犬派?うさぎ派?それとも......
結構かめも好きです。
「お、お、俺は、犬派なんだからな。今だけなんだから、こうやって撫でてやんの。」
でかい声で猫を撫で繰り回す冒険者。俺とかいっているけど、女だ。確か名前は、ケイトだ。
「おおお、俺は、犬が好きだ!」
そんなに嬉しそうに撫でていて説得力ゼロだぞ。
「おい、タクト殿、コーヒーのおかわりを。それから、この子達と遊ぶための特別な道具をレンタルさせてくれ」
了解。しかし、店内にも遊び道具があるのに、あれをレンタルするとはねえ。しかし、嬉しそうだな。
「タクト殿、はやく、自立式猫じゃらし3号、ほのかなまたたびの匂いつきを持ってきてくれ。」
目が血走って怖いよ。このおもちゃ、最高の性能で、作ったはいいが、魔石の消費が激しくて無料で貸すと、赤字必死なので、レンタル料をとっている。それでも借りたい人が後を絶たない。
「ううう、かわいいのう、かわいいのう、はっ!俺は、犬派だ!」
ハアハア言いながら説得力がない。このケイト、前に、やらかして、猫を懐に入れて持ち出そうとした猛者だ。もちろんバレて、罰金を払わされて涙目だった。
このアルバ王国では、猫は、幻獣種なので、貴重である。みんなが飼いたいペットナンバーワンであるにもかかわらず、手に入らない。こんなに一箇所にたくさん猫ちゃんがいるのは奇跡に近いことらしい。
「くっ!もう行かなくては。また来るぞ、タクト殿。それから、猫様を分けてくれること、考えておいてくれ、俺は犬派だがな。」
こんなに説得力がないセリフを聞くのは初めてだ。こう見えて、このケイト、騎士団の第2分隊の隊長らしい。世も末だ。
カラン、とドアにつけたベルがなる。ケイトと入れ違いに入ってきたのは、アンだ。ここにわざわざ呼び出したのは、うさみーるで働き続けることを説得しようと思ったからだ。
「タクト様、およびでしょうか」
「うん、まあ、かけて。」
奥のテーブル席に座る。ここは、一人で内緒で猫ちゃんを愛でたい人用であるため、入り口からは影になって見られにくい。しかも声も聞こえないのだ。
「で、うさみーるで続けてほしいん…」
「無理です。」
「うん、でもね」
「でも無理です。これ以上、自分に嘘はつけません。私は、猫ちゃんが大好きなんです。」
こっちも目が血走っている。うん、ケイトに負けずとも劣らない変態だ。鼻息も荒い。召喚獣たちも珍しく動揺している。小声で
「あいつ、やばいよ、この間、撫でている途中毛皮によだれたらされたよ」
なんてのも聞こえて来る。ヤ・バ・イ。こんな奴がきたら召喚獣たちもストレスで仕事にならないような気がスル。
「わかったよ。続けてくれれば、ここの通年パスを贈呈….」
「続けます、ウェイトレス!」
案外ちょろかった。暇な時にこっちに入り浸っていたから、おかしいとは思っていたが、サラの接客を盗みにきたのではなく単なる猫好きだったとは。盲点である。まあ、猫が好きなことは大前提だから、気にしてはいなかったとは、これほどまでだったとは。それゃ、休みの日によくここに来るはずだよな。
でも蛇は少し苦手です。