料理勝負は突然に〜その弐
鈍亀です。あまりにも更新が遅くて、亀メダルをもらいそうです。とほほです。
「さあ、あとは残り20秒です。もう手を離してください。9、8、7・・・・・はい、そこまでです、お疲れさまでした!」
シェールが高らかに宣言する。なんか、変なスイッチ入っていないか?
「さあ、皆さん、いよいよ判定の時間です。では、まずは試食から。」
勝ったな!1品目は、うどんだ。これは、手打ちなんで、こしもあるぞ。
「おう、おいしいのう!」
王様があまりのおいしさに驚いた。そうだろうそうだろう。褒めろ!俺は褒められて伸びるタイプだからな。ふはははは!
「どうかな、これ?おいしいか。うっすいぞ、スープ!」
関東人か、お前!くくく、セオドアのように外で働いているやつには、別のスープもあるぞ。
「そう思うなら、こちらのスープで、どうぞ。」
「うわ、うっま!これ、うっま!」
「そうでしょう、そうでしょう!」
ま、お約束だよな。
次は、餃子だ。これは、野菜が多めなので、女性に大人気だ。
「おいしいのう。」
「本当ですわ!」
王女様方には、大人気。ケイトが首をひねっている。わかるぞ!そんな人には、この肉多めのガッツリ系の餃子だ!
「タ、タクト殿、こ、これは!!!」
カッと目を見開いてガツガツ食べている。ふはははは。勝ったな。
次のピザは、薄い生地で、しかも、茄子、ズッキーニ、トマトが入ったさっぱり系なので、連続して食べてもおいしいぞ。
「ばあさんや、お代わりじゃ!」
えーとガウラン様、ぼけてます?ま、まあ、おいしかったならいいか・・・・・。
そして、最後はホットケーキだ。
「タクトちゃーん。お代わりお願い。」
「こっちもだ!」
「こっちも!」
大人気だ!ふはははは。俺の時代がきたな!
「さあ、この全品にかかった費用は、おいくらですか!」
シェールが俺に聞いてくる。そこで、俺は、スっと紙を渡した。
「な、なんと!全部で8人分なのに、銅貨8枚!1人あたり、たったの銅貨1枚で、作られております!」
会場がどよめく!そうだろうそうだろう!褒めろ褒めろ!ふははははは!
どうやら、みんな完食したようだ。次のケチャの分は、かわいそうだが、入るまい。これこそが、俺の秘策であったのだ。美味しいものを食べてお腹がいっぱいになってしまえば、もう食べられない。食べられても、腹がいっぱいでは評価も落ちよう。俺ってば、策士!
さあ、ケチャのばんだ!
しかし、俺は目を疑った。
1品目は、アワビの酒蒸しだ!いったいいくらかかったんだ!
みんな、うまうま食べている。し、しまった、俺の計画が!
「ちょっと柔らかいけど、このアワビ、いけるな!ガハハハ!」
セオドアががつがつ食べる。
「ばあさん、お代わり!」
またあんたかー!ガウラン様!
そして、次に鴨のワイン煮だ。な、なんだと!ま、まさか、こんなに高い食材が!!しかも、トロトロワインで煮込まれていて、これは、当然別腹だ!く、まさかケチャがここまでやるとは!
「うーん、少し柔らかいが、まあまあじゃな!」
王様からもお墨付きが出た!
そして、次は、鳥の胸肉のソテーだ。おいおい、いくらかけたんだ!ガッツリした肉なので、当然みんなうまうま食べている。
「うーん、ちょっとあっさり目だけど、私は、こっちの方が好きよーん。」
レティまでもが、絶賛している。
「おおお、どうやら、大変高評価のようです。ただ、このような素晴らしい食材、値段がはったのではないでしょうか!」
「全員分、銅貨1枚です!」
「な、なんと、これ全てを銅貨1枚とは!」
俺は、驚愕した。調味料だけで、その値段だぞ!
「おいおい、ケチャ、そんなわけないだろ!それって、調味料の値段だぞ!」
「そうです。店長!」
「どういうわけだ。」
「えーと、最初のアワビの酒蒸しの材料は、大ナメクジです。」
みんな、吐きそうな顔をしだした。ちょっと待て!
「おいおい、あれって食えるのか?」
「かろうじて。」
胸を張って言うことか!ちょっと待て!
「その次の鴨のワイン煮の原材料は、ジャイアント・フロッグです。」
なんですとー!あれこそ、食えんだろ!みんなの顔が青から黒に変わった・・・・・・。ひぃー!次を聞くのが怖い。
「じゃ、じゃ、鳥は?イノシシとか?」
「失礼ですねー。あれは、鳩です。そこで捕まえてきました!」
みんな顔がこんどは、真っ赤になっている。みんな、トイレに駆け込んだ。そんな中、ガウラン様だけ、楽しげだ。
「ばあさんや、次の食事はまだかいのう?」
ヤバイ、なんかボケてる!俺は、力を入れて、巻き戻した。
しかし、巻き戻さなければよかった。というのも、ガウラン様まで、そのままトイレに青い顔で駆け込んだから。召喚獣でも、気持ちが悪い時は気持ち悪い。やっぱり、最初のナメクジがあかんかったか・・・・。
「こ、この勝負!タクト殿の勝ちです。」
「えええええ!私のもおいしいのに!」
「食材が悪いわ!アホー!」
閉式の辞も、王様のはずだったのだが、トイレから出てこられなかったので、代わりに、俺がやった。なぜかやらかした、ケチャの握手会とサイン会、そして、写生会には人が大勢並んでいた。どうしてだ?まあ、それでもケチャは、あまり幸せそうじゃなかったけどね。
夜、庭に出ると、落ち込んでいるケチャがいた。俺は頭をぽん、と撫でると、言った。
「明日デートでもするか。」
すると、周りから、わらわらと女性が出てきた。
「妾はいつでもよいぞ!」「私も参りますわ!」「お誘い、ありがとうございます。」「ボクもいくよー!」「ランちゃんもー!」「イーダだっていくわよ!」
うーん、ま、明日はピクニックだな。でも、俺が作るぞ。もう、ケチャには、当分料理はさせん!猫カフェでもだ。変な噂がたったら困るしな。
隣を見ると、ケチャは、幸せそうに笑っている。ま、いいか。俺は、満天の星の下、ハンモックに身を投げ出した。
いつもありがとうございます。よろしくお願いいたします。