第54話 イレアの想いと炎の試練
「ミスズさんと付き合ってるって、ホント?」
いくつか想定していたケースの中で一番面倒なパターンだった。だがこういう手を使ってくるのは何より俺が一番分かっていた。身に覚えがありすぎる。どう対応したものかと少し黙って返答を色々と考えたが、
「事実無根だ。ミスズさんとはそんなんじゃないよ」
「えっ? でも極東の頃からの関係だって……実はリオを追いかけてこっちに来たって言ってるらしいんだけど、訳アリな感じ?」
「いや、全くの初対面だよ」
「うーん……本当に?」
「本当だよ。一体何を吹き込まれたんだ」
やや語気を荒げて言うと、トーヤの反応も訝し気になる。まだ授業まで時間はあるな。俺は事細かに聞く事にした。
「――なるほど、極東に居た頃から俺とミスズさんは付き合ってて、俺がこっちに来た時に別れたけど向こうはまだ関係が続いてると思ってるから、俺はそれが鬱陶しくて無関係を装ってる、か」
「うん、そんな感じ。女子の間だとみんなそう思っててさ、応援するとかなんとか」
とんでもなく面倒な状況だ。しかも嘘にもある程度筋が通ってる上に、彼女が俺について詳しい理由にもなる。だが俺の事を知ってるのは上から色々と情報を得ているからに違いないし、言った通りそもそも初対面なのだ。
「でも、なんでそんな嘘を……ホントに違うんだ?」
「信じてくれよトーヤ。色々と理由があるんだ」
考え込むトーヤ。まさか天真爛漫な留学生が友人との関係で嘘を吐いているなんて思いもしないだろう。しかし厄介なことに、ここで彼を説得できてもクラスメイトの女子達はミスズの言う事を信じるかもしれない。悲しいかな、編入して五ヵ月以上経ってるのにほとんど話した事ないからな……
「分かった。でも学園のためにも留学生達を無碍には扱えないんだ。事情は知らないけど、できるだけ穏便に済ませられない?」
「……善処する」
向こうが何かを起こそうとしている以上、対処せざるを得ないだろう。しかしそれよりも気にすべき事がある。
「イレアも聞いてるんだろうなぁ……」
あの反応だ。昨日の今日でそんな事を聞いた彼女の心情は計り知れぬ。やがて授業が始まる時間になったので、イレアと目を合わせないように……するのも疚しい事があるように思われそうなので、堂々と教室に入ることにした。ああ、クラスの目線が痛い。
■□■□
「イレア――」
「リ~オ君、また学園の案内してよ!」
放課後。結局その日中イレアと話せなかった俺はいの一番に呼ぼうとしたのだが、それよりも早くミスズに遮られてしまった。クラスメイトの女子達が遠巻きに見ている。
「ミスズさん、俺はイレアに用があるんだ。今日は他の人にお願いしてもらっていいかな」
「え~、いいじゃん! ね、イレアさん?」
「……いいよリオ、私の事はまた今度で。じゃあね」
「イレアっ?」
非情に不味い。ああ見えてイレアは意固地な所がある。今ここで引きとめないと――
「さ、行こっ?」
「あ、おい、イレア!」
ミスズに引き摺られるように、俺はイレアと離されてしまう。それを見て更に騒めくクラスが憎らしかった。
「どういうつもりだ」
人気のない廊下に来た俺は、ミスズを壁際に押し付けて睨んだ。もう取り繕うつもりも無い。
「ちょっとー、誰か見てるかもよ? こんな所で何するつもりー?」
「とぼけるな。誰の命令だ? 学長か? 極東軍か?」
「違うよー。私がそうしたかったんだもん」
「ふざけるな」
そう言って、一旦深呼吸をする。事を起こしてはいけない。それはこの場で一番の悪手だろう。
「だってさー、許せないでしょ? 私達を――極東を捨てるなんてさ?」
「俺が極東を裏切ったからって言いたいのか?」
「そうだよ。今までずーっと一緒にいたのにさ、こっちのオンナのために裏切ったんだよ? おかしいよね?」
ああ、彼女がクラスメイトに話したであろう事は、人称を歪めただけで彼女にとっては事実らしい。極東を捨てた俺を連れ戻す。彼女の目的は分かった。つまりは。
「母さん――ミヅカ・シオンの命令か」
「どうだろうねー? でも、私個人として許せないのはホントだよ?」
そう言い放つ目には嘘は無い。彼女もまた極東の人間――俺達の敵ということだ。
「いいか、俺は極東には戻らない。母さんに義理はあるけど、戦争を起こそうとする国に帰る気なんて一切無い。それに、この国は俺のもう一つの故郷だ」
「ふーん……そんなにあのお姫様が大事? ダメだよ、惑わされちゃ。リオ君の故郷は極東なんだから」
「知るか」
「……じゃあ、その理由が無くなれば帰って来るのかな?」
ダンッ――
反射的に彼女の顔の横スレスレ、壁を殴りつける。『硬化』された拳はレンガの壁の塗装を剥がし、破片がパラパラと床に落ちた。
「イレアには、手を出すな」
「へぇー、大事にされてるんだね」
「じゃあな」
もう話す事は無い。そう言外に伝えて、俺は教室に戻ることにした。イレアを追いかけても遅いだろう。説明するのは明日だな。それより、まだ職員室にいるだろうソージア先生に話をする方が先だ。
「ふーん……無意識かな? 複合属性の精霊術は知ってたけど、今、詠唱もしなかったね。昨日はやってたのに。やっぱりお気に入りは凄いなぁ……」
残された彼女の呟きを聞く者は、この場には誰もいなかった。
■□■□
「ごめん、お待たせ。話って何かしら?」
「ミスズと……あと、イレアについてです。時間貰えますか?」
職員室の前でしばらく待って、ようやく仕事が片付いたソージア先生に会うことができた。今日も今日とて忙しいみたいだ。
「いいわよ、もう周りには聞こえないから。話してちょうだい」
防音の精霊術を使った先生に、俺は今日トーヤに聞いた話とミスズ本人から聞いて判明した目的について話した。
「面倒な娘ね……いえ、事態も面倒だけど、その娘もかなり面倒な性格ね。それで、イレアさんの話っていうのは?」
「実は……その事をクラスメイトから聞いてしまったみたいで。今日一日話してくれなかったんですよ……」
言ったはいいもの、なんだか情けないな。そしてそう思ったのは先生も同じらしい。
「留学生の件についてはご当主様に報告しておくわ。だけどイレアさんの事はリオ君がなんとかしなさい。婚約者でしょ? こんな事まで報告されたくはないわよね」
「仰る通りでございます」
溜息を吐いて、俺は大仰に返事をした。でも、と先生は続ける。
「イレアさんね、最近ちょっとナーバスになってるみたいなの。マリッジブルーって言うのかしら? まだ婚約だからちょっと違うかもしれないけど」
「ナーバス、ですか」
「ええ。あの娘、こういう事にはずっと無縁だと思ってたでしょうから。だからリオ君がしっかり支えてあげなさいね。大変だろうけど、応援してるわ」
「……ありがとうございます」
確かに最近のイレアは様子が少し違う。夏休みが終わる前、ドラヴィドとの抗争があった頃からだろうか? 色々と事件が重なったのが原因かもしれない。
「そうだ、これ渡しておくわね。あとこれも」
懐から鍵とメモを取り出し、何か書いて一枚俺の手に押し付けた。これは……住所?
「さ、行ってらっしゃい。言わなくても分かるわよね」
イレアの住所だろう。なかなかに発破をかけてきたな。返事の代わりに、俺はふと思った事を聞いてみた。
「そういえば、先生は将来結婚とか考えてるんですか?」
「……やめて、リオ君。私だって考えないようにしてるんだから。ほらさっさと行ってらっしゃい!」
どうやら触れてはいけなかったようだ。先生の年齢ならまだ気にする事じゃないのに、なんて言いたくなったがそれは藪蛇だろう。バシンと背を叩かれ、俺は教員棟を後にした。
■□■□
「ここか」
着いた先は、学園と繁華街の間にある閑静な住宅街だった。その中の一軒、小さな二階建ての家が目的地である。
「緊張するな。何から話せばいいんだ? そもそも今いるのか……」
明日アポを取ってからの方がいいのでは、とか今日はやめとくか、とかウジウジ考えておよそ十五分。通りすがりの人の目が不審なものに変わった頃、
「……あ」
「リ、リオ?」
ガチャリ、とドアが開いて住人が姿を現した。
買い物に行って参りますと言って、お茶を出した使用人は出て行ってしまった。気を遣われたようだが、逆に居心地が悪いような感じもする。
「えーっと、何て言うか……」
「なんか用事?」
言い淀んでいると、首を傾げられてしまった。説明をしに来たんだと言おうと思ったが、
「いや……用事が無かったら、駄目か?」
「! う、ううん」
昨日言われた事をそのまま返してみた。苦笑し合って少し雰囲気が和らぐ。
「まあ、用が無いって訳じゃないんだけどな。少し話がしたくて」
「その……留学生の事?」
「ああ」
だが話題を切り出すとまた緊張感が戻ってしまった。それに臆することなく話を続ける。
「もしかしたらイレアは、クラスの人から俺とミスズの関係について聞いてるかもしれないけど……あれは全部嘘だ。彼女が勝手に言ってるだけ。更に言えば、俺に近づくための彼女の策略だ」
「……本当に?」
「ああ。ミスズは予想通り極東軍と繋がりがある。俺を極東に連れ戻すのが目的みたいだ」
それから、ソージア先生に話したのと同じ事を丁寧に説明した。少なくともそういう関係じゃないってのは特に懇切丁寧に。
全部を話し終わった時、イレアは少しだけ声を震わせて、頭を下げた。
「ごめん、リオ」
「な、なんで謝るんだ?」
「ううん、ごめんなさい。教室であんな態度とって、ちょっと疑っちゃってて……」
そう尻すぼみに言うと、また俯いて目元を拭った。しばし無言で見守る。
「……ごめん、ちょっと待ってて」
立ち上がって部屋を出るイレア。顔でも洗いに行ったのだろう。
一人残され、主人のいなくなった部屋を見渡す。俺が来てウンディーノ家との関係が変わるまで、イレアはずっとこの家で一人だったのかと思った。そんな境遇の彼女にとって、良くも悪くも他人に振り回されるのはストレスなのかもしれないな。
「もう大丈夫か?」
「うん、ありがと」
すぐに戻って来たイレアの顔はさっぱりとしていた。
「なんか、リオがどこかに行っちゃうような気がして。戦いが始まってから、リオが遠くなっちゃった感じがしたの」
「そんな事ないよ。俺だって置いてけぼりにされてるんだから」
「でも不安だったの。私でいいのかなって。そしたらあの娘が来て……」
確かに、ドラヴィドの兵士が来た時のホテルを警備する作戦の辺りから、イレアとはあまり一緒に居られなかった。夏休みの間、毎日家にいるのを見て俺は安心感を覚えていたのだが彼女は違ったようだ。ヒナと一緒で安全な所にいて欲しい、という俺の思いと彼女自身の考えは違うらしい。
「ねえ、リオにとって私って何?」
「婚約者だ。最初はそう決められただけの友達だったけど……今はもう大事な家族だよ」
「……うん」
不安を与えないように即座に答える。そうすると幾分か安心したようだ。
「リオはさ、自分一人でなんでもやろうとしちゃうし、割と秘密主義だよね」
「ご、ごめん」
「責めてる訳じゃないの。でも直して欲しいっていうか、もっと私とかヒナちゃんを頼って欲しいから」
「……ヒナにも前に同じ事言われたよ」
やはりというか、俺にもイレアを悩ませた原因はあるみたいだ。人を頼るってのは思ったよりも難しい。ティフォ先輩の事を言えないな。だがこうやって話をして解決に近づいたのは良かった。と思ったのだが、
「でもね、その……他の娘とあんまり一緒にいるのは、やっぱりイヤ」
いくら理解したとしても、それとこれとは別らしい。乙女心は分からないな。
それからというもの。
「リオ君、今度街を案内してよ!」
「行くよリオ。買い物付き合ってくれるって昨日言ったよね?」
イレアがやけに積極的に俺を連れ回すようになった。昨日今日と二日間、朝から夕方まで何をするにも側にいる気がする。昼食を一緒に食べるヒナに「なんかあった?」と聞かれたが、どう答えればいいものやら。
「あ、ああ。悪いミスズさん、その話はまた今度で!」
クラスメイトの視線が前にも増して痛い。おいトーヤ、「修羅場だ……」って今言ったの聞こえてるからな。お前には話しただろ。
「え~? ねえねえイレアさーん、じゃあ私もついてっていい?」
「ごめんなさい、所用がありますから。ごきげんよう」
聞きなれないお嬢様言葉でミスズを追い返すイレア。あの、眼つきが怖いです。そしてミスズも殺気のようなものを漂わせている。両側からの圧が怖い。どちらかと言うと味方の方が。
「行こ、時間無いから」
「わ、分かった」
「あーリオ君ひどーい! 置いてかないでよー!」
傍から見れば痴話喧嘩。その実は小規模な国家間のいざこざである。俺を引っ張って教室から出る時、イレアは振り返ってミスズに小声で言った。
「――リオは、貴方達には渡さないから」
「……へえー、そうなんだー」
声は聞こえなかったものの、それを見たクラスメイト一同は思い出す。「氷の姫」というイレアの異名を。限りなく冷たい視線を受け、ミスズ以外の者は凍り付いた。
「……なあイレア、今のやつ、大丈夫なのか?」
「向こうの嘘に便乗したってことにすればいいよ」
と、軽く言うにはやけに実感の籠った台詞だったな。再び騒がしくなる教室を余所目に、俺達は学園を出るのだった。しかしいつものキャラはどうしたんだと思ったが、
「顔赤いぞ」
「……もう」
恥ずかしいものは恥ずかしいみたいだ。
■□■□
「リオさん、イレア、準備は宜しいようですね」
「はい、お婆様」
「大丈夫です」
そしてその週末の土曜日。俺達はウンディーノ家本邸に呼び出されていた。謁見の間にはリギスティアさん、イレア、俺とソージア先生だけだ。
「ふふふ、最近二人の仲が大変良いとソージアから聞いています。それも準備の一環かしら?」
「い、いえ! それはっ……」
「冗談です。事情は聞いていますよ。向こうがリオさんに探りを入れているなら、逆に堂々と発表してしまいましょう。探られて痛い腹ではありませんからね」
慌てるイレアに微笑むリギスティアさん。俺まで恥ずかしいな。
「では、明後日の当主会議……そこで婚約を公表します。貴方達に何か特別な事をしなさいとは言いません。ですが、ウンディーノ家を代表する自覚を持ち、毅然としていなさい。いいですね?」
「「はいっ!!」」
泊まっていくかと聞かれたが、ヒナにも悪いので今日は帰ることにした。ここでの用も済んだしな。すぐに学園に帰るかと思いきや、ちょっと来て欲しいとソージア先生に言われて俺とイレアは中庭について行った。
「リオ君。私と戦ってください」
庭の中央に立ち、先生はそう言い放った。
「いいですけど、なんでですか?」
「これからイレアさんを貴方に預けるからです」
両親もおらず、ウンディーノ家からも疎まれていたイレア。そんな彼女が小さい頃からの唯一の支えとなっていたのが、ソージア先生である。親代わりの家族と言ってもいい。娘を嫁に出すような気分なのかもしれない。
「本気で、全力で来てください。私も手加減はしません」
だから、今一度俺を試すのだ。そしてそれは既に始まっている。ここで躊躇うようではいけない。
「――マテリアル・オーダー」
懐から取り出した硝子球に力を込め、漆黒のマテリアルに変える。先生も満足そうに頷き、構えた。
「精霊よ――焼き尽くせ、龍爪花」
「『加速』!」
攻防は唐突に始まった。マテリアルをその場に残したまま左に避ける!
「燻れ、紫陽花」
そのまま先生を中心に左回りに走りながら、少しずつ距離を詰める。無数の火種が俺を追って爆ぜた。
「食い止めろ、流泡――もういっちょ、流泡!」
炎は二重の水膜に穴を開け、ジュウジュウと水蒸気が音を立てる。中心に近づくに連れてその勢いは増していく。その距離、あと一歩!
「はぁあっ!」
「その程度っ」
腰から大振りのダガーを抜き、一気に方向転換して刺突! だが、先生はそれを余裕を持って避けて――
いや、最初に作ったマテリアルはどこに?
「今だっ!!!」
「っ!?」
ビュン、と空気を切り裂く音。全ての術を捨て、先生は最速の身体強化で跳躍した。その足元スレスレを俺の元に飛んでくるのは、漆黒の刃。
「あーあ、これでも駄目ですか」
「不意打ちへの対応ができなければ護衛は務まりませんからね」
マテリアルは最初に地面に置いて、ゆっくりと形状を変化させていた。もちろん俺は触れている。本体に繋げたまま見えないくらい細く長く伸ばしたマテリアルの糸が、俺の手元には握られているのだ。走り続ける俺も水蒸気も囮。糸を何周かさせて引き寄せれば絶対当たると思ったんだけどな。真上に逃げるとは勘が良い。
「これで終わりですか?」
「まさか」
即答するも、ただの虚勢だ。もう小手先の策は無い。ならば、俺のカードを全て切るだけだ!
「『加速』、流泡――『乱聴』!」
キィィィイイイイイイイン――――――
「精霊よ――っ、これ、はっ……!」
耳障りな超高音が響く。しかしただの音ではない。俺を迎え撃とうと構えた先生の足元がグラついた!
「やあっ!!」
ティフォ先輩の監修で作られた『乱聴』。鼓膜の更に奥――三半規管を狂わせる、精霊術の波を含んだ怪音波だ。もちろん俺に空気を直接振動させるような力は無いので、マテリアルを水と風の術の複合で震わせて音を出している。
「くっ……!」
一転攻勢、体勢を崩した先生に黒剣で斬りかかる。横薙ぎ、袈裟懸け、逆袈裟懸け、大上段と、流れるような剣戟。防御は捨てて水膜に任せた。先生の操る炎に翻弄されながらも、届いている!
「はっ!」
「……っ!!」
渾身の一振り。切っ先が触れ、血が舞う。血はすぐに焼け焦げ、臭気が漂う。――もう一撃。これで、最後!
「はぁぁあああああっっ!!!」
「花開け――麝香撫子!!」
一閃。確かな手応え。あの日を思い出させる、生きた肉を斬った感触。なのに。
「これで終わりです」
切り裂いたはずの傷跡が燃えている。先生は依然として立っている。そして、赤く輝く手を俺に伸ばし――
「ぐぁあああああっっ!!」
熱い。暑くて、熱い! 炎が、視界を、全身を舐める。熱した空気が肺に吸い込まれ、呼吸もできない。
「――これなら、イレアさんを――――」
思考すら焼き尽くす烈火に、俺は意識を手放した。




