第37話 例え遠き決意でも
俺は走った。全力で。ボロボロの体を気遣う事なく、一心不乱に走った。
寮を出てすぐ、最寄りの馬車乗り場に向かった。巫女家でもなければ霊動車は持っていないから仕方ない。息切れしながら掠れた声で急いでいる事を伝えると、店主らしき青年は一番速い馬を出して馬車を付けずに後ろに乗せてくれたのだ。本来は一時間近くかかるところを三十分で来れたのだから、相当急いだのだろう。
議事堂に着いた俺は倒れる寸前だった。馬なんて極東から公国に来て以来乗ってなかったな。今だけは昨日の夜から食事をとらなかった事を良かったと思ってる。吐きそうだ。
空っぽの胃を抑えながら中に入った俺は、当然のように止められた。緊急の要件だと説明しても守衛は取り付く島もない。だが、騒ぎを聞きつけた使用人が一人様子を見に来た。彼女はウンディーノ家の使用人であり、俺がリギスティアさんの身内だと証明してくれた。名前も知らない彼女に感謝しよう。
そして、今に至る。やや狭いが質の良い調度品で彩られた部屋は、ここが身分の高い者が使う事を示している。もちろん目の前にいる彼女ら――水、風、土の当主達は、その最もたる者だろう。
「はあっ、はあっ、……学長、……この、手紙をっ」
ダメだ、息が乱れて上手く言葉も出ない。
「なんだ、ミヅカの坊主か。どうしてこんな所にいる」
極めて不機嫌そうに学長は言った。今にも部屋を出ようとしているところだ。
だが、間に合った。
「はあ、はあ、ふう……ふぅ、手紙、です。学長に、渡すようにと……言われ、ました」
「フン、誰にだ」
「ティフォ先輩……ティフォ・ベントです」
「……チッ。貸せ」
差し出した俺の手からパシッと奪うように封筒を取り、中身を確認した。
「…………」
暫しの沈黙。リギスティアさんとティターニアさんは心配そうな、そして怪訝な顔付きでこちらを伺っている。二人への説明は後だ。
「……いつ、届いた」
「さっきです。三十分くらい前に、寮の俺の部屋に。急いで来ました」
そう言うと、学長は大きく溜息を一つ。
「この内容は信用する。奴の諜報能力は私が一番分かってるからな。だが、軍隊の方はどうなんだ」
そう、これは俺が話す事になると思っていた。昨日の今日だ、ソージア先生はまだ学長にもリギスティアさんにも報告していないのだろう。
「それは、俺から説明します。昨日の討伐演習で俺達第一班は公国の北東に行きました。そこで、人型邪霊の大群を発見しました。一部と交戦し、ソージア先生がサンプルを持ち帰っています。報告が遅れてすみませんでした」
一気にそう言うと、三人は顔を見合わせた。誰も聞いていないのか、誰も知らないのかと。うん。俺が来て話して正解だった。
「確証は持てませんが、ノーミオ家で発見したという軍隊は、その邪霊である可能性が高いです。場所も一致します。ですので、開戦の判断はまだ待って頂きたいです」
再びの沈黙。失敗したか? 焦って喋り過ぎたかもしれない。学長は俺が渡した小さい封筒の中身を見ている。何かの資料のようだが、ティフォ先輩に中を見るなと言われているので内容は分からない。
「…………はああぁぁ……」
そしてもう一度、先程より大きな溜息。学長は資料を閉じ、困惑する当主二人に向き直った。
「……今回は、譲歩しよう。開戦の宣言は撤回する」
「――っ」
開戦の宣言撤回。そう、間一髪だったのだ。
ティフォ先輩の手紙が少しでも遅かったら。俺が来るのが少しでも遅れてたら。馬車乗り場の店主が駿馬に乗せてくれなかったら。
戦争は始まっていたのだ。
「だが、今回だけだ。ドラヴィドとはいずれ戦争になる。必ずだ。分かっているな」
「……はい。次に向こうの確実な動きがあった時には。今回は性急が過ぎましたよ、ヴィオ。国防の事はこちらも分かっています」
「ええ、そうですね。前回の禍根はまだ残っていますから」
え、あれ? 戦争はしないって話じゃなかったのか? なんでリギスティアさんもティターニアさんも反対してないんだ。
「坊主、そういう事だ。今回の件は他言無用だ。いいか?」
「は、はい、分かりました」
俺の返事も待たずに学長は部屋を出て行った。呆然とする俺に話しかけたのはリギスティアさんだ。
「リオさん、ありがとうございました。助かりました。今の状況で戦争が始まってしまったらと思うと――」
「リギスティアさん」
彼女を遮って尋ねる。
「戦争は……いずれ、起こってしまうのですか?」
声が震えていた。そんな俺の言葉を聞いて、リギスティアさんは少し俯き、
「……はい、いずれは。ですが、リオさん達には――」
「いえ、分かりました。今日は急に来てすいませんでした」
「……学園まで、送ります」
それからは、俺達は何も話をしなかった。話をする気力も無かった。
霊動車に乗って学園に帰る間、俺は二日前の事を思い出していた。
■□■□
「それでさ、お兄ぃはどうしたいの?」
ヒナに励まされた日の二日後、討伐演習の前日。ヒナはまた俺の部屋に来ていた。ティフォ先輩がいなくなってからしょっちゅう入り浸っている気がするが、ルームメイトは放っておいていいのだろうか。
「どうするって……俺がしたい事か?」
「うん。お兄ぃが納得できる答え。満足できる最低限のやりたい事。ちゃんと考えた?」
「……ああ。決めたよ」
あの日の後。俺は一人で考えたのだ。使命だとか責任感とか抜きに、俺自身がやりたい事を。
「俺は――戦争を止める」
大言壮語。分不相応。自分でもそう思う。ヒナも同じだろう。
「できるの?」
「……分からない」
いや、できるなんて思ってない。自分にそんな力があるとは思ってもいないし、自惚れてはいない。でも。
「でも、もし戦争になったら……俺は絶対に後悔する。それだけは嫌だ」
どうして何もしなかったのか、見過ごしたのか。何かできたんじゃないかと。
「だいたいさ、おかしいだろ。国の外には邪霊が蔓延ってて、国交もままならないのに、戦争なんてさ。なんで人間同士で争う必要があるんだよ?」
「……うん、お兄ぃの言ってる事は間違ってないと思う。でも国同士のいざこざもあるし――」
「いや、分かってる。単純な話じゃないってのは分かるよ。それでも、戦争をしないでいい方法もあるんじゃないか?」
ヒナの言葉を遮って言う。これは俺の無知な考えかもしれない。それでも、多くの人は戦争を進んでしたいなんて思っていないはずだ。
「極東はずっと平和だったからね。わたしだって戦争は嫌だよ」
「ああ。それに、ソージア先生みたいな人もいる。ドラヴィド国でも同じくらいの被害が出たらしい。誰も得しないじゃないか」
いつか聞いた、戦争で孤児になったという話。本人から直接は聞いていないが、戦争が無ければ彼女も親兄弟、身内を失わずに済んだはずだ。俺には想像もつかないくらい辛い思いをしたはずだ。
「うん。それで、お兄ぃは何をするの?」
「……分からない、けど、考えはある」
具体的に何をすればいいのかなんて分からない。だが協力者はいる。
「ティフォ先輩は、戦争を止めたがってると思う。しばらくはあの人と協力するつもり。まあ次にいつ会えるかは分からないけどさ」
「ふーん、ティフォ先輩ねー」
先輩がこの前俺の部屋に来た事は話してある。彼の目的はイマイチ明瞭ではないが、俺達の味方と言ってもいいだろう。ヒナはまだ信用しきってないようだが、コンタクトを取るのは俺なので問題ない。
「ま、深刻に考えすぎないでね。それと、またなんかあったら絶っ対に相談してよね」
「あはは、その時は頼むよ」
一昨日の事を言われているのだろう。そうヒナに念押しされ、俺は決意を新たにしたのだった。
■□■□
……そんな、決意をしたのに。
「無理、なのかな」
運転手以外に誰もいない車内で俺の呟きは、タイヤが転がる音にかき消された。無理かもしれない。今日のやり取りで、そう感じたのだ。
俺一人では、戦争を止めるなんて――
「――ううん、切り替えよう」
言ったじゃないか、深刻に考え過ぎるなって。またヒナに怒られちゃうな。もっと建設的に考えよう。
「そうだな……そもそも、今回はどうして開戦しかけたんだ?」
開戦宣言をしかけた理由。それはドラヴィド国の軍がいたっていう話だ。でも実際それは邪霊の大軍であり、ティフォ先輩が言うには、ドラヴィドには戦争をするつもりは無いらしい。
「向こうに動きがあったら、か」
戦争が始まる条件。ドラヴィド国の軍が接近し、それについて連絡が無かった。それが今回だ。つまり、公国に怪しまれる行動を取らない、もしくは迅速な連絡がとれるようにすれば良いのだ。
「ドラヴィド国と手を組む……か?」
いや、無理だ。ツテが無い。頼みのティフォ先輩も亡命している身だ。やはり俺ができる事と言えば、巫女家に働きかける事だろう。
「学長もリギスティアさんも、戦争が起こると確信していた……何か理由があるはずだな」
条件に当てはめて考えれば、今後ドラヴィド国が確実に何か行動を起こすのだろう。それを聞けば分かることがあるはずだ。
「……うん、まとまってきた」
俺がやるべき事は三つ。
一、俺が考えた戦争が起こる条件が合っているかリギスティアさんに確認する。
二、彼女らが確信するドラヴィド国が起こすであろう行動、何が戦争の引き金になるのかを聞く。
三、その上で、それらを回避する方法を考える。
「よし、これで行こう」
今は何もできない。だが、知った上で考えておけば、今回のような事態にはならないはずだ。もちろん、俺ごときには結局何もできないのかもしれない。それでも、俺は戦争を止めたい。
差し当たっては、ヒナに相談だな。
寮に戻ると、何故かヒナが玄関の前で待っていた。
「お兄ぃ! どこ行ってたの?」
どうやら、俺が凄い形相で走って馬に乗ってどこかに行ったという目撃情報がヒナの耳に入ったらしい。
「ちょうど良かった。話があるんだ」
「ねえ、大丈夫なの? 何があったの?」
「分かった分かった、落ち着いてくれ。まずはな――」
ティフォ先輩から緊急の手紙が来た事、そして当主会議に乗り込んだ事を話した。訝しむヒナだが、戦争が回避されたと聞くとあからさまにほっとした。
「そっかあ……前にも言ってたけど、ティフォ先輩は味方なんだね」
「どちらかと言えば、俺が先輩の味方って感じかな? 俺は個人的に戦争を止めたいって思ってるだけだけど、先輩には何か目的があるのかもしれないし。あったとしても悪い事じゃないとは思うけどな」
「うーん、それが分からないと何とも言えないね。もしかしたらって考えたらキリが無いよ」
「次会ったら聞いてみるよ。それで、俺はリギスティアさんに色々聞きたいと思う」
「それ、わたしも一緒に行っていい?」
「そうだな。そしたら次に空いてる日は……」
「でさ、イレアお姉ちゃんにもこういう話してあげなよ?」
「……そうだな」
なんとなく、この手の話はイレアの前では避けてたし関わらせないようにしていた。でも、以前までの立場とは違うんだから話さないと駄目だな。
「じゃあ、三人で行こう。ソージア先生も行くなら四人か。後で聞いてみるよ」
「うん。先生の方はわたしに任せて。お兄ぃはイレアお姉ちゃんの方をお願い。次の週末くらいでいいかな?」
「次の週末か……ってもう夏休みだな」
気付けばもう七月。次の金曜日で授業は終わりだ。こんな状況だから考えもしていなかったけど、夏休みは何しようかな。
「二か月もあるからねー。どっか遊びに行く?」
「追い追い考えよう。ふわぁ……俺は疲れたから休むよ」
気が抜けたら疲れが一気に戻ってきたな。腹が減ってるのも思い出してちょっと辛い。自室に戻った俺は今更食堂まで行く気も起きず、部屋にあったパンを少し齧ってからまたベッドに潜った。
目が覚めた時には深夜だった。明日は授業なのになあ……
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それからはあっという間だった。ソージア先生に相談したらすぐに時間を作ってくれて、日時は終業日の午後となった。参加者はリギスティアさん、俺、ヒナ、イレア、ソージア先生、セレナ、オクタールさんだ。ティターニアさんは予定が合わないらしい。
そして当日。極東の学校では恒例の終業式みたいな集会は特に無く、クラスメイト達は各々別れを告げて解散となった。寮生も帰省する人が多いようだ。……俺達もそのうち極東に帰ろうかな。
「ごめん、待った?」
「んーん、今来たとこだよ」
付き合いたてのカップルみたいなやり取りをしているのは、ヒナと少し遅れてやって来たイレアだ。他の面々は先に会場であるシルフィオ家本邸に向かい、三人で後から向かう事になっている。混雑を避けるためか中等部は先に授業が終わっていたのだが、ヒナはセレナと一緒には行かなかった。放送委員会の人に挨拶をしてきたらしい。
「じゃあ行こっか」
「お迎えの人、待たせちゃったかな?」
「いいっていいって。イレアお姉ちゃんはさ、もっと堂々とした方がいいんじゃない?」
「堂々と? 難しいわね……」
イレアはまだ実家に対して距離を感じているというか、引け目があるようだ。上手くやっていって欲しいものだな。
そんなこんなで俺達は再びシルフィオ家に集合した。ティターニアさんがいない事を除けば前と同じ場所、同じ状況だ。
「それでは、これよりシルフィオ家・ウンディーノ家合同会議を始めます。司会はシルフィオ家当主代理、オクタール・シルフィオが務めます」
前回と同じ口上で会議が始まった。だが、今回の主役は俺だ。ただ聞くだけではない。できるだけ戦争を回避する方向に誘導するのだ。……できるだろうか。いや、やろう。
「今回の議題は、リオ君から話して頂きましょう。お願いします」
「はい。えーと、俺が今までに得た情報をもとに考えた事、そして、今後の方針等を、えー……確認、したいと思います」
やっべえ、緊張してきた。全員知り合いとはいえ人見知りにはハードルが高いんだよ。
「えっと、まずは……」
「お兄ぃ、リラックスリラックス」
「ちょ、ヒナ」
どもっていると、横に座るヒナが足をツンツンとつついてきた。正面に座るセレナも苦笑している。変な空気に慌てているとオクタールさんが口を開いた。
「大丈夫だ、リオ君。君の発言を咎めたりはいないよ。一つづつ聞かせてくれたまえ。それとヒナ君は発言者の邪魔はしないように」
「は、はい」
「はーい、すみません」
ヒナの言動を形だけ諌めるが、やや冗談めかした口調。二人して俺を落ち着かせてくれたようだ。うん、もう問題無い。
「えー、では改めまして。まず俺が知る情報を順を追って説明します」
ノーミオ家が公国の北東で軍隊を発見してドラヴィド国に問い合わせるが返答が無く、開戦宣言の目前だった事。しかしその軍隊は邪霊の大群であり、宣言は寸前で撤回された事。ここまでは共有済みであり、皆頷いていた。本題はここからだ。
「自分はここ最近で、ティフォ・ベントと二回接触しています。一度目は学園の寮で直接。二度目は手紙が届けられました」
困惑が走る。ヒナと、先に伝えておいたリギスティアさん以外は知らないから無理もない。
「一度目の時に伝えらえた内容は、ノーミオ家内の戦争急進派を学長……当主ヴィオテラ・ノーミオが御しきれていない事、私設軍を拡大している事、そしてドラヴィド国の方は戦争を望んでいないという事です。この後の事情により、この話は正しいものと仮定します」
この辺りはある程度は把握しているのだろう。
「二度目の手紙では当主会議が決裂しそうだと知らされ、同封された資料を持って行きました。その資料を学長は信頼すると言い、開戦を撤回しました。内容は恐らく一度目に自分が聞いた話の詳細。ドラヴィド国の内情と、諜報の信頼性を裏付けるための情報でしょう。学長はドラヴィド国に戦争の気が無い事を知った上でこちらから仕掛けるつもりだったと思われます」
ノーミオ家にとっては結論ありきの開戦宣言だったのだろう。反対意見に明確な材料が無ければ押し切るつもりだったに違いない。それをティフォ先輩が阻止したという訳だ。
「そして一旦は阻止されたはずですが、当主会議の場ではドラヴィド国との戦争が今後確実にあるという共通認識がありました。以上の事を踏まえるに、今後ドラヴィド国が戦争に繋がる動きをすると確信している。そういう事ですね?」
最後の言葉はリギスティアさんに向けたものだ。彼女が何か言う前に俺の意見を言い切る。
「俺は、ドラヴィド国との戦争をしたくありません」
少し間を取り、皆の様子を伺う。悪い印象は与えていない。
「邪霊によってずっと自由な国交ができない状況です。国から国への移動も一か月近くかかります。そんな中で戦争をしても、お互いにとって不利益です」
外交を担っているシルフィオ家や長く巫女を務めるリギスティアさんの前で、ぽっと出の俺が言っても説得力は無いだろう。
「俺なんかが言える立場ではないのは承知です。それでも、戦争にならないようにすることは、皆さんならできるのではないでしょうか」
あれこれ考えてはいたのだが、こんなの説得でもなんでも無いな。ただの懇願、幼稚な願望だ。
「お願いします。自分でもなんでここまで戦争を忌避しているのかは分かりません。でも、国家の体裁とか面子のために人が傷つくのは嫌なんです。十七年前の戦争で家族を亡くした人のためにも、開戦すれば参加させられるかもしれない学園の生徒達のためにも、どうか戦争をしないで下さい」
シンとした空気。同時に、やっちまったなと思った。でも後悔は無い。これでも止められないなら、それまでという事だ。
「……情に訴えられて政をするべきではありません」
答えるようにリギスティアさんがぽつりと言った。否定するような言葉に少し悲しくなる。だが、次の彼女の言葉に俺は顔を上げた。
「――ですが、リオさんのような声があるのも事実。しかと受け止めました」
「リギスティア様、どうなさるおつもりですか?」
オクタールさんは少し困惑しているようだ。戦争もやむなしというのが巫女家の総意ではあったはずだからな。
「オクタール殿。元々私は戦争をせずに済むならそれが一番だと考えています。今までは諦めていましたが……リオさんがここまで訴え、ティフォ・ベントという駒がいるなら、希望はあります」
リギスティアさんの表情がふっと柔らかくなる。国のトップであると同時に、一人の祖母としての彼女の顔だ。
「ウンディーノ家はこれより、ドラヴィド国との和平ないし休戦の継続を目標とします」
届いた。一歩、前進したんだ。
「シルフィオ家には引き続き協力を求めます。今後の詳しい方針に関してはこちらで纏めてからまた共有いたしましょう。よろしいですか?」
「一旦持ち帰らせて頂きます。母の考えは分かりませんが、僕個人としては……不戦が叶うに越した事はありません」
オクタールさんも反対ではないらしい。俺の主張も間違いではなかったのだ。
「リオさん」
再び俺の方を向き、リギスティアさんは言った。
「エレメント公国の未来は、貴方達の意思によって決めるべきです。戦争を望まないのであれば、最大限の協力をしましょう」
良かった。もちろん、俺の言葉だけで届いた訳ではない。ティフォ先輩の力が無ければ無理だったのだろう。情報は力なり、だ。
「はい。よろしくお願いします!」
ともかく、俺の願いは伝わった。戦争を望む者と反対する者に別れるが、ウンディーノ家とシルフィオ家、二つの巫女家が協力してくれる。心強い。
そして同時に。今度は、人との戦いになる。




