表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常調査部〜廃校幽霊殺人事件編〜【1】  作者: 月ノ羽 ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/23

悪運の強さ

アリババが注射器を押すのと()()()()()()()()のは同時だった


ピーーピーー


耳鳴りにも似たその高音は、めぐるとアリババの耳に嫌な音として届き頭を響かせた


アリババ

「っ、っつあっ、っ、く、みみ…が」


あまりの頭の痛さにアリババは、注射器を離し耳を押さえ倒れ込む


蔡茌さいし めぐる

「っが、いた、いたい、」


唯一、この場で二人が苦しんでいる理由が分からない馬場ばばは不思議そうにその光景を見ていた


馬場ばば

「ひぇ、な何が起こってやがる」


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃん、歯噛みしめときな!!」


音が鳴り止んだ直ぐ後に、黎ヰ(くろい)に蹴り飛ばされたアリババは吹っ飛び、角に居た馬場ばばの元へと転がった


アリババ

「ぐっ、」


馬場ばば

「ひや!」


誰かが何かを考える前に、間髪入れず絨毯の端を掴み力いっぱいに引っ張りあげ、めぐるはコロコロと回り…身体が解放された頃には酷い頭痛と目眩に襲われる


蔡茌さいし めぐる

「くろ、い、なのか?無事で…よか、た」


フラフラする身体を何とか無理矢理起こし、立ち上がっるめぐる黎ヰ(くろい)は目を細めた


黎ヰ(くろい)

「お互いの安否が確認出来た所で、すぐさま退散」


二人の犯人を残して、黎ヰ(くろい)に導かれるままめぐるも図書室を出た


アリババ

「さっさと追え」


アリババに言われるまま馬場ばばも急いで後を追おうとして、気づいた…足元にアリババの持っていたもう一つの注射器が落ちている事に。素早くそれを拾うと、馬場ばばは出入り口へと走る


フラフラしているめぐるに追いつくのは、足を負傷している馬場ばばでも簡単だった


馬場ばば

「生きて帰すか!」


注射器を握りしめながら叫ぶ馬場ばばに対して、追い詰められている筈の黎ヰ(くろい)は挑発的に笑った


黎ヰ(くろい)

「さっきまで怯えてた奴がいきなり強気になる…武器を手にすれば気も大きくなって当然だよなぁ」


めぐるより一歩前へ出ると、馬場ばばの手に握られている注射器を見た


蔡茌さいし めぐる

(なにをする気なんだ?)


黎ヰ(くろい)

「で?人を殺せるその針は一体誰に使うつもりだぁ?言っとくが俺たちは立場上、犯罪者とは言えお前は殺せないぜ」


黎ヰ(くろい)が何を言おうとしているのか…めぐるにも馬場ばばにも理解出来た


『状況的にはこっちの方が圧倒的に不利と言っても比喩じゃない。だからこそ付け入る隙を見つける必要がある』ふと、黎ヰ(くろい)の言葉が頭を横切った


蔡茌さいし めぐる

「黎ヰ、駄目だ」


付け入る隙と言うのは恐らく、馬場ばばがアリババに反旗を翻す事なのだと気付いためぐるは、必死にとめる


あの劇薬の入った注射器を使わせてはいけない


蔡茌さいし めぐる

「罪のない子を殺害したとしても、殺し合わせるのは駄目だ。お前まで犯罪者になるつもりか」


直接でなくともその状況を作り、仕向ければそれは犯罪だ。そんな事は許される訳がない、あってはいけない


黎ヰ(くろい)

「黙ってな」


今までにない冷やかな声音に、突き放された気がした


蔡茌さいし めぐる

「黎ヰ!!…っぐ、頭が」


叫ぶとまだ頭が痛み、めぐるは顔を歪ませた。気にする素振りすら見せない黎ヰ(くろい)は、今度は言い聞かせるように戸惑いを見せる馬場ばばへと語りかける


黎ヰ(くろい)

「お前を縛るモノは何だろうなぁ、彼奴は本当にお前を生かすのか?そんな事ある訳ない…だろ?」


洗脳にも近い黎ヰ(くろい)の言葉は確実に、馬場ばばの心に響いていた


アリババは…失敗した自分を殺す。逆らえない相手だと思っていたが、今武器はここにある


黎ヰ(くろい)

「天はお前の味方だ」


馬場ばば

「は、ははは、そうだ、アリババから逃げるのは今しかないんだ」


黎ヰ(くろい)

「アリババねぇ」


新たな情報に反応を示すも、馬場ばば黎ヰ(くろい)達に背を向けた


丁度、頭を押さえながら出てきたアリババと目が合う。今までの会話が聞こえて居たのかアリババの目は残酷な人殺しの瞳をしていた


アリババ

「ふーん、それが答え」


馬場ばば

「そ、そうだ!もうお前らの言う事なんて聞かない!!お前を殺して自由になる!!」


アリババ

「へぇ、やってみれば」


馬場ばば

「へ?」


鋭いナイフが馬場ばばの顔目掛けて飛んでくる


馬場ばば

(死ぬ)


そう悟った馬場ばばの足元に、予期せぬ痛みがきたと同時に、そのまま横転してしまう。お陰で投げられたナイフは狙いを外し、地面へ刺さった


黎ヰ(くろい)馬場ばばの足を振り払ったのだ。どうして焚きつけた本人がそんな事をするのか気にはなったが、アリババがそれについて聞く事はなかった。正しくは聞く暇がなかった


何故なら、横転した馬場ばばが注射器を空中で離すのを見逃さなかったアリババは手を伸ばすーーが、それは黎ヰ(くろい)も同様で、彼が投げたハサミが注射器に当たり、その針が伸ばしてしまったアリババの手の平へと突き刺さったからだ


もちろん、ただ刺さっただけなら良かったのだが、最初から予想していた様に黎ヰ(くろい)がもう一つ投げたハサミが、注射器の後ろを押した


アリババ

「え…」


つまりは完全に中身がアリババへと投与されたのだった


アリババ

「はは、おもしろっ」


狙いを倒れた馬場ばばから黎ヰ(くろい)へと変えたアリババは、新たなナイフを持つと真っ直ぐ突っ込んでくる


すぐさま、しゃがみ振るわれた一撃を交わすも、アリババは軌道を変えナイフを下へと向けて、足に力を入れ黎ヰ(くろい)目掛けてナイフを振り下ろした…


その時


ガタン バリ バリバリ


アリババ

「……え」


床が抜けた


正しくは、アリババの力が掛かった足の下にある床だけが音を立てて崩れ落ちた


巻き込まれる前に黎ヰ(くろい)は身を引き、ついでに落ちゆくアリババの顔面へ向けて足を()()()()()()()()


アリババ

「くそっ、」


悔しそうに口を歪めたのを最後に、彼は床下へと落ちていった


黎ヰ(くろい)

「この下にも部屋があったか。悪運強い奴」


呑気にも思える黎ヰ(くろい)の言葉を聞きながら、めぐるは何が起こっているのかを考えようとするが、頭が痛み抑えた


蔡茌さいし めぐる

「いたたた…」


そんなめぐるを見て、黎ヰ(くろい)は直ぐに彼の首元を確かめた


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃん、針刺されてたろ。打たれたか?」


蔡茌さいし めぐる

「身動きが取れなかったからどうだか分からないが、症状も出てないし打たれてはいないとーー」


黎ヰ(くろい)

「血が出てる…気持ちちょっと打たれてるなぁ」


蔡茌さいし めぐる

「はい?」


身に降りかかっている死の恐怖がめぐるを襲う。青ざめた顔を明らかに楽しんでいる様子の黎ヰ(くろい)は、意地悪な笑みを浮かべた


黎ヰ(くろい)

「ま、安心しな気持ち程度だって言ったろ。効果なんてあって無いようなものだって」


蔡茌さいし めぐる

「…そ、そうか」


深く考えないようにしためぐるはただ唯、うなづくしかなかった


黎ヰ(くろい)

「んな事よりもだ」


次は眉を不機嫌そうに寄せ、いつの間にか持っていたハサミの柄でめぐるの頬を突きだす


黎ヰ(くろい)

「あれだけ忠告したにも関わらず、滑稽だねぇ紾ちゃん」


頭から爪先までジロジロと見られ、初めて自分の姿を確認しためぐるは、そう言われても仕方ないなと思う


ここに来る前までは綺麗なシャツだったのに、気づけば所々破れている上に血まで付いていた。よく見ると、頭や腰に膝まで血だらけの状態で少し腕をまくると、打撲痕まである


蔡茌さいし めぐる

「そう言う黎ヰこそ、左腕が血だらけじゃないか。大丈夫なのか」


黎ヰ(くろい)

「わざとだから、へーき」


蔡茌さいし めぐる

「わざとって何だ」


軽くあしらうと黎ヰ(くろい)は、とりあえずめぐるの調子が変わってない事に安堵した


黎ヰ(くろい)

(呂律も回ってるし、怪我以外にそれっぽい変化もなし…やっぱ悪運強いわ)


次は横転した拍子に頭を打ち、気を失った馬場ばばに近づきポケットから手錠を出した


黎ヰ(くろい) 

「んじゃ、とりあえず…4月25日午前3時半。廃校者殺人事件の被疑者確保っと」


ガチャン


しっかりと両手に手錠を掛けて、自分よりも堅いのいい馬場ばばをおぶった


黎ヰ(くろい) 

「紾ちゃん、さっさとこんな所出ようぜ」


蔡茌さいし めぐる

「いや、俺はもう一人をーー」


"追う"そう言う前に黎ヰ(くろい)は遮った


黎ヰ(くろい)

「やめときな、手負いの獣ほどたちの悪いものはない。それに今頃解毒剤打ちながら尻尾巻いて逃げてるだろうよ、追うだけ無駄だぜ」


蔡茌さいし めぐる

「…仕方ないか」


冷静にこの状況を考えると、最もな意見だった


それにアリババが落ちた床下を覗いて見て、身体が上手く動かない状態の今降りるのですらやっとだと思った


潔く諦めるとめぐるは、馬場ばばをおぶっている黎ヰ(くろい)に手を差し伸べる


蔡茌さいし めぐる

黎ヰ(くろい)だって怪我してるだろ、二人で運ぼう」


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃん〜勘違いしてんじゃねーの?」


蔡茌さいし めぐる

「勘違いって何がだ」


流石に馬場ばばの重さに参っているのか、額に汗を滴らせながらも図書室を指で差し示した


黎ヰ(くろい)

「紾ちゃんは()()()()()()()()()()()()()


蔡茌さいし めぐる

「彼女って?」


全くピンときてないめぐる黎ヰ(くろい)は、呆れたように深いため息をついた


黎ヰ(くろい)

「それじゃ少女漫画または、現代(いま)風に言うと異世界転生モノの鈍感主人公。気づけばバッドエンドになってるぜ」


何を言ってるのかは分からないが、果てしなく馬鹿にされているのだけは伝わる


黎ヰ(くろい)

「居るだろもう一人。あの中に…物言わぬ人間が」


物言わぬ人間…その言い回しに気絶する前の光景を思い覚ます


黎ヰ(くろい)()()なんて言うから気づかなかったが、ビニール袋の中の足…死体の事だとようやく合点がいく


蔡茌さいし めぐる

「分かった、あのままじゃ報われないよな。それにしてもいつの間に見たんだ」


実際に見ためぐるは死体の性別までは知らなかったのに、黎ヰ(くろい)はいつの間に見たのだろうか、そんな些細な疑問だったが回答は予想の範疇を超えた


黎ヰ(くろい)

「ん?中庭行ったろ、そん時に穴の中で()()拾った」


暗がりの中でもキラリと光ったそれは、指輪だった。めぐるには分からなかったが、黎ヰ(くろい)はその大きさやデザインから女性モノだと特定していた


「そう言うことは早く言ってくれ」と、強く思ったがもう喋るのも辛くなって来ためぐるは、代わりに顔を引きつらせるしかなかった



ーーー ーーー ーーー ーーー




無事に馬場ばばとビニールに入った死体を車まで運び入れた頃には、めぐるの息は絶え思考力は完全に低下していた


"死体を運ぶ""署に戻る"そんな単純な目標しか思い浮かばない時点で、限界はとうに越している


普通なら死体を背に抱えた時点でトラウマものだろう、警察官じゃなければ発狂していたかもしれない。

だが、めぐるがもっと精神的に追い込まれるのはここからだった


黎ヰ(くろい)は、助手席に馬場ばばを座らせ車内にあったロープを出すと、座席に固定させる。ご丁寧にシートベルトをセットさせると、額にまとわりつく前髪を鬱陶しそうに払った


その次は死体の入っているビニール袋を、慎重に後部座席へと横たわらせる


黎ヰ(くろい)

「お待たせ、どーぞ」


後部座席のドアを開けたまま、手で"乗れ"と促された。


蔡茌さいし めぐる

「…あはは…冗談じゃ、ないよな」


力なく呟く声音に、黎ヰ(くろい)は頷く


黎ヰ(くろい)

「そんな状態じゃなければ、帰りも運転してもらう予定だったけど…流石に無理だろ」


黎ヰ(くろい)の言うように、いまだに続く頭痛を抱えたまま運転するのは難しそうだった


だからと言って死体と相乗りも辛いものがある… 数秒悩んだ末に、結局促されるまま後部座席へと乗り込むしかなかったのだった


そこでめぐるの記憶は途絶えた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ