ランちゃんのおつかい
クモ山さん、益虫です。
「これ、何かしら」
王女様が寝ぼけている。
「きゃ〜!蜘蛛〜!!!」
「あああ、クモ山さ〜〜〜〜ん!!!!」
もう少しでクモ山さんに会えなくなるところだった。危ない危ない!仕方がないから、寝室ではなく、俺の執務室、兼、作業場、兼、物置きにクモ山さんたちを移すことにした。しかし、ちょうどいい大きさの板がないのだ。寝室の上を通している板は長すぎるしなぁ〜。いっそ、半分に切っちゃおうか。よし、そう決めた。でもなぁ。ノコギリがないよな。近所に持っている人はいなさそうだし。金物屋で買うかぁ。でも高いしなぁ〜。あそこの店長、イエスノータッチの人だよなぁ〜。う〜〜〜〜ん。
「ランちゃん、悪いけど、お使いにいってくれないかな」
「うん、いいわよ〜でも何が必要なの〜?」
「のこぎり」
「えええええー、って金物屋までなのぉ?」
ランちゃんもあまり嬉しくないようだ。でも仕方がないんだランちゃん。クモ山さんたちのために犠牲になってくれい!
「いいけど店長も来てくれる。」
「あ、お、おれは虚弱体質だし、100m歩いたら、死ぬし、ほんとだよ!」
結局ついていくことになりました。とほほ。
「ふごー、らららら、らんちゃんなんだなぁーなんだなぁー。」
「あ、スミスさん、こんにちわぁ〜」
「他人行儀はよくないんだなぁ〜、ボブって呼んで欲しいんだなぁ〜」
う〜ん、そのうちおにぎりおいしいんだな〜とかいいそうだな。しかしボブというより出荷前のぶたさんだな。
「で、なんでタクトまでいっしょなのかな〜、じゃまなんだな〜」
我慢我慢。クモ山さんのためだ。
「店長!スミスさんをなぐっちゃだめですの!」
いかんいかん、無意識のうちに手を出してしまっていたようだ。
「もう帰れ帰れなんだなあ〜。ここにはお前に売るもんなんてないんだな〜。」
う〜ん、困った。どうしようか。そういえば、レベル120になって開眼した写し見を使ってスキルを写し取ってみようか。どんなスキルでもコピーできるようだから、かなり便利だと思うし。でもストックできるのが常に5つだけなんで、不便すぎて使っていないけど。
だいたい10ごとに小さな生活のスキルを身につけていたんだけど、あまり役に立つものがなかった、というか皆無だったよな。小さな火種をつくるスキルとか、MP20も持って行くくせにマッチですっただけの火がちょろって出るだけだしさ。
水のスキルとかいいな、って思ったら、コップ一杯で気絶するぐらいMP使うし。おかしいよ、この生活スキルのMPの減り具合。でも、この写し身だけは、MPを消費しないんで、いいな、って思っていたんだ。
確か、酒場のマスターが武闘家のスキル持っていたっけ。ちょっと真空斬りをコピーさせてもらうか。
酒場のマスターにお願いしたら、こころよく見せてくれた。スパーン、って木の棒が真っ二つになった。よし、写し取ったぞ。
その時、これが大惨事に繋がるとは全然思っていなかった。気軽に、板を半分にしようとしたら、家ごと真っ二つにしてしまった。レベル120で大技を繰り出すことの意味がわかっていなかったようだ。トホホホ。
後でよく考えたら、自分で板を割らず酒場のマスターにやってもらえばよかったと気がついて脱力したことは内緒。
普通は目の前にクモがいたら驚きますよね。