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1日目 【街を歩いてみた!】いきなり事件発生!? 謎の美幼女がとんでもなかった!!

「みんな! ここが正真正銘の異世界だ! 街行く人を見てみろ! アニメみたいな見た目だろ!」


 「ちょっと……」


 「俺たち、ワンとルリは今、異世界に来ておりまーす!」


 「ほんとに恥ずかしいからやめて、お兄ちゃん」


 妹が割と強めのアッパーを鳩尾に入れてきた。変にツボに入ったせいか息が詰まる。


 「な、なんだよルリ。とりあえず動画は撮っておこうって話になったじゃないか」


 


 あれから……


 スマホの充電が切れていないことを確認すると、すぐさま家に電話をかけた。しかし、当然というべきか電波は入っておらず外界、すなわち現実世界には一切干渉でずにいた。


 元の世界に帰るにしてもとりあえず情報を集めなければならない。その一環としてカメラに異世界を収める。理にかなった行為だ。生配信できなかったのは痛恨の極みだったが、動画を撮っておけさえすれば戻れた時に異世界にいた証となる。これがバズらない訳がない。


 小休憩をとった後、俺たちは街へ戻ってきていた。街並みは和風だが、とは言え建物や施設はどこかユートピア的な美しさを保っていた。そしてそれらを飾るかのように耳障りの良い琴の音色が露店の一角から流れている。それでいながら雑多する衆人は明らかにエキゾチックで、まさにここは別世界だった。




 「今から、お店を覗いてみたいと思います! おいルリ、あの三味線みたいなの持ったおばちゃんに話しかけてこい」


 「はぁ!? ちょっとお兄ちゃんが行ってきてよ! 大体日本語が通じるかどうかもわからないじゃない」


 「大丈夫、大丈夫。そこはご都合主義なんだから。さては異世界バージンだな?」


 「……最低」


 言い争っていると、周囲の賑やかさがトーンダウンしているのに気づく。当たりを見渡すと2人が取り残されるように道の真ん中に立っていた。


 「ほら、お兄ちゃんが変なことしてるから注目浴びちゃったじゃん! 早く行こ!」


 「まあ、待てルリ。オマエ本当にYeahTuberか? どれだけ貴重な現場に来ているのかイマイチわかってないようだな」


 「だから一旦帰りの目処をつけてから……」


 「あのー……?」


 「「え?」」


 声の方へ一様に振り返る。そこには艶やかな黒髪にポピーの花飾りをつけた可愛らしい少女が立っていた。低学年くらいだろうか。


 こういう時は大抵迷子か、トイレだ。ルリが小さい頃よく世話をした覚えがある。


 「お、どうした。もしかして迷子か?」


 「そ、そうじゃなくて……」


 ルリが背を合わせるかのようにしゃがんだ。


 「じゃあ、おトイレかな?」


 「あの、ここ、早く退いた方がいいです。ピカルン様がもうすぐ来るから……」


 「ピカルン?」


そう言うと少女は通りの向こうを指差した。何やら騒がしい気がしなくもない。


 「とにかく端に寄ってください! ピカルン様に目をつけられたら大変です!」


 言われた通りにした方がよさそうだ。ルリにも促し素直に少女に従う。


 「お兄ちゃん、たぶん偉い人が通るんだよ。教科書で見たことある気がする。たしか……」


 「大名行列? まさか」


 鼻で笑っていると遠くに人力車のようなシルエットが見えた。車夫(しゃふ)とは別に、ギラついた目つきの男達が車を囲んでいる。


 「なんじゃありゃ……」


 「お兄ちゃん! スマホ、スマホ!」


 しまった、俺としたことが!


 急いでカメラを起動させる。慌てて別のアプリを起動してしまった。


 「ち、ちょっと待って! いま撮るから……」


 「ム! ムムム!! ちょっとおろちて」


 甲高い声が響く。同時に小柄な女の子が人力車から降りてきた。


 強烈な見た目だった。年齢はポピーの少女よりさらに若い、5、6歳だろうか? 問題はその髪型だった。ツインテールなのは年相応で可愛げがあるが、左は真っ金金、右は真っ赤赤。くるくるに巻かれた髪先はもはや竜巻のようになっている。


 まさか地毛じゃないだろうな?親御さんはどんな教育をしているのか。


 ピカルンらしき幼女は露店の一つに興味を持ったらしい。駄菓子屋だろう。


 「おい、うんめぇーぼうひとち」


 「は、はい。うんめぇー棒ですね。10Pになります」


 「これ、アタリでるんだろうな」


 「え?」


 店主が目をぱちくりさせている。当たりが出るともう一つ貰えるのだろうか。


 「おい、てめー、まさかぜんぶハズレぢゃねーだろーな」


 「そんな、もちろん当たりも入っております。というより、ピカルン様ならタダで構いません!」


 「そうゆーモンダイぢゃねーってことはわかるか」


 「お嬢様、うんめぇー棒を全て買い占めれば真偽がつくかと」


 「うん、そうだ。これぜんぶもらうぞ。もしアタリがなかったらあとでぶっとばしにくるからな」


 ピカルンは満足したのか人力車に戻った。お供が大量の駄菓子を抱えながら道を開ける。見た目の厳つさとのギャップが面白い。


 ピカルン一行が通り過ぎると辺りがにわかにざわつき始めた。繁華街が元の調子を取り戻していく。


 「何だったんだ今のは……」


 「やっぱり知らなかったんですね。2番街では有名な方ですよ。ギルド『インサイダー』リーダー、ピカル・ネクテージ様です」


 「えっと、ギルドって何かな?」


 そうルリが聞き返すと、少女は不思議そうに顔を傾けた。


 どうやら事情聴取が始まりそうだ。


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