雨の日のけだるい午後
雨の日には家で猫ちゃんとゴロゴロするに限ります。
あ、今日は、雨だって予感。誰にでもあるよね。うちの召喚獣の猫ちゃん達もそれはあって、朝の起こし方も結構優しい。
だって、その日は開店休業に近いからね。常連で、猫ちゃん達に取り憑かれてしまったような客はともかく、雨の日は、家でのんびり、っていうのが、この世界の過ごし方のようだ。
ランちゃんも雨の日はお休みだ。1カ月に4、5日はこんな日があるから、ランちゃんには、定休日はなくて、雨の日がお休み。もちろん、それ以外にお休みしたければ、あらかじめ言ってくれれば休めるし。
午後になって雨脚が少し強くなってきた。これは、もう今日は誰もこないかな。さっきまでいた怖い顔をとろけさせて猫を撫でていたニイちゃんも、帰っちゃったし。ぼんやりと、雨に薄煙る道を見ていたら、前のうさぎカフェ「うさみーる」のマネージャーが走ってきた。うん。これは、鍵をかけようか。そう思って立ち上がったら、それをさっして、サーシャが鬼の形相で走り出した。そして、ドアに足を差し込みやがった、ちっ。
「あんた、また、あたしを締め出そうとしたでしょ。」
「うーん、なんのことかな。僕、子供だからわかんないや。」
そうなのだ。実は、オーナーとはいえ、自分はまだ12歳なのだ。でも前世の15年を入れると27歳で、隣のマリアさんや、15歳になるサーシャより年寄りというのは内緒だ。
「あんた、こんな時だけ子供ぶって、ろくな大人にならないわよ、コーヒー淹れてよ。」雨に濡れた髪を拭きながらサーシャが椅子に座る。すると、猫達も、猫を被るのやめて、立ち上がる。
「姐さん、雨の時だけじゃなくてもっと遊びにきてくださいよ」「うさみーるとこっちのオーナー交換しましょ」「姐さん、遊んでよ〜」
おーおー、もててるもててる。いいこっちゃ。コーヒーをテーブルにのせて、チョコレートチップクッキーを置いてやる。サーシャの大好物だ。猫達も好きだからおすそ分けもできるしね。
実は、本当のところは、前の「うさみーる」も、この「たま」のチェーン店第2号だ。もちろんオーナーは、俺だ。内緒だけど。最初にサーシャにあった時は、びっくりした。
「あ、あ、あんたこれ、幻獣じゃないの。どうやって召喚したの?」
やばい、そう思ったら、サーシャも、召喚士であった。しかも自分と同じポンコツの。サーシャはうさぎしか召喚できないので、召喚士ギルドをクビになり、失意のうちにふらふら立ち寄った街に召喚獣で飯を食っているやつがいたから驚いたらしい。こう見えてもサーシャは、貴族で、なんと王立の魔法学校にも通ったことがあるらしい。しかし、貴族になるためには、力を示さなければならないらしい。王国がせめられた時に、立ち上がり、召喚獣で戦うのが、貴族の役目である。
しかし、サーシャがいくら努力しようと思っても、召喚できるのはうさぎだけだったらしい。しかし、うさぎって……。全く戦闘に向かないしね。
というわけで、ハーピーを召喚できる妹が貴族は、つぐことになったらしく、冒険者になろうとギルドに入ったはいいが、うさぎしか召喚できないことがバレて、追い出されたらしい。
ふふふ、こいつは使える。
俺はノウハウを教える代わりに、サーシャに2号店を出店させた。もちろん、ポンコツの彼女が唯一だせるうさぎをメインにしたうさぎカフェだ。
真正面にあるから客を食い合ってしまうかとも思ったが、どうも、派閥があるのか、猫派、ウサギ派、そしてどちらもいける派に分かれて見事な住み分けができるようになった。ラッキーだ。
「ねえ、あんた、聞いてるの。」
「うん、聞いてるよ。どうして、悪い魔法使いが王子様を倒さなかったかだろう?それはね、魔法使いが王子様に恋をしてしまったからさ。」
かっこよく決めたが、どうもお気に召さなかったらしい。
「はぁ?頭に蛆でも湧いてんじゃないの?あたしがいったのは、アンをどうにかしてよ、ってことよ」
わかってるよ。ちょっとした日本人ジョークじゃねえか。
アンというのは、うさみーるのウェイトレスだ。サーシャと違いとても美人さんで胸も大きい。
「あんた、今何か失礼なこと考えていなかった???」
冷たい目でギロリと見られた。おーこわ。こいつ、心が読めるんじゃないか。まったく。
「アンは、綺麗だから、また、言い寄られているんだろ。仕方ないさ」
「そうじゃないのよ。そんなことだったら、ラッキーじゃん。アンを目当てに通ってくれるやつから金がたくさん毟り取れるから」
そうじゃないかと思っていたよ。
「そうじゃなくて、アンは本当は猫派で、あんたの店で働きたいんだって。そいで、ランちゃんと変わってくれないか頼んで欲しいと私に言ってきたのよ」
なるほど、こいつは難儀だ。しかし、外を見ると相変わらずの雨。こんな日には、何もかも忘れて、まったりしたいよ、まったく。
うさぎも結構好きです。もふります。