第52話 極東軍の精霊術士
初秋の風が吹く静かな草原。邪霊の気配も無い平野で、三人の男女が視線を交わしていた。
「二か月ぶりかしら? 元気そうね」
悠々と佇むのは、極東軍の幹部にしてリオの母、ミヅカ・シオン。
対して声も出せずに身を竦ませているのは、学園の教師兼ウンディーノ家の護衛、ホムラ・ソージア。
「――――どうして、ここに……」
そして渦中の少年、ミヅカ・リオは怯えた声で母に尋ねていた。
一歩も動かないシオンと、一歩も動けない二人。この場の空気を支配するのは、身じろぎすら許さぬ恐怖の感情である。
「……あら、効き目が悪いのかしら? それともリオが相手だから? まだ改善の余地があるわね」
ややあって、シオンが首を傾げて呟くと同時に――
■□■□
「――っ、はあっ、はぁっ……!」
「……! 母さん、今、何を!?」
なんだ!? さっきまでの母さんは、何かが違った。怖かった。母親がだ。俺と母さんの間に確執があるのは確かだが、あのような恐怖を与えるものではない。気が遠くなるほどの異常な恐怖。――きっと、精霊術だ。
「ちょっとした実験よ。良いサンプルが取れたわ」
横に立つソージア先生はその顔を蒼白に染め、忘れていた呼吸を取り戻すように息を切らしていた。先生が動けない。俺が何とかしないといけない。
「母さん、どうしてここにいるんだ? ずっと公国にいたのか?」
学長が言っていた通り、やはり国内にいたのか? それともこの草原のどこかに潜んでいたのか。だがソージア先生が気配を探れなかったのだ。唐突に現れたかのように。
「ううん、極東にいたわ。母さんだって仕事で忙しいもの」
「じゃあ、どうやって……いや、いい。どうして母さんがここにいるんだ?」
前半の疑問を飲み込み、ここにいる手段ではなく理由を尋ねる。場合によっては、逃げるか戦うかだ。和解の道は疾うに考えるのをやめた。
「お仕事よ。でもリオとヒナに会いたかったから、先にこっちに来たの。ヒナも近くにいるんでしょう?」
「……俺達を、どうするつもり?」
「そうね。極東に帰ろうって言ったら?」
「嫌だ。俺はここに残る。ヒナも一緒に」
「そう……」
そう言った母さんは、悲しげだった。本当に俺達を極東に連れ戻したいのだろう。でも、そういう訳にはいかない。
「リオは、ウンディーノ家の人を助けるのね」
「うん。あそこは、もう一つの俺達の家だから」
「お父さんの事、聞いたのね」
「詳しくは知らない。でも、リギスティアさんは俺達を家族だって言ってくれた」
母さんは少し俯いて黙った。しばらくして、二人分の足音が聞こえる。ヒナとイレアだ。
「――お母さん!?」
声をあげるヒナと、同時に驚くイレア。ようやく立ち直ったソージア先生は振り返り、二人に目で合図した。逃げる準備をしろと。
「ヒナ、元気だった?」
「う、うん……お母さんも、その、元気?」
ヒナもいつもの調子とはいかず、目を逸らして答えた。
「ええ、元気よ……ねえ、ヒナにも聞くけど、極東に帰るつもりは無い?」
「……ごめん、お母さん」
期待を含ませずに尋ねた母さんに、ヒナはただそう答える。しばらく母さんは目を閉じ、納得したように再びこちらを真っ直ぐ見つめた。
「リオ、ヒナ。二人のことだから、何を言っても極東には帰ってくれないと思う。でも一つだけお願いさせて」
「……それも聞けないかもしれない」
「うん。でも言わせて。二人には、戦うのをやめて欲しいの。お母さん、二人が傷つくのは嫌だし……それに、二人を傷つけたくない」
「ごめん……俺は、戦わなきゃいけない」
「わたしも。もう見てるだけなのは、イヤ」
決定的だった。これが、親子としての最後の会話になった気がした。
「そうね。なら――」
変わった。空気が、オーラが、感情が。先程と同等かそれ以上の恐怖。威圧感と共に母さんは口を開いた。
「極東統治領軍、ミヅカ・シオン少将として警告する。ミヅカ・リオ並びにミヅカ・ヒナ両名を、イチイチハチ作戦の阻害対象者としてウンディーノ家各位と同様、注意対象と認定する。以降、当方の警告に従わない場合の武力行使を容認するものとする」
「――何を、言って……!」
警告、作戦、武力行使。……敵対。いや、怯んでいる場合じゃない。動かないと。でもこの空気は――そうだ!
「っ! 精霊よ――吹き散らせ、ミストパルス!」
俺の周囲に霧が放たれる。同時に、視界が開けたような、空気が軽くなった感覚。そうだ。前に戦った邪霊の攻撃と同じだ!
「みんな、精霊術を!」
「……『鎌鼬』!」
すぐに反応したヒナに続き、各々が周囲に精霊術を展開した。俺もすぐに「流泡」を張り直し、後ろの三人を見渡す。少なくともさっきよりは大丈夫だ。
「あら、対策済みかしら。まあいいわ。リオ、ヒナ、聞きなさい。最後の警告よ。母さんと一緒に極東に戻りなさい」
「嫌だ。戦争を起こそうとしてる国には、帰りたくない。俺は戦争を止める。俺が戦うことになっても!」
「分からないわ。それならリオは傷つくじゃない。帰って来るなら、二人は安全に暮らせるのよ?」
「違う! ただ……分からないけど、戦争は止めないといけないんだ!」
口にすると、不思議だった。以前から持っていた戦争への言い様の無い忌避感。説明のつかない、本能による否定。分からない。だからこそ、それには逆らえない。
だがそれを聞いた母さんは、一転して納得したように言った。
「なら、大精霊と対話をしなさい。残りの二つ……そうすれば分かるはずよ」
「……! どうして、そこで大精霊が出てくるんだ!? 教えてくれよ、母さん!!」
「お母さん! お願い! 話を聞いて!」
ヒナも必死に懇願するが、母さんは腰に佩いた太刀をゆっくりと抜いた。ダメだ。逃げないと――
「位相――ゼロ、ゼロ、ゼロ、座標指定。相対位相、ゼロ、イチ、ゼロ――発動」
一瞬よりも速く。何かを呟いた母さんが、目の前にいた。
「っ……! ぉらぁああっ!!」
最初に気付いたのは、俺だった。全力で剣を振り、母さんの太刀を防ぐ。
「いいわね、誰に習ったのかしら?」
「くっ……!」
だが、捌ききれない。精霊術で作った俺の軽い剣には、母さんの巨大な太刀は重すぎる。
「精霊よ――切り刻め、ブリザードエッジ!」
「焼き尽くせ、龍爪花っ!」
が、後方からの攻撃を防ごうとして隙が生まれる。空間の生まれた足元から逆袈裟懸けに――!
「ゼロ座標、帰還――発動」
消えた。
イレアの氷刃が、ソージア先生の炎が、ただ空を切る。
「なっ……!」
まるでコマ送りのように、母さんは数メートル向こうへと移動した。あれは……元の位置だ。そうか、母さんが使った術は。
「瞬間移動……!?」
「ええ、そうよ」
何事も無いように答えるが、それを聞いた他の三人も目を見張る。瞬間移動。精霊術でさえ「不可能」と言われているものだ。ただの超高速移動か幻覚と言われた方が納得できる。しかし、母さんが瞬間移動の術を使えるとすると……今までの神出鬼没にも説明がついてしまう。
「私達は『縮地』と呼んでいるけど。さあリオ、ヒナ、帰りましょう? すぐに極東にも戻れるわ。もう分かったでしょ?」
彼我の力の差を。母さんは言外にそう告げた。勝ち目が無い事を今の一合で理解してしまった。次の一手で、負ける――
だが、俺の覚悟すら定まらぬうちに母さんは太刀を下ろした。
「なんてね。今はいいわ。リオにはここでやるべき事があるもの」
「……? 母さん。母さんは、何を知ってるんだよ……!」
「全てを知ったら戻っておいで。その時に、またお話しましょう」
そう言うと母さんは太刀を鞘に納め、
「絶対位相、帰還――」
「待ってくれ! 母さん!」
「お母さん!!」
「――発動」
影も残さず、消えてしまった。
残された俺達には、困惑と敗北感……それと大きな不安だけがあった。
■□■□
「……そうですか。シオン殿はそのような事を」
その日、俺達は寮に帰らずウンディーノ家の本邸へと向かった。報告すべき事があったからだ。
「はい。母さんの目的は、やっぱり俺に大精霊と対話させる事みたいです。全部知ってるみたいに言ってて……」
「ええ、彼女は全て知っているのでしょう。公国とドラヴィドと、それらの背後に極東軍がいる。シオン殿はその中心で動いているに違いありません」
黒幕。母さんは何かの目的のために、色々なものを動かしている……。それが、自分の母親だというのだ。何か得体の知れない恐怖に鳥肌が立つ。
「しかし我々も翻弄されてばかりではありません。全てが向こうの思い通りにはいかせませんよ」
そう言ったリギスティアさんは、謁見の間の扉を徐に見やる。同時に、失礼しますと使用人の声がした。
「リオさんに客人が来ています。入りなさい」
客? そう疑問に思って振り返ると。
「やあ、坊っちゃん。お久しぶりです」
シルフィオ家の兵士二人に連れられた男性。ミゲル・キリシマが朗らかな笑みで挨拶をした。
「彼は極東軍所属の外交官、ミゲル・キリシマ。お知り合いでしたよね」
「は、はい。どうしてここに……!」
変わらぬ穏やかさに安心したのも束の間、最大限の警戒に気を引き締める。極東軍、それも母さんの部下だ。リギスティアさんも知っているはず。何故連れてきたのか?
「彼は協力者です。何度か尋問した後、情報の提供を約束して頂きました」
「あはは、面目ないです。ですが坊っちゃんとお嬢ちゃんの力添えができるなら、悪くは無いのですかね」
「……」
力無く笑うミゲルさんだが、まだ信用はできない。二重スパイという可能性もある。
「リオさん。心配しなくとも、我々が万全の監視をいたします。逃がしも騙されもしません」
彼女が言う通り、シルフィオ家の兵士が二人付いている。常に監視しているのだろう。
「大丈夫ですよ坊っちゃん。こうなった以上は小官も腹を括ります。でも、もしミヅカ隊長にバレたら庇ってくれると嬉しいのですが」
「……考えておきます」
世話になった相手だが、今はまだ警戒せざるを得ない。しかしそんな俺の様子を見たリギスティアさんが手助けをしてくれた。
「リオさん、彼は例の手紙の件から我々の味方をしてくれています。もう少し警戒を解いてもよいですよ」
「手紙って……あっ、母さんが言ってた!」
夏休みが始まる前、母さんと再会した時。極東から来る時に貰った手紙に、学長には大精霊の事を話すなと書いてあったのを母さんは不審に思っていたのだ。
「すいません、勝手に拝見させて頂きました。実はあの手紙はこちらで前の日に一度預かっていましてね。当日の出発前になって急に隊長が顔を見せに来ると知った時は死ぬかと思いましたよ。あの時に知られていたら、小官の首も無かったでしょうね」
「でも手紙を開けたら流石に分かるんじゃ……」
「いえいえ、小官の精霊術なら開けずとも中身を書き変えるくらいは可能です。もちろん苦労しなかったと言えば嘘になりますが」
「ええ、彼の精霊術は見せて頂きました。極東軍の精霊術研究所というものは興味深いですね。このような状況でなければ是非詳しいお話を聞きたいのですが」
リギスティアさんが補足し、ミゲルさんも頷く。特殊な精霊術を使えるのは母さんだけではないようだ。
「小官は坊っちゃんとお嬢ちゃんの味方です。隊長にそう頼まれましたからね。結果として隊長を裏切ることになってしまいますが、それもまた命令に従ったまでです」
彼の価値観は分からないが、とりあえずは俺達の味方であるらしい。
「彼には向こうの内情を報告して頂きます。無論、何かあればすぐに切り捨てる。それが条件で我々に協力することになっています」
「はい。小官もこの国とは縁が深いですからね。精一杯協力させていただきます。今極東に戻っても立場はありませんから。ええ、命は惜しいものです」
そう言ってもう一度微笑んだミゲルさん。信用していいものかまだ分からないが、今はその手をとることにした。
■□■□
翌日、日曜日の夜。寮に帰った俺を当然のように迎えたのはティフォ先輩だった。最近また何をしているのかと聞けば、俺達とは別でシルフィオ家の外交担当と共にドラヴィドの方の対応に奔走しているようだ。ところで、シルフィオ家にいてティターニアさんから持ち掛けられる戦いをどうやって回避しているかと言うと、セレナを味方に付けて距離を置いているらしい。とことん逃げるつもりなんだな。
「――てなことがあったんです」
「え~~~何それズルじゃん~~」
「ズルの塊みたいな先輩が言わないで下さいよ。で、どうです? 先輩ならどうしますか?」
そんな先輩に昨日母さんと会った事を話し、瞬間移動――『縮地』の事を話すと、これ見よがしに頬を膨らませた。自分も戦ってみたかったようだ。この人の場合はティターニアさんみたいな戦闘狂というより、単に興味で動いてるんだろうな。
「んー……話を聞く感じだと、空間に作用する風系統だな。リオ君と妹ちゃんの親だし、素質的にも間違いない。それも呪文を詠唱するタイプか。原理は分からんけど、座標? 位相? を固定してそれを基準に移動……いや、相転移か? 同じサイズの空間内の物質を入れ替えるんだ。移動先にも空気とかがあるから、そうしないと転移できないな、うん。それに極東からこの距離を来たってのも考えると、事前に指定した座標にも転移できる……いーや、流石にそのままは無理だ。何か補助の霊道具か、別の術があるな。うん、たぶんそうだ」
「せ、先輩?」
中空の一点を見つめて一息でぶつぶつと呟く。最後にポンと手を打って、何か納得したようだ。
「試してみないと分からんけど、対策はできるな」
「はやっ」
実際の術を見てもいないのに、一瞬で対策を思いついたらしい。腐っても天才、こういう時は頼りになる。
「前回も今回も国境の外の草原に来た事からして、恐らくその術を使っても国内にまでは侵入できないんだと思う。国境の壁には精霊術に対する防御が多少施されてるからね。つまりは妨害が効くってことだ」
「なるほど」
「ただ、ちょっと物体があるくらいじゃあ……そうね、ただの岩ぐらいだと防げないと思う。森の中なら多少はやりにくくなるかな? でも空間ごと転移するとしたら、無機物なら意味が無い」
「森の中ならって、木と岩だとなんか違うんですか?」
「精霊術に対する抵抗力。生き物とか邪霊は他の物質よりも精霊術の影響を受けにくいんだよ。だから生きてる木とかがあればその近くには移動しにくいはずだ」
それに移動先の木をくり抜いたら上から倒れてきちゃうからね、と付け加えた。なるほど、勉強になるな。
「もし無制限に空間ごと転移ができるなら、人の体をその境目に置いて真っ二つとかできるもんな。それは他の精霊術も同じで、他人の体とかを直接操るのは基本的にめちゃくちゃ難しいんだ。治癒の術は体の本来の流れに合わせた術だからちょっと例外だけど、それでも他人に使うより自分に使った方が効果は高い」
「せ、先輩が真面目だ……」
「珍しく真面目に話してるんだから茶々入れないの。っていや誰が珍しくやねん! ……ノリツッコミは置いといて。つまりだね、その『縮地』に対する防御策の一つはこうだ」
やっぱり真面目にはなりきれないようだ。そんな先輩を促して答えを求める。
「ど、どうすれば?」
「――自分の周りの空間に常に精霊術を展開する!」
………………無理。据わった目で俺は先輩を見つめた。
「うん、リオ君には無理だな。たとえそれができる人……そうね、巫女家の当主レベルとか? だとしても、いつ来るか分からない攻撃のために常に力を使ってたらガス欠で負けるだろうね」
「じゃあ無理じゃないですか……あっ、詠唱を始めた瞬間に精霊術を展開するってのは?」
「それも考えたけどさ、その時には既に向こうはこっちの周りに精霊術を展開してるんだよね。そうなると後出しのこっちが抵抗されちゃう。その感覚は分かるっしょ?」
「あー、マテリアル・オーダーで別系統を鬩ぎ合わせる時と同じですね。同時に始めないとバランス悪くなって、後から出した方が押し負けるやつか」
「そう。つまり先手必勝、後手必敗だ」
「……え、詰んだ? 防ぎようが無いじゃないですか」
「だから最初に言った森の中ってのが一番現実的かなって。リオ君のお母さんの武器からして狭い所は不利そうだし。何かあったら森に逃げる、以上!」
「そんなのしか無いんですか……はぁ……」
というか森の中だと不利なんて、母さんが一番分かってるはずだ。通用するとは思えない。それに他の精霊術だってあるはずだし……
「あ、もう一個あった」
「お、なになに?」
他の精霊術と考えて思い出したが、以前出会った巨大な邪霊と恐らく同じような、恐怖を感じさせる術だ。その時の状況や、俺には効きにくかった事も話した。
「ほうほう、心理干渉、精神攻撃ってやつか? あれは種と仕掛けがあるんだよリオ君」
「特殊な精霊術なんですか?」
「いや、空間転移に比べれば全く。邪霊でも使えるくらいだぜ? あれはね、言ってしまえばただの音みたいなやつなんだよ。耳鳴りみたいなもん」
「耳鳴り、ですか」
確かにあの邪霊の攻撃は、強烈な耳鳴りそのものだった。しかし母さんのものとは全く違うように感じたのだ。恐怖心を掻き立てる耳鳴りなんてできるのか?
「まあ厳密には音じゃないんだけど。不快に感じる音、というか精霊術の波? を放ってるんだろうね。これも結局は風の精霊術だ。ちょっとやってみるか」
「えっ? ちょっと待っ……あああ~あ~~~」
言うや否や両手をこちらに向けてきた。同時に、グワングワンと頭が揺れるような感覚。何も抵抗できずに俺は頭を抱えて……いや、違う。
「す、精霊よ――ミストパルス!」
精霊術を使うと、すぐに収まった。慌てて使った術で髪がしっとりしてしまったが、風呂に入る前でよかった。
「そうそう、そんな感じ。てかこんな感じなのか。意外とできるもんだな」
「初めてでこれかよ……」
これだから天才は困る。先輩は母さんと何か通じる所があるのかもしれない。そのうち瞬間移動も使いそうだな。
「それと、なんでリオ君に効きにくいのかも分かったよ」
「え、マジですか?」
「うん。これもさっき言った精霊術に対する抵抗とか影響力の話なんだけどさ。これには個人差があるんだよ」
「なるほど、その抵抗力が俺は高いから?」
「いや、逆。めっちゃ低い。リオ君紙防御。クソ雑魚」
「そ、そんなぁ……」
メッタメタに言われると悲しくなる。俺、防御力低いのか……
「んー、でも防御力って言うと違うな。精霊術に対する影響の及ぼしやすさ、及ぼされやすさ? って感じかな」
「影響を与えやすいかどうかって事ですか?」
「そう。さっきの精霊術はさ、相手の精霊に共鳴させて頭痛とか恐怖心とか耳鳴りを起こすんだよ。相手の中の力を利用して攻撃する感じ? だからホムラちゃんはめっちゃ効いてたんだろうね。反対にリオ君は精霊の力が弱いから、あんまり影響が出なかったんだな。普通の精霊術が全然使えない理由とたぶん一緒だ」
「は、初めて普通の精霊術が使えないの、役に立った……」
「ははは、確かにそうだな。でも逆に言えば、それ以外の精霊術に対しては抵抗力が弱いから気を付けな? 人体に直接作用する術なんて滅多に無いけど、基本的にはデメリットだから。他に言うと……そうそう、治癒の精霊術の効果は受けやすいと思うよ。体感だと分かんないと思うけど」
「へえ、一長一短なんですね」
「いーや、一長二、三短くらい。活かすことはできなくもないけど、不利なのは変わらないよ。リオ君に治癒術の適性があれば良かったけどね」
残念だ。自分の隠された能力! とか期待したのになあ。
そんな事を考えながらその日はベッドに就いたのだった。しかし、翌日には忘れてしまうくらい……再び新たな波乱が起こり始めるのだった。




