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波乱の予感

タクトの予感ですから。

昔、大いなる戦いがありました。神々と邪神の闘いです。光は闇を打ち消そうとし、闇は光を覆おうとしました。神の力と邪神の力は拮抗しており、双方の力がぶつかった時、大地は砕け荒廃し、生き物は姿を消しました。神は邪神を滅ぼすことに成功しましたが、自らも傷つき眠りにつきました。そして、あの間を自らの娘たちである運命の女神に委ねたのです。


時は流れました。小さな悪は時々現れましたが、邪神の力は潰えたかに見えました。しかし、邪神は自らに蘇りの邪法をかけておりました。神が眠りについているその時、まさに邪神が目覚めました。しかし力が足りません。そこで、自らの眷属である魔王に力を集めさせたのです。


長い間が過ぎました。女神はやっと悪の胎動に気がつきました。しかし、ほとんど手遅れに近い状態でした。魔王は既に邪神を完全に蘇らせるに足る力を集め終わっていたのです。そこで、女神は、時の賢者、ガウランに魔王の封じ込めを命じました。


「うおおお、ガウラン様、素晴らしいです!」

「ガウランさまーすごいん!尊敬するん!」


ガウラン信者のタール爺とるーたんが同時に叫んだ。るーたんは俺の膝の上だ。コタローコジローも人の姿で、俺の左右に座っている。3人とも目をキラキラと輝かせてサーシャの紙芝居に興じている。


「ううう、すごいのわし。偉いのわし!」


ガウラン様がうるさい。涙をながしちゃってる。サーシャはちょっと微笑んで続ける。俺に対しての態度とえらい違いじゃないか?サーシャよ!


魔王を倒すことはその時点で不可能でした。そこで、ガウラン様は、英雄たる勇者を召喚しました。勇者は勇敢で強くそして優しい心の持ち主でした。戦いは長く果てしなく続きました。しかし、勇者は魔王をなんとか退けることに成功しました。ガウラン様は、王者の器たる勇者の中に魔王を封じ込めました。魔王は死ぬことはありません。そのため、勇者の中に永遠に封印する必要がありました。そのため勇者は全ての力を封印にさかなくてはならなくなり力は衰えたかに見えました。


そんな勇者を心無い人々は弱虫勇者と呼びました。勇者はそんな無礼なことを言われても笑っていました。勇者のことを真に理解してくれる王女様がいらしたからです。


国を支配したい腹黒い侯爵様は、王女様を我が物にしたがっておりました。それには、勇者が邪魔でした。侯爵は王女様の替え玉を用意し、勇者の心を砕いてしまいました。


これで、王国は私のものに、そう叫んだ瞬間勇者の中に封ぜられていた魔王が蘇りました。蘇りの魔王は、侯爵に俺を蘇らせたその礼に、お前を最初に我が糧に変えてやろう、そういうと、頭から食べ始めました。


「ちょっとこれ、グロくないか?子供も聞いてるんだぞ。」


俺が呟くと、サーシャは俺をキッと睨んで続けました。こわー。


蘇りの魔王を止めることは最早ガウラン様にも不可能に思えました。しかし、その時、勇者の弟が、自分を犠牲にしてもいいから自分の中に魔王を封じて欲しいと懇願しました。勇者の弟もまた、英雄の器を持って生まれておりました。


ガウラン様は悩みました。なぜなら、弟は、永遠の時を生きながらえてその身の中に悪を封じなければならないからです。しかし、勇者の弟の意思は硬く、ガウラン様もそれに応えました。ガウラン様は、他の仲間とともになんとか魔王を打ち倒し、勇者の弟の中に蘇りの魔王を封印しました。ガウラン様は、その際、自分の半身を失いました。今のガウラン様は、前のガウラン様の半分になってしまったのです。魔王を打ち倒し、勇者の弟の中に封印し、さらに弟を不老不死にする必要があったからです。今でもその弟はどこかに生きています。邪神も自らの力を宿した蘇りの魔王を探しているのです。


「おおお、ガウラン様、素晴らしい。」

「すごいのん!」


タール爺が泣いている。るーたんも大興奮だ!


ガウラン様は疲れたのかぐーすか寝ていた。


ですから、皆さんも弱虫の人を見てもバカにしないであげてください。その人は実は魔王を封じている英雄であるかもしれないのですから。


みんなが盛り上がる。


「さすがガウラン様!」「英雄はすごいな」「弱虫ってお前のことじゃねえの?ガハハハハ!」


俺はこのバカバカしい紙芝居を見てしばらく考え込んだ。いんちきにせよ、これはある程度の真実をうつしたお話に違いない。


「タクちゃま。何をかんがえてらっしゃるの?」

「タクしゃま。もしかして魔王のこと考えてう?」


そうなのだ。この話を聞いて俺は非常に嫌なことを思い出した。俺が一番最初にアーサーにあった時、俺は確かに魔王の気配を感じたのだ。そして、奴は、とんでもない弱虫だ。いや、まさかね。


俺は後でガウラン様に聞いて見た。


「ガウラン様、アーサーの体の中に何か閉じ込められてるんでしょうか。」

「さあ、お主が何を言っているかわからんて」


そして、俺は感じた。何かあると。嫌な予感がする。


タクトの旅館ですから。

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