緑の親指
寝てばかりいてはいけません。
せっかく俺がハンモックの上で目を閉じて思索にふけっているのに、せっせと乳魔人が、草取りに励んでいる。時々小声で歌もうたっている。うるせー。
どうもこのミリカには、庭師としての才能があるらしく、特に歌が草花の成長を助けていいとのことだ。確かに、こいつがきてから花が美しく咲くようになっている。
「あ、ご主人様、申し訳ありません。起こしてしまいましたか。」
「なんのことだ。俺は寝てないよ。目を閉じて考えにふけってるだけだし」
ミリカは、ふっと笑う。何もかも、お見通しというような笑い方だ。ちょっとムカツク。
「本当だよ。ほら、今から猫カフェにいくとこだし。」
「そうですか。」
「そうさ。」
カフェに戻ると、静かな時間が流れていた。この時間は、セオドアやケイトのような剣士は仕事で出払っているし、冒険者もダンジョンで忙しい。この時間にいるのは、家事に一息ついて、お茶を飲みに来た猫好きの奥さん達か、筋金入りの猫カフェ好きだ。そういう客は結構静かにお茶を飲み、猫ちゃんを眺め、ときどき、猫ちゃんを遊ばせてあげるだけでいたって静かなものだ。
「あ、店長、どうしたの?ここに来ても何もないの。」
ランちゃんが言う。確かに、俺はこの時間には邪魔なだけだな。じゃあ、ちょっと買い出しにでも行くか。
「買い出しはもううさみーるの店長がやってくれてるの。」
ああ、寝ている間にこんなにも俺は無力に。とほほ。スミス殿のところにいったら、るーたんが、スミス殿を手伝っていた。いいアシスタントぶりだ。じゃましちゃ悪いな。
俺の行き場は結局、ここだけかと、俺は戻って来た。
「お帰りなさい。」
ミリカが微笑む。
「まあ、行くところがあるだけましか。」
俺は一人ごち目を閉じた。ミリカの歌が心地いい。ぐぅー。
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