表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/290

ラシーヌの瞳再び

記憶の中ではどんなものでも美しいですよね。

サイン会が終わってからしばらくコタローは、ひきこもった。無理もない、あんなに怖い発情したメス共に囲まれたんだ。人間不信にもなるだろう。


しかしあのパクリ本、ゲフンゲフン、ベストセラーのラシーヌのためには、すごい勢いで売れているそうで、サーシャが次のイベントをやりたがって怖いよ。コタローお前のせいでひきこもってんだぞ!


それにしてもあれが、ほぼ、そのまま歴史をなぞっているということは知らなかった。でも、あんなにアリ王子は、美形でもなかったらしいよ。それに本当は、ラシーヌの瞳を大きなキャンディだと思って飲み込んで喉につまらせて死んだアホな王子の話らしい。


ガウラン様が教えてくれたんだから間違いないな。でももう800年以上も前のことなんで詳しいことを知っているのは、ガウラン様しかいないらしい。


「そういえば、ガウラン様」

「なんじゃ、タクト殿。」


ガウラン様、相変わらず猫ちゃんを撫でるのに夢中だ。


「ラシーヌさんって、まだ存命なんじゃないですか。」

「いやいや。エルフがいくら長命だとはいえ、もうラシーヌは生きてはいまいよ。でもな。わしは思うんじゃ。かなえられなかった恋じゃからいつまでも輝くのじゃ。思い出の中にあるからこそ、全て美しいのじゃ。過去のことは全て美化され、そして、記憶の中にしまわれるのじゃ。」


へ、へぇー。なんだかガウラン様が、かっこよく見えたよ。一瞬だけど。


「それにな、ラシーヌは死んでなどおらん。」

「え?でもガウラン様、もう生きてはいないだろうって…」


するとガウラン様は、そっと手を心臓の上にあてた。


「彼女は今でも生きておるよ。わしの心の中にな。そこには、若いわしとラシーヌがいつまでもいつまでも微笑みあって生きておるのじゃ!」


カラン、その時ドアがなった。お、客か?


するとえらい年取ったばあさん?爺さん?がそこにいた。


「ガウランどの、覚えておるかの、わしじゃ、ラシーヌじゃ。本読んだぞい!なかなかええのう。」


ガウラン様はその場で卒倒された。そのあと、何をラシーヌ様に話しかけられても目が死んでいた。どうやら、ラシーヌ様、たんなる話好きのおばあさんと化していてうるさい、うるさい。記憶もぼやけていて、同じことを何度も繰り返して聞かされるので、うんざりした。

それからガウラン様もひきこもった。なむ〜〜〜。

ガウラン様、かわいそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ