友達は大事だよね。
今回は炎の力をもつレイカが主人公。
だが就活ではその能力は意味がない。
どうなる!?
「あ〜、今日は暑いな〜...」
彼女は額に流れる汗を手でぬぐいながら高層ビルが立ち並ぶ街の中を歩いていた。
「ちょい休憩だな」
黒のスーツを着込んだ彼女の本当の名はレイカ=ルードというのだが、今はその名を隠しており、現在はカイラ=ノーイという名で表社会に出ている。
彼女は桜色の髪を束ねてポニーテールにし、少しでも清潔感あるように見せてはいるが、もともとがさつな性格が災いしてか、今回も就職活動をしてまた失敗を繰り返していた。
カイラは公園のベンチに座り昼食の弁当を開いた。
中身は食パンの耳の部分を取り除いたものに卵とレタスを挟んだものが3切れあるのみだった。
それを見たカイラは少しため息をついて「...ツカサめ...ハムはないのか」と愚痴こぼした。
カイラが昼食をとっていると、あることに気づいた。
公園前の信号が赤に変わっているのに小学生くらいの子供が横断歩道の真ん中で屈みながら何かを探しており道が渋滞していた。
「おいおい何やってんだあいつ...」
カイラは呆れた顔で成り行きを見ていたが、流石に周りの迷惑になっていると思い、その小学生に近づく。
「おい!、そこの嬢ちゃん、学校で習わなかったか?赤信号の時に横断歩道を渡るなって」
そこまでいうと少女はカイラに気づいたが、表情を強張らせ口を必死に動かしていたが喋る気配はないのでカイラの怒りゲージが上がった。
「そうか...人の返事に対して無視決め込むような奴には少し仕置きが必要だな」
カイラはその小学生を抱き上げると思いっきり上に投げ飛ばす。
小学生の体は遥か上空に浮き上がる、だいたいビル6階のあたりだ。
カイラはその背中から炎の翼を出現させると羽ばたき小学生を抱きしめてそのまま町の上空へと飛び去った。
10分後
カイラは誤解してしまっていた。
小学生が必死に口を動かしていたのは喋れなかったのだ。
10分間も仕置きだと上空で振り回したその後にビルの屋上へ着地して説教を始めた。
だが小学生は背中のカバンからノートと鉛筆を取り出して名前と事の成り行きをカイラに説明した。
小学生の名前はクリュニー=マームといい最近この街に来たばかりだという。
クリュニーの容姿は緑の髪に左から垂れている三つ編みが個性を出していて前髪によって目が隠れている。
服装は黒と緑のシマシマシャツ、ズボンは茶色で少しぶかぶかのようだ。
だが、今はそれよりもなぜ声が出なくなったかということだ。
「なんで声が出なくなったんだ?」
カイラが効くとクリュニーはノートにこう書いた。
「私はもともと声が出なくて、この発展した街には声帯補声機って呼ばれる機会があるから、それで声を出していたんだけど、それを無くしちゃった...」
カイラは自分のしたことを恥じた、相手の状態を考えずに自分勝手に相手を悪く言った自分が情けなくなった。
「しゃあねぇか....」
カイラはスッと立ち上がるとクリュニーをしっかりと見て、少し気まずそうな感じになりながら口を開く。
「私も探すのに手伝ってやるよ、さっきの公園のあたりなんだろ?」
この答えにクリュニーの表情が少し和らぎ軽く頷いた。
カイラはクリュニーを抱きかかえると再び炎の翼で飛び立った。
先程の公園に戻り、クリュニーの声帯補声機を探して見たが、やはりそれらしき物は見つからなかった。
「本当にここらへんで落としたのか?、この辺にはやっぱそれらしい物は見当たらないぜ」
カイラは探してない場所がないかと草木が生い茂る場所などを探していたため服と身体がかなり汚れていた。
それを見たクリュニーは申し訳なさそうにカイラの方を見る。
「いや、私が探したいからやっているだけだから、そんな顔するなよ」
カイラはあたりが夕焼けに染まり出したのを視覚し始めた。
「かなりの時間探したんだな、もう夕暮れ時か...」
クリュニーが少し悲しそうな顔をし始めたのを見て、カイラは最後の手段とばかりに話を切り出した。
「よし、警察にいって確認しよう!、もう誰かが拾ってくれてるかもしれない」
クリュニーが驚きの表情を見せる中、カイラは力強く手を握り警察署に向かった。
カイラが警察署の警官と話しているのをクリュニーは見ていた。
ここは公園近くの警察署だ。
カイラが近づいて来たので要件を聞く。
「どうやら、それらしい物があるらしいんだが本当にこれがクリュニーの物か見てほしい」
と少し引きつった顔でクリュニーに言ってきたので、クリュニーは警官の前へ向かった。
「これだと思うんだけど、確認してくれるかな?」
と警察が差し出して来たのは黒いリボンであった。
クリュニーはそれを見ると、今まで見せたことない顔をして飛び跳ねながら喜んだ後、そのまま髪の三つ編みの先にくくる。
するとカイラの方へくるりと振り返り「ありがと、お姉ちゃん!」とさっきまでの無口っぷりが嘘のみたいに元気な声をだす。
カイラは半分くらい信用していなかったが、本当に存在していた、声帯補正リボンの現物を見て信用せざるおえない状況に顔引きつらせるしかなかった。
クリュニーは急に別人のように振る舞いだす。
「何かお礼をさせてください、あなたのおかげでまた声が出せるようになりました」
「礼って言ってもなぁ...」
正直カイラは困っていた、このまま帰ればまたツカサに怒られると、そのために考えついた行動は。
ツカサは仕事着のままレイカの帰りを待っていた。
すでに7時の時を刻んだ時計はなお針を進める。
何かあったのか少し心配した頃に喫茶店のベルが鳴り響いた。
店に入店して来たのは見覚えのある姿と見覚えのない姿が一つ。
しかも見覚えのある方の服はかなり汚れていた。
ツカサは察した、レイカのがさつな性格と弱者を見捨てることのできないレイカの持つ強さとも弱さとも呼べる個性から起きる出来事を。
「いらっしゃいませー、こちらの席へどうぞ!」
ウェトレスのノエルも察したのか普段通りの接待をレイカにする。
レイカはクリュニーと来店し今日帰るのが遅くなったのは人助けをしていたと思わせる作戦に出たのだが、これは効果的であった。
レイカとクリュニーは今日起こったことを話し終えると店を後にした。
再び店内にベルの音が響くと今度はレイカが一人で入店して来た。
「ま〜た人助けして、仕事の方はとれてないんでしょ」
「よくお分かりで...」
レイカとツカサはお互いをよく知っているので大体のことは察せるのだ。
「まぁ、しょうがないとは思うけど人助けもほどほどにしなさいよ、レイカはこの店で働いてくれてもいいんだから」
ツカサはそういうがレイカは喫茶店の経営だけで自分達が生活できるだけの資金を稼ぐことは厳しいと感じていた。
「それもいいけど、やっぱもっと稼ぎたいじゃん、自分が遊ぶためにな」
ツカサは少し苦笑しながらも心中を察する、自分達にはまだ学生の子もいる。
正直自分達にはまだ経済力が足りていない事は明らかであった。
自分達は戦うために作られた兵器であることは、自分達で充分に自覚している。
レイカもこうは言っているがアルバイトで稼いだお金は学生の子の学費や自分達の生活費にほぼ全額当ててくれている。
その様子を伺っていたノエルは申し訳なさそうに二階へと上がって行った。
ノエルは闇の核を埋め込まれ身体が成長しなくなってしまっている。
その障害のせいでツカサやレイカと同じ年齢だが幼く見えてしまう。
幼い容姿ではどこも正社員では雇ってくれない為、ツカサの手伝いという名目でウェイトレスをやっている。
「今度は失敗しないように頑張るさ」
レイカは力強くツカサに昆布する。
ツカサは少し黙るとカウンター奥のキッチンへ行きコーヒーを淹れてきた。
「次はがんばりなさいよ、僕の大事な友達さん」
ツカサに渡されたコーヒーは淹れたてでレイカの好みの味がした。
ツイッターにイラストあげてます。興味があれば是非とも。