冒険者飯
焼きそば、たこ焼き。黄金の組み合わせです。
「うわぁ!おいしそうな匂い!タクちゃま、すごい!」
「タクしゃま、すごいの〜」
俺はいま、焼きそばを焼いている。いま、俺は日本の食文化をこの地に定着させるため奮闘中だ。というのも、散々、みんなに俺のたこ焼き愛を笑われたからだ!ちくせう!
「タクト!あんた、なんでそんなまずい食べ物に時間かけてんの、アホじゃない?」
サーシャ、お前が間違っていたことを俺は教えてやるぜ!
これは俺が開発した、冒険者用の携帯用弁当、ゴージャスバージョンだ。まず、主食は焼きそばだ。これは男らしく、ガッツリ肉も入っている。しかし、女性冒険者が食べやすいように肉は少し小さめに切ってある。そして、キャベツがふんわり甘みを加えている。素晴らしい!それだけではない!なんと、おかずは、ジャジャーン!たこ焼きである!たこが手に入らないので、残念だがチーズ入りである。しかし、粉は俺様が改良に改良を重ねて、そこはサクサク、なかはトローリの絶品だ。
炭水化物、炭水化物の素晴らしい冒険者飯として、この世界に定着していくにちがいない。クハハハハハハ!
さて、明日のためにとりあえず100食作るか。これを、朝、店の前で売るのだ。いつものサンドイッチが銅貨3枚だからこっちは、5枚、いや、6枚で売れるか。ククククク。
俺は、徹夜した。俺が徹夜するなんて明日は雨だと皆が恐れおののいていた。おまえらあたまがばかか!
朝、皆がそれぞれ、朝ごはんを頼んだり、時間がない冒険者はサンドイッチを買っていく。昼に食べたいという冒険者は朝ごはんもここで食べてくれる。ありがたい!
俺はワクワク、冒険者飯が売れるのを待つ。しかし、なぜか出て行くのは、サンドイッチだけだ!どうしてだ????????
「あんた、売れた?」
サーシャだ。
「うううううう、売れたにききききまってるじゃないか。」
「売れてないのね。わかった。気の毒だから2つちょうだい。買ってあげる。」
「……お買い上げありがとうございます。」
ついに朝が終わってしまった。売り上げはサーシャが買ってくれた2つだけだった。残り98個ど、どうしてだ。
どかーんと落ち込んでいると、サーシャがやってきた。
「あんた、何落ち込んでんのよ。それにしてもなんで売れなかったかわからなかったの?」
「ふとりそうだから?」
「女子か!あんた、それどうやって食べんのよ!」
「あ……」
「やっぱり考えてなかったんだ。だいたいそんなに汁が出るもの持っていたったら、カバンのなかベトベトになっちゃうでしょ!」
そうだった。俺ってば、その場で食べることしか考えてなかった。その上、俺はハシが使えるが、フォークだけで、これを食べるのはなかなか至難の技だ。確かに2本の棒はつけたが、よく考えたら意味がわからない。あたまがおかしいのは俺であったか。
あたまにきたので、中身を取り出して猫カフェの客にふるまった。これで認知度が上がればと思ったのだが、みんな残しやがった。
俺の冒険者飯への道はまだまだ遠いようだ。
目玉焼きを焼きそばにのせるのは邪道ですが、やめられません。