課題に取り組む前にノウハウを蓄積しておきたい」
呼び捨てしたせいかスズさんの目つきが怖い。
こういう所では呼び捨てが基本なんだから許して欲しい。
そしてクローリスの目つきが悪い。
まだ領都出向を恨んでいるのか。
「銅級冒険者登録は領都のギルド本部で各パーティが行って欲しい。そこで飲んだくれているクローリスが受付にいるから優先的に並んでやってくれ」
「なんで仕事増やすんですか! ちゃんと固定給もらわないと職務放棄しますからね!」
追い打ちをかけたら逆ギレされた。
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