ゆったり、まったり
アンは、さぼるの大好きです。
「ああ、コジロー様、最近きてくださらないけど、一体どこに、いらっしゃるの?」
アンがため息をつく。当のコジローは人化して、店番をしているが、その声を聞いて体をゾゾゾ、っと震わせた。アンの猫可愛がりは、ケイト同様限度がないから、コジローも最近は、ケイトやアンがきそうな時間は、基本的に人間形態だ。それにだ。
「あーおにいちゃん、こんにちわ〜」
「ちわ〜」
前にコタローとコジローが助けてやったルイスさんの子供ショーンとナディアがこの時間になると、時々、コジローと話にくるのだ。最近ではコジローもその時間を楽しみに待っているようだ。楽しげに話し始めた。
「よくきた!クッキーの残り。あるよ。たべう?」
「たべるー」「るー」
3人ともニコニコしている。それにしても。
「なあ、アン」
「なんです。オーナー」
「お前、こんな時間に油売っていていいのか?まだうさみーるは忙しいだろ、この時間」
ふっふっふっふっー。アンは不敵に笑って、ちっちっちっと、人差指を左右にふる。ちょっといらっとするぞ。
「オーナーは新入りのことしってるでしょう?」
「ああ、シェールな」
「あの子がすごく仕事を一生懸命してくれるから、やることがなくて」
「サボりじゃねえか。」
ふふーん、とアンは笑う。なんだかなーと思って俺は続けた。
「あのなあ。シェールは元々ここで働きたくて今うさみーるで修行してんの。お前より出来がよかったらいつでもシェールをこっちで働かすぞ!」
「うそ!私をさしおいて、シェールをこっちで働かせるの?」
「そりゃ働きが、いい方を引き抜きたいからな!」
そう脅かすと、アンは急にガタっと立ち上がった。
「さあ、十分休憩したし、うさみーるに帰ろうかな。」
そう言って、アンは、ギクシャクと、歩き、ドアを開けてうさみーるのほうへ走って帰って行った。
窓から見ると、うさみーるの中から出てきたサーシャに殴られて、おたおた、あやまっているアンが見えた。本当にサボっていたんだな。ふと。目を脇にやると、ぽちとるーたんが遊んでいた。ぽちも随分うれしそうだ。あれで魔王だってんだから笑わせる。
キッチンに向かってコーヒーをいれて、空いているテーブルに腰掛ける。この時間は、うさみーると違い、こっちはもういつもの静かな常連さんだけだ。
すると、ミケがこっちに向かってきた。今日は久しぶりに、こっちに猫ちゃんとして出勤してくれている。セオドアもケイトもよろこんでペロペロしていた。
最近は、すっかりゲスト猫ラッシュも収まり、また、こっちの猫ちゃんで回しているが、時々、猫の手が足りなくなるので、メイドカフェの方が暇だったら、ミケに手伝いにきてもらっているのだ。ミケも店長が任せられる若手が育ってきたので、こちらにも顔を覗かせてくれるようになった。
「にやー(タクト〜撫でて〜)」
そういうと、ミケは俺の膝の上にのって丸まった。
俺は、ゆっくりと愛情をこめてミケを撫でた。いつもバタバタして感謝の念を表すことができないが、こいつが一番最初の俺の相棒として手伝ってくれたことを俺は今でも忘れていない。
ミケを撫でると嬉しそうにゴロゴロした。そして、まったり、ゆっくりと俺たちの午後は過ぎていくのであった。
シェールちゃん、頑張っているようです。