あの日
もう二月も下旬。
高校二年生の私が入ってる部活は、部員は先輩と私の二人だけ。
もうすぐ先輩は卒業してしまう。
それまでに、この気持ちを伝えられるだろうか。
先輩と出会ったのは一年生のとき。
部活動紹介で一人で話している先輩を見た。
一目惚れ
私はすぐに部活に入った。
本当は、中学からやっていたバスケ部に友達と入るつもりだったが、断った。
その友達とは一時期、喧嘩もしたが今では私の恋を応援してくれている。
私は決定力が無いと、友達によく言われる。
そうかもしれない。
部活に入ってバレンタインや学園祭でアタックしたは良いものの、最後の最後でもうひと押しが出来ない。
そんなこんなで、もうこの季節。
このまま気持ちを伝えなければ、先輩とはずっとサヨナラかもしれない。
そう決めて、今日は部室に来たのだ。
今日は、今日こそは、気持ちを伝えよう。
ガラガラ
部室のドアが開く。
「先輩っ!」
しかしそこにいたのは、私の友達。
「またここにいたの……」
彼女は肩を落として言う。
「そう、先輩を待ってるの」
私は満面の笑みでそう返す。
すると彼女は怒ったような、泣きそうな表情をして私に近づいてくると、私の肩を揺さぶる。
「またっ……! いつまでそこにいるの! いい加減戻ってきて! あなたの大好きだった先輩は……もう居ないでしょ?」
--そう言っても、私の親友はキョトンとしている。
私との約束を蹴って、一目惚れした先輩がいる部活に入った私の親友。
その先輩は、今はもういない。
三か月前の事故で。
私の親友の心はあの日に捕らわれたまま、帰ってこない。