眠ったときの夢となりたい夢は違う
「手始めに……夢は?」
「あら、そんな初歩的なところから確認するの?まあ構わないけど。……知っての通りよ、私はデザイナーになりたいの」
「デザイナーっていえば、服のだよね?」
「そう、お洋服の。赤ちゃんからおばあさんまで、誰でもファッションを楽しめる世界になってほしいの!ほら、街でみかけるおばあさんって派手な服装をしないじゃない?ああいうのをみると本当に残念でたまらないの。だってオシャレなんて誰でもしたいじゃない!だから私が、ご年配用のオシャレで可愛い服をたくさん作って、どれを着てもいいのよって教えてあげたい!」
「いい夢じゃないか。でも正直、僕はそんなにオシャレには興味が無いよ。パトリシアの夢には、男は含まれていないんでしょう?」
「あら、心外。そんなわけないじゃないの。性別だなんて関係ないわ。そうね……あなた用の服を作ってあげてもいいわ。……サイモン」
「僕用の?ははっ……それはすごいや。僕みたいに弱っちいやつにも似合う服なんてあるのかい?」
「あるに決まってるわよ。弱っちいあなたどころか、服次第で逞しいサイモンにだってなれるわ!服は無限大よ!」
「それは楽しみだな……ぜひお願いするよ」
「それに、あなたが今着ている服だって似合っているわよ。趣味がいいじゃないのそのジャケット」
「シンプルな形だけれどカーキで、ボタンもついててカジュアルで……普段使いできる」
「……意外。わかってるじゃない」
「わかってる、というか。フレーズとして覚えてしまっただけさ」
「へえ、聞かなきゃよかった」
「……言わなきゃよかった?」
「……つまりあれね。それはあなたの意思で選んで着たんじゃなくて、ママが着せたってこと。ね?」
「まあ……」
「つまり私とママの感性が同じってことね」
「いいや!一般的な見方ってことも考えられるじゃないか!一般論として、誰もが同じ意見をもつジャケット……というか……」
「フォローが上手いのね。昔はただの生意気なガキんちょだったのにね。……さっきだって」
「さっき?僕さっきもパトリシアのことをフォローしたかな?」
「……まあ、いいけど。」
「うん。そっか。」
「ねえ、もしサイモンが自分で服を選ぶとしたらどういう服を着る?」
「うーん、考えたこともなかったな」
「なんでもいいのよ。何色とか……夏服と冬服だとどっちが好きかとかでもいいわ」
「……じゃあ、夏、かな。動きやすくっていいよ」
「他には?」
「他にはって……あとは何を言えばいい?」
「もう……無欲なんだか人任せなんだか。自分を擁護したいんだか……」
「無欲なだけだよ」
「……あとは。じゃあ次は色よ、色。」
「色かぁ……まあ、単色だったらなんでもいいかも」
「はあ、もう……無欲っていうのは時に人を苛立たせるのね。」
「まさか。あの女には褒められたよ?あなたは何も欲しがらなくていいわねって。まあ、ゲームはたまにねだったけどさ」
「あの女って?」
「……あの女はあの女さ。僕らの最愛の」
「…………それって、私たちを2人組の男にトラックに積むように頼んだ女のことで合ってる?」




