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異常調査部〜廃校幽霊殺人事件編〜【1】  作者: 月ノ羽 ルナ


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15/23

組織

中央警察病院・外観にて


一人の男がトラックに洗い立ての衣類を積み、いつもの様に病院のガレージへと向かっていた


彼の名前は御女宵みめよい 妬苺といち、クリーニング屋で働く青年。見慣れた道を走り続ける中、彼は少し違和感を抱いていた


車の数がいつもより多い。しかも同じ方向へ向かっている…その違和感は気のせいではなく病院に着いた時に、確信へと変わった


御女宵みめよい 妬苺といち

「やっぱり車の数が多い」


配達の時間はいつも一緒なので、この時間帯に止まっている車の数もだいたい把握している。これは何かあったに違いない、そう感づく


業者用に設けられている裏口ガレージへと車を進め、搬入する時に楽な様、ドアから近い場所を選ぶとブレーキを踏んだ


視線を感じてバックミラー越しに、人影を二人とらえると、ため息をついた


不審者を見る様な目を向けられると、あまり良い気はしない


それでも、仕事だと割り切るとトラックの荷台から衣類の入っているカートを三つ出していく


裏口のドアを開け一つずつカートを中へと入れていく。その間も彼はずっと見張られたままだった


警察1

「おい、どうだった?」


警察2

「いま聞いてきたが、いつものクリーニング屋だそうだ。大丈夫だろ」


見張っていたのは、非番の中見張りに駆り出された警察官達で、クリーニング屋がいつも来ている人物かを警備員に聞いていたようだ


"怪しい奴が居れば取り調べろ"と命令され、こうやってさっきから業者が入ってくる度に確認を取っていた


警察1

「いつまでこうしてれば良いんだかな」


警察2

「例の黎ヰのせいだって噂だ。全く異常調査部なんてさっさと潰せばいいものを…」


皐月さつき達、少年課は馬場ばばの病室を見張っており、後から駆り出されて来た警察官達は、ロクな説明もないまま病院内を見張っていた


風の噂で黎ヰ(くろい)のせいだと言う事だけは届いていたようで、ほぼ全員の怒りの矛先は黎ヰ(くろい)へと向いている


警察1

「なんでも裏金を回してるとか、ヤバい連中と連んで署長を脅してるとか…署内でも奴の黒い噂は絶えない」


警察2

「警察官の面汚しってのは、まさに黎ヰの事だな。イメージダウンも大概にして欲しい」


黎ヰ(くろい)が奇抜な格好をし、ハサミを持ち歩いているのは街中で度々目撃をされており、それを見た人々の声は厳しいものだった


その対処を本人がする訳でもなく、窓口や受付に立つ職員達がその対応に追われている。完全に黎ヰ(くろい)の行いのせいで、他の者に迷惑が掛かっている…そう思われても仕方なかった


警察1

「死んでも治らんだろ」


警察2

「なら、さっさと殉職してくれればいいのにな」


あんまりと言えばあんまりな言い草だったが、これが今の異常調査部もとい黎ヰ(くろい)の評価だった


勿論、黎ヰ(くろい)自身そんな事は承知しており気にも止めていない。その態度が余計に周りを煽っているが、彼が自分の行いを見返す事はないだろう


そんな警察官達の会話など知る由もなく、全ての荷台を中へと持ち運ぶ事に成功した御女宵みめよいは、二人が後を着いてこないのを確認し、何かから解放されたように胸を撫で下ろした


その後は、慣れたようにエレベーターに上がり事務所に着くと、綺麗な衣類と汚れた衣類とを交換した


いつもならこれで終わりだが、今日は週に一度の社員達が利用するクリーニングの受付の日だった


病院は夜勤や泊まりの勤務をする人も居る為、こうやって個人用にクリーニングをしている。受付時間は短く、三時間だけだがこれが意外と多く、好評だった


休憩室の一角に着くと、空の荷台と必要な紙や電卓などを机の上に設置させていく


御女宵みめよい 妬苺といち

「いらっしゃい」


クリーニングを頼みにくる社員達が徐々に列を作っていく…


御女宵みめよい 妬苺といち

「ワイシャツ二枚っすね」


看護婦

「いつもありがとう、本当助かるわ」


御女宵みめよい 妬苺といち

「そう言って貰えると働きがいがあります、そういや今日何かあったんすか?ガレージの車が多い気がして」


看護婦

「えぇ、それがね…殺人事件の重要参考人?って言うのかしら、そんな人が明け方急に運ばれてきてね、警察が見張ってるんですって。怖いわよね」


御女宵みめよい 妬苺といち

「へぇ〜、お姉さんも気をつけてくださいね」


看護婦はお姉さんと呼ばれ、照れるようにしてその場を去った。ここで一度列が途切れ、見知った顔を見つけると手招きをして呼び、お腹が痛いからと言うと受付を代わってもらい、急いでその場を去った


彼が向かった場所はトイレ…ではなく、故障中の病室だった。中へ入るとドアを閉め、壁を背にして電話を取り出し、目的の相手へと掛け繋がった瞬間に喋り出す


御女宵みめよい 妬苺といち

「ちょっと、面倒くさい事になってます」


先ほどの看護婦の話を相手にする。重い沈黙の後、電話の相手…アラジンは口を開いた


アラジン

『先手を打たれたか』


御女宵みめよい 妬苺といち

「どうするんすか?アイツの情報じゃ、もう直ぐ田文が受診してくるんでしょ」


御女宵みめよいの表の顔はクリーニング屋で働いている青年。だが、裏では彼もまたアリババと同じように()()のメンバーだった


ある情報を元に、田文誠吾たふみせいごがこの病院へと来る事を知り、逮捕された馬場ばばの口を塞ぐよりも、元容疑者である田文誠吾たふみせいごを始末した方が早いと判断したのだった


御女宵みめよい 妬苺といち

「アイツじゃ殺しは任せられないっすよ、かと言って俺じゃサツの目があるから無理なんすけどね」


アラジン

『流石と言わざる得ないな。全て仕組まれてるのは明白…仕方ないこの事件からは手を引こう』


御女宵みめよい 妬苺といち

「潔よっ!良いんすか本当に」


アラジン

『どうせ馬場程度の証言では何も出来ん。それよりもアリババの正体を隠滅する方に専念した方が良いだろう、今頃例の女の身元を調べて実験場に向かっているかもしれんからな』


御女宵みめよい 妬苺といち

「まさか!アリババの報告から数時間しか経ってないんすよ。解剖するにしても許可とかいるんすよね?短時間ですぐ分かるとは思えないんすけど」


御女宵みめよいの言う事はもっともだった。

いくら警察官とは言え、死体を見つけてすぐに動き出すのは難しいだろう


解剖にも段階はあるし、身元を割り出すにしても明け方からじゃ色々と限界はある筈だ


御女宵みめよい 妬苺といち

「しかもあの女の死体って、偶然みたいなもんでしょ?所持品でも無い限り関連づけるのは無理でしょ」


照井てるいユミ。彼女は確かに組織の人間に殺害された。だがそれは御女宵みめよいの言うように"運が悪かった"としか言いようのない動機だった


そんな彼女の遺体を処分する事になったアラジンは、馬場をうまく操る為に、彼と関係のあった半年前の死んでしまった遺体だと偽り、照井てるいユミの死体を例の廃校舎へと埋めるように言いつけた


アリババには、ついでに薬の試作も兼ねて死体を処分次第、馬場を実験台として使え。と指示していたが…廃校舎に肝試しに来る学生に計画を阻まれるとは、アラジンですら思ってもみなかっただろう


アラジン

警察官(あいて)がお前の言うような間抜けなら、アリババに一泡吹かせたりは出来ない。今我々が田文誠吾に手出しできない状況が何よりの証拠だろう』


御女宵みめよい 妬苺といち

「確かにこれ以上、後手には回りたくないっすね」


アラジン

『あぁ。最悪を避けるのは当然だからな』


組織としての最悪の事態とは、表立って組織の実態を知られてしまう事だ


御女宵みめよい 妬苺といち

「オレだとクリーニング屋の仕事がまだあるんで実験場に行くのはムズイんすけど…引き上げろって言うなら適当に引き上げますよ」


アラジン

『怪しい動きはしない方が身の為だ、シンドバット…お前は()()()()()にしていろ」


御女宵みめよい 妬苺といち

「りょーかいっす。じゃそっちには誰が?」


アラジン

『アリババに任せる』


御女宵みめよい 妬苺といち

「はぃ??」


意外な人物の名前に御女宵みめよいは、反応してしまう


馬場ばばを易々と警察共に渡し、この面倒な状況を作った張本人……失敗した奴に何が出来る?そう思わずにはいられなかった


アラジン

『アリババ切っての願いだ仕方ない』


電話越からクスリと笑う声が聞こえる。この台詞だけなら親が子供の我儘を温かい目で見守っているようでもあった


御女宵みめよい 妬苺といち

「甘いっすね、小さいものに」


アラジンの性格を十分に知っているので、これ以上この事について話しても仕方がない


アラジン

『勿論だ。あいつもお前も私が守る者の対象だからな』


御女宵みめよいは、ふと思う


アラジンの言う"守る"の意味は、きっと一般的な守るとは違うんだろうなぁと


御女宵みめよい 妬苺といち

「りょーかいっす」


でも今は従うしか無いし、逆らう気もない


アラジンに守られている間は、自分の立場を確保できるのだから

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