瞬間移動をマスターしたぞ!
タクト無双の始まりです!
「ありがとうございました。また、ご来店ください」
「いつもありがとう。じゃ、また明日。」
この最後のお客様は、先生と常連からは呼ばれている。夕方から今の時間までコーヒーを決まって2杯注文してくれる。
このお客様は、猫ちゃんと遊ぶより、ゆっくり眺めて楽しむのがお好きなようで、コーヒーを少しづつ飲みながら、猫ちゃんを眺めては、にこにこされている。どうも近所に住んでいて、高校の教師をやめてからは、私塾で午後まで仕事をしてから、のんびりここで、明日の充電をするようだ。我々も特に、呼ばれて話しかけられない限り、先生の邪魔はしない。
先生を送り出して俺は、掃除に取り掛かった。ここからは本格的な清掃作業になる。もちろん、簡単な部分は生活魔法でなんとかなるが生活魔法では行き届かない細かい部分をきちんと綺麗にするのが次に訪れてくださるお客様のための心配りだ。
ソファーにかけていた、カバーを全部外し、洗濯箱に入れる。魔石で動く自動洗濯箱は容量が小さいので、何度も入れ替えなくてはならない。綺麗なシーツと交換する前に今度は、床の掃除だ。細かいチリや食べクズなどを箒ではきだして、きちんとすてる。そして、軽く床ふきを行う。ヘビーなワックスがけは程度にもよるが1ヶ月か2ヶ月で行うようにしている。
生活魔法の乾燥で乾かして綺麗なシーツをかければ、明日の朝にもう一度かるいチェックのための掃除さえすれば今でも開店できそうだ。ここまで2時間ほど、時間がかかった。
次には夕食を用意して、皆に食べさせる。女神様は食事は必要ないはずなのだが、時々、気に入ったメニューだと食べにいらっしゃる。おもしろいのは、大抵2人いっしょなのに、時々、食べ物の好みが違うのか1人ずついらっしゃることだ。でも地球の食材を使うときは決まって2人そろっているのがおもしろい。取り寄せでカレーや餃子なんかを作ると、きまって一番最初に座っている。そしていつもはしないおかわりもされるのと、やはり地球のご飯が好きなんだと実感させられる。
そして、お風呂に入ったら就寝だ。しかし、今日はついにためしてみたいスキルがあるのだ。それは、取り寄せの上位互換スキルの等級上げというスキルだ。簡単に言えばアップグレードできるという凄技らしい。
最初、これ、きれいなジャ・アンとか期待できるかとワクワクしたが、人間そのもののアップグレードは、できないことはないが、運命を微妙に変更することになるのでやらないように言われてしまった。というのも、そのスキルは、並行宇宙に存在する上位互換の自分と取り替えるだけなので、自分は結局苦労するだけだし、何より運命の女神からものすごいお仕置きがあるそうだ。
自分がやろうとしているのは自分自信の等級あげではなくスキルの等級上げだ。そう、ずっと瞬間移動をなんとかしたいと思っていたので、これは使えると思い、今に至るわけだ。
「そんなことしなくても、両手をあげて、ら・らんるーって3回叫べばいいだけなのに。」
「のに。」
アテナ様とアルテミス様にそう言われてしまった。できるか、あんな恥ずかしいポーズ!
というわけで、瞬間移動をアップグレードした。
で、できた。確かに魔力の多くを取られるが、行きたいところに、何も問題もなく行ける。
今まであった50cmの壁も軽々乗り越えられた。やった!
しかし地獄はその次の日に待っていた。
体がまた縮んでしまった俺にアルテミス様とサーシャが大興奮してとんでもないことになったのだ。やれやれ。
いつもお越しいただきありがとうございます。