勿体無いお化け
鈍亀です。またもや短めです。
夜、ガサガサ音がした。まさか、あいつか。ゴキか!俺は、ゆっくり、台所を覗いた。いた、って、カサンドラか。まだ子供モードのままのくせに、夜更かしか。
「おい、何やってんだよこんな遅くに!」
「ひぃいいいい、びっくりした。びっくりしたよ!もう!」
「お前、せっかく元の体型にもどったんだから、夜に食べるなよ。」
そうなのだ。あいつってば、台所で、俺が作ったサンドイッチの残りを漁っていたのだ。しかも、最近は、すっかり勤労の意欲も失っている。太ってから、働かずに、ブラブラしていたくせが、痩せた今でも続いているのだ。日中は、寝ていて、夜に、家の中をブラブラしているのだ。たちの悪いことに、スミス殿の人形があるから、夜は一人で、人形遊びだよ。なんなんだ・・・・・。俺はサンドイッチについて、コメントしておいた。
「お前、それ、ちょっと古いから近所の家畜にやろうと思っていたやつだぞ。」
「もったいない。まだまだ食べられます!こんな勿体無いことしていたら、勿体無いお化けが出ますよ!」
「アホか、勿体無いから、捨てずに家畜にやるんだろうが!」
「まだ食べられないものを、無駄にせず、食べた方がいいんです。勿体無いことをしていると、来ますよ!」
その時、後ろから、ガチャっと音がした。
「ひいいいいい!勿体無いお化け?」「ゴキか?きたか、やつが!」
ところが、なんとそれはガブちゃんだった。ふよふよふよ、と飛んできて、ミルクを見つけると、それを飲んで、また、ふよふよふよ、と行ってしまった。寝ぼけているのかな?
「ま、とりあえず、夜に食べるのはやめろよ、もし、もっと食べたいなら、夕食の時に、多めによそってやるから、俺にいいな!」
「も、もちろんですわよ!あなたのせいで、こんなところに住んで、お腹もすく不自由な生活を強いられているのですもの!一生、取り付いて搾り取ってやりますわ!」
「いい加減出ていけよ。もう!」
「いやですわ!あなたに娶ってもらって、責任をとってもらいますわ。一生働かずに養ってもらいますわ!」
「お前、単なる引きこもりじゃねえか!お前のせいで戦争が起きたのも、お前がニートだからだろ!猫カフェでいいから、働け!」
「嫌ですわ!」
「お前、そんなことやっていると、勿体無いお化けがくるぞ!」
「わけがわかりませんわ。どうして、勿体無いお化けがくるんですの!」
「それは、働けるやつが、さぼってぶらぶらしているからさ。勿体無いだろ!」
「勿体無いお化けなんていませんわ。」
「お、お前、いっちゃったな。勿体無いお化けが、聞いていたら怒るぞ!」
「そ、そんないないものは、お、怒りませんわ!たぶん・・・・・きっと・・・・・。」
俺は、面白くなったから、驚かせてやろうと思いついた。
次の夜、夕食を増やしてやったのにもかかわらず、やっぱりカサンドラが台所にきていた。こいつ、でかいゴキだな。
「のぞみちゃん、ガブちゃん、やっておしまい!」
「うなぎ、本当に、パンよこせよ!」
「ダダ!」
「わかってるって!さ!頼んだよ!」
カサンドラが、台所を漁っている。
「ないわね。チーズ。ここにあると思っていたんだけど。」
カタカタっと目の前の皿をガブちゃんが、ゆらす。
「だ、だれですの?か、風?」
すると、のぞみちゃんが、高速で動いて耳元でささやいた。
「もったいない・・・・・・。」
「ギャー!!!!!」
絹を裂くような、悲鳴で、カサンドラは、逃げようとした。したのだが。
「こ、ここここここ腰がぬぬぬぬけました・・・・・・・。ひぃいいい。」
「もったいない・・・・・。」
「ふわあああああああああああああああ!」
ズリズリと、這って逃げるカサンドラ。うん、なんか、濡れた跡が・・・・・・。なめくじかって・・・・。もしかして、もらしたか。ごめん。ところが、そこに追撃が・・・・・・。
「勿体無い・・・・・働けえ・・・・・・・・・・。」
「は、はた、やはやがらあれあが、働きますぅーーーーーーー!」
白目をむいて、口から泡を吹いて、はたらきますぅーというカサンドラ。驚かせすぎたぞ。ごめんよ。
「ダ!」
「わかってる。反省してる。」
「うなぎ、その反省の心を忘れず、パンを多めによこせよ。」
「ダダ!」
なんだよ、そっちかよ!
次の日から、一生懸命働くカサンドラの姿があった。それを横目に、俺は、ハンモックに横たわるのであった。ああ。勿体無い。勿体無い・・・・。ぐぅー。
これからもよろしくお願いいたします。