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異常調査部〜廃校幽霊殺人事件編〜【1】  作者: 月ノ羽 ルナ


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22/23

大歓迎ー1

終章

翌日


朝のニュースは、田文たふみ誠吾せいごの無実の話で持ち切りだった


どのテレビ局も、キャスター達が冤罪を作った警察の不当な取り調べについて熱く語ったり、元警察官が事件の状況を解説している


廃校舎内での殺害は馬場ばばのせいになっており、アリババの存在は公にされなかった。裏で糸を引く存在を認めない方が都合がいいからだろう


警察は、これ以上汚名を重ねる訳にはいかない。そのせいか、過去に起きた馬場ばばの代わりに逮捕されてしまった青年については、何も語られてはいなかった


その情報はきっと、うやむやにする気だろう


だが、ある週刊誌にはその事が記事にされていた。流石にアリババの事までは記されてはいないが、不当逮捕だとかなり言及されている


お昼頃には、その記事はテレビに取り上げられる事になるだろう。そうなれば、警察は緊急記者会見を開らかざる終えない


不当逮捕は事実な訳で、何人もの記者相手に上手い言い訳は出来るはずもない。全てを馬場ばばのせいにするには無理があるし、取り調べをした何人かを処罰して終わりにするだろう


結局は、全てをうやむやにして終わらせる。そんな事は目に見えているが、それで良かった


警察が適当に誤魔化してしまえば、誰もが後ろめたいから誤魔化したと思ってくれる


そうなれば、少なくとも世間では、田文たふみ馬場ばばの身代わりに逮捕され、命を落とした青年は被害者だと認められる


悪意のない殺意を持つ人間達の目を警察へと向ける事で、被害者やその遺族達が世間に叩かれる危険性は数段に減るだろう


一つ問題があるとすれば、照井てるいユミは別件として処理された事と、住宅街の実験に関しても馬場ばばの証言と今のままの全員分の診断書だけでは、証拠不十分とみなされてしまった事


アリババの存在を認めていないのだから、警察としては当然の対応だ。だからこそ、認めさせなければならない


そんな事を思いながら黎ヰ(くろい)は、目の前の人物の鼻と口を同時に塞いだ


自分のディスクで寝ていためぐるは、次第に強くなる息苦しさに目を開けた


蔡茌さいし めぐる

「ゴホッ、ゴホッ…」


あまりの苦しさに咳き込み、状況を把握しようと必死に脳を働かせようとする


そんなめぐるの前にペットボトルが置かれた


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「おはようございます。蔡茌さん、良ければどうぞ」


蔡茌さいし めぐる

「え?…曳汐…あぁ、おはよう…」


何がなんだが分からないまま、取り敢えず咳を落ち着かせようと、差し出されたペットボトルに口をつけ…


蔡茌さいし めぐる

「あっっまっ?!」


てっきり、お茶か水を想像していためぐるは想像以上の甘さに声をあげ、完全に目覚める


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「はい、ココアなので。…人数分買ってしまったもので」


蔡茌さいし めぐる

「?そ、そうか…」


なんの話か分からないなと思いながらも、めぐるはそれよりも口の中に気を取られていた


本来はホットで売っていたものが、時間のせいで冷え切り、しかも沈澱している…つまり、飲んだココアは美味しい状態じゃなかった。無駄に冷たく甘ったるいものが口の中に留まっていた


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃん、あーん」


蔡茌さいし めぐる

「へ?」


突然呼ばれ、口を開けた瞬間…何かを入れられる


蔡茌さいし めぐる

「っ?!…な、…にを…」


吐き出す訳にもいかず、仕方なく噛み続け…正体はイカだと分かる。しっかりと味付けされているイカは、ココアを飲んだ後では余計に口の中を混乱させる。めぐるは食べ合わせの大切さを密かに学んだ


黎ヰ(くろい)に文句を言おうとした矢先…


あくた 昱津いくつ

「お、は…よう…」


蔡茌さいし めぐる

「芥?!…あぁ、おはよう…」


奥の部屋から滅多に出てこないあくたに声を掛けられ、驚いてしまう


蔡茌さいし めぐる

「集まって何してるんだ…いや、本当に」


その疑問は当然で、よく見てみるとめぐるの机を中心に色々と食べ物が置かれており、軽いパーティー状態だ


黎ヰ(くろい)

「事件解決のお疲れ様会とプチ歓迎会」


蔡茌さいし めぐる

「お疲れ様会…あぁ、そう言う事か…それにしたってプチ歓迎会って…」


"なんだ?"と言う前に、またもや黎ヰ(くろい)に口の中にイカを入れられ言葉を途切れさせる


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃんのに決まってんだろぉ?本当なら外で盛大にしたいが、今は控えといた方がいいからなぁ」


世間の警察を見る目が人一倍厳しくなっている中、どんな事であれ目立つ行動は避けた方がいい


余計な野次のせいで歓迎会を台無しにされたくはない


だから、取り敢えず黎ヰ(くろい)は異常調査部内でプチ歓迎会を開く事にした


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「皆さんお疲れ様でした」


あくた 昱津いくつ

「おつかれさまー」


曳汐ひきしおあくたは、それぞれ紙コップを持ち肩の位置まで上げた


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃんの分」


そう言って黎ヰ(くろい)は、ハサミ越しに紙コップをめぐるに渡す


蔡茌さいし めぐる

「あぁ、ありがとう」


そっと受け取り、そのまま持ち上げる


黎ヰ(くろい)

「そんじゃ、ひとまず今回の事件の区切りと紾ちゃんの歓迎って事で…乾杯」


その言葉を合図に、全員は紙コップを合わせた


蔡茌さいし めぐる

(なんだか、こう言うのもいいな…)


めぐるは、少し浮き足立つ気持ちを寝起きのせいにし、紙コップに口をつけた


黎ヰ(くろい)

「あ、紾ちゃん間違った」


その声とめぐるが飲んだのは、ほぼ同時で…

 

蔡茌さいし めぐる

「にっっがっ?!、なんだこれ…ゔぅ」


中を見てみても、お茶と変わらない色で余計に混乱してしまう


あくた 昱津いくつ

「苦瓜、あじ…の、お茶…でしょ、黎ヰ君なら、絶対買う…って思った…」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「変わりダネ好きですもんね、黎ヰさん」


黎ヰ(くろい)

「どんな味か気になんだろぉ。で、紾ちゃんどうだった?」


蔡茌さいし めぐる

「普通に苦い…」


黎ヰ(くろい)

「クックックック、だろうねぇ〜」


ニヤニヤした笑みを向けている黎ヰ(くろい)めぐるは、数秒机の上に目をやり丁度良い物を見つけると、お箸でそれを掴んだ


蔡茌さいし めぐる

「お・返・し・だっ!!」


クルリと黎ヰ(くろい)の方へ向き直り、勢いよく口にお箸ごと突っ込む。その相手は抵抗もせず、むしろ自ら口を開けた


あくた 昱津いくつ

「あむっ…梅、干しだぁ…酸っぱい」


蔡茌さいし めぐる

「芥?!すまない、黎ヰに入れようとしたんだが…」


予想外の人物に驚くも、あくたは頬を綻ばせモグモグと梅干しを食べていた


黎ヰ(くろい)

「爪が甘いねぇ、紾ちゃんがやりそうな事ぐらい想像つくって」


蔡茌さいし めぐる

「だからって、芥を身代わりにする事ないだろ」


これは半ば、避けた事への八つ当たりだったが、思わぬところから否定されてしまう


あくた 昱津いくつ

「えへへ…貢がられるの…好き、だから…あーん」


何かに味を占めたようにあくたは、口を開ける


蔡茌さいし めぐる

「貢がられるって、俺が言うのもなんだが、今のはそう言うレベルじゃないんじゃないか?」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「芥さん、どうぞ」


曳汐ひきしおは口を開け続けるあくたに、適当にあった食べ物を入れてあげた


あくた 昱津いくつ

「はむっ…あり、がとう…」


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「こっちもありますよ」


そう言って、次にあくたの口の中へ入れるものを準備しだす曳汐ひきしおに、黎ヰ(くろい)は眉を寄せめぐるの肩を小突いた


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃん、アレはまずい。今すぐ止めないと芥が吐くまで続くぜ」


以前にも同じ事があり、思い出した黎ヰ(くろい)の顔は曇っていた


何があったかまでは怖くて追及するのは止めたが、めぐるは直ぐにストップの声を掛けた


そうやって騒ぐ中でめぐるは、異常だと周りに言われていた人物達の素顔を少しずつ知っていくのだった


暫くしてめぐるは、ふと時計を見ると針は7時を指していた


蔡茌さいし めぐる

「朝だったのか…そろそろ片付けて、仕事の準備を始めた方がいいんじゃないか?」


真面目な性格なので昨日の疲れよりも先に、彼の頭の中では今日の仕事の事でいっぱいだった


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃんの脳内の職場ブラック過ぎじゃね?言っとくけど今日から2日間公休だからなぁ」


蔡茌さいし めぐる

「へ?休み」


予想だにしなかった言葉に、素っ頓狂な声を上げる


曳汐ひきしお 煇羽やくは

「今回の様に殺人事件や大きな事件を調査した場合、次の日は必ず休暇になるんです」


黎ヰ(くろい)

「事件調査は神経使うし、昨日みたく対人間と戦闘になる場合もあるからなぁ、心身共に休息させる時間を作るのは当然の処置だろぉ?」


黎ヰ(くろい)の言っている事はもっともなのだが、本来なら土日祝日が公休となっていて、何かあれば休日出勤…と言うのがめぐるの知っている知識だった


もちろん、明日は平日で普通なら全員休みはおかしい


そんなめぐるの思考を読んだ黎ヰ(くろい)は、言葉を続けた。


黎ヰ(くろい)

異常調査部(うち)じゃそれが当たり前だぜ?上の許可も取ってあるし、給料面でもマイナスにならない様管理してる。休みを入れ替えたりする場合もあるが、今回は想像以上に怪我もしちまってるからなぁ。そう言う場合は()()()()()として扱ってる」


そこまで言われてしまえば、納得せざるを得ないが、同時に疑問も浮かんでくる


蔡茌さいし めぐる

「よく認められたな、誰に許可を得たんだ?」


黎ヰ(くろい)

「ん?管理官だけど?」


一瞬、思考が停止してしまう


あくた 昱津いくつ

「異常、調査…部は、そう言った…新しい、試み…も実験…してるん、だよ」


蔡茌さいし めぐる

「まだまだ知らない事だらけだな」


この一週間あまり自分は、何をしていたんだと言わんばかりに肩を落とす


黎ヰ(くろい)

「それに関しちゃ俺の責任だ。受け入れてなかった訳じゃねぇーが、紾ちゃんがどうするかまでは、分からなかったからなぁ」


蔡茌さいし めぐる

「どう言う事だ」


黎ヰ(くろい)

「今までにも何人か()()()は居たんだがなぁ〜、全員三日も待たずに辞めてったって訳」


つまり、黎ヰ(くろい)はこの一週間、めぐるが根を上げるかどうか見定めていたらしい


理由は分かるが、聞かされた本人からすればあまり気分のいいものではなく、めぐるは顔を歪ませた


それに気づいた黎ヰ(くろい)は、謝るでもなく清々しいまでのドヤ顔で問いかける


黎ヰ(くろい)

「で?今日まで一緒に働いて来た、紾ちゃんの腹づもりは?」


めぐるは自分が異常調査部の監察係として過ごした日々を思い返す


笑いながらウキウキで解剖をしたり、貢がられるのが好きだと公言するあくた…何度も備品を破壊し、心を開いてるのかすら分からない曳汐ひきしお…暴論を武器に、無茶苦茶を通り越した調査をする黎ヰ(くろい)


彼らが"異常"だと言われる由縁も分かる様な気はする…だが、その裏では事件解決の為に、勤しむ姿もあったのをめぐるは知っていた


だからか、黎ヰ(くろい)の問いかけに答えるのにはそう時間は掛からなかった


蔡茌さいし めぐる

「これからも一緒に働きたいと思ってるよ」


予想通りの返答だったのか、黎ヰ(くろい)はニヤリと笑う


黎ヰ(くろい)

「大歓迎だぁ」

あくた 昱津いくつプロフィール】


性別/男 年齢/26歳  誕生日/1月14日  血液型/B型

好きな食べ物/揚げ物・温野菜・京料理  嫌いな食べ物/特に無し

好きな飲み物/フラスコに入ったお酒とお茶  お気に入りスポット/雨の日の外


経歴/実家は京都で茶道と花道の総本家。呉服屋としても展開を広げているが、ほぼ絶縁状態。司法解剖士として働いていたが黎ヰに目をつけ、スカウトされるべく、わざと騒ぎを起こした後に異常調査部へと来る。基本は部内の奥の部屋で寝泊まりをしている。


性格/奢ってくれたり、貢がられたりする事が好き系男子。基本信用している相手にはされるがままなので、そのせいでたまに大惨事になる場合もしばしば…死体好きが影響し、ゾンビ系の話には目がない。

夢は【養ってくれる死体と結婚する事】

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