女勇者の善行
亀です。いつもありがとうございます。
「いらっしゃいませー。」
今日は、朝から、結構お客さんがきてくれて嬉しい。ま、お金にはそんなにならないんだけど。みんなまったりのったり、猫ちゃんを愛でにきているのだ。よきかな、よきかな!
カラン、またドアベルが鳴った。お、新しいお客さんだ。
「うひょー。本当だ。ここ、いいなあ。」
「そうでしょう。お客さま、ここは、癒しの聖地、猫カフェでございま・・・・」
「いや、私がいってるのは、かわいい男の子が店長をやっているという現状だよ。うふふふふ。」
「え、えーとお客様?」
「くくく、健気で、お金に困ったこの少年を勇者のアタシが救ってあげる。じゅる。最高じゃないか。くくく。」
「えーと、もしもーし。」
「はっ!も、妄想に浸ってしまった。失礼した。私は、隣の大陸からきた勇者イライザという!イーちゃんと読んでくれ給え。いやいっそ、奥さんでもいいぞ。きゃっ!」
えーと、誰?この頭に蛆がわいた人。アホなの?
「くくく、そいでもって、アタシがこの子を救ってやって、それで、勇者様のためなら、ぼくは死ねるとかいっちゃって、そいで、最後はラブラブ。ぷふぅー!」
ゲゲ、鼻血を吹き出したぞ。こまったやつだ。
「おう、うなぎ、配達終わった。うわー、なんだ、この血!」
俺はうんざりして答えた。
「俺にもわからん。」
10分後、俺は、正式に勇者?という人物からの自己紹介を受けた。
「私はイライザ。隣の大陸のドニミク王国の王から、正式に依頼を受けて、甘栗工場の見学にきたんだ。なんでも、甘栗工場の視察が急務だと言われて。」
「で、何を視察するんです?」
「さあ?」
俺は、いやな予感がした。
「すみませんが、紹介状かなんかもってます。」
「ほら。」
そこには、俺の恐れていたことが書かれていた。
タクト殿、このように貴殿の手を煩わせることになってしまい大変申し訳なく思っております。我がドミニク国でも、この勇者の空回りぶりには、いささか手を焼いております。悪い人物ではないので、なおさら、処置に困っております。とにかく、ここには、勇者のための仕事がないというのに、いろいろやってくださり、大変迷惑しております。
さて、これをそちらのぴょん子様にご相談申し上げたところ、タクト殿は、そのような面倒な女性を集めるのがご趣味とのこと。最初は、我が方も、さすがに図々しいとは思ったのですが、ぴょん子様の力強いお勧めにより、このようなお願いをすることになりました。
また、この勇者様、幼い男の子が大好物だというのも、ぴょん子様によれば、いい点のよう・・・でして、それで、このようにお願いすることになった次第です。心苦しいのですが、お願いできないでしょうか。
えーと、まず、ぴょん子、お前いつか死刑!それにしても、これって、体のいい厄介払いですね。
「さあ、勇者イライザがきたからには、君をこの貧困から救ってみせよう。そして、君を永遠に守ろう!」
えーと、人の事業を貧困とかいっちゃって。ひどいな。
そこへ、へっぽこ丸がやってきた。
「あ、もしかして!聖なる力を神から借りた勇者か!覚悟!」
へっぽこ丸がへっぽこパンチを放つと、イライザは、再びきゅう、と昏倒したのだった。悪は滅びた。
ぽかっと、ケチャがへっぽこ丸を後ろから叩く。うーと涙目のへっぽこ丸。
「あんた、勝手に、お客さん叩いてるんじゃないのよ!もう!」
「うー、ず、ずみません。」
「ほら、これから、お皿を洗ってもらうんだからね。」
「は、はい。」
なんだよ、この勇者、めちゃくちゃ弱いじゃないか。そこで、俺は、ピンとひらめいた!俺は、るーたんに頼んだ。
「う、うーん。」
「勇者よん。簡単に一般人に殴られて気を失うとは情けないん!」
「はっ、も、もしかして、その神気、め、女神様!」
「いかにもん!さあ、あなたには、これから、レベルをあげてもらわなくてはならないのん!まずは、この国のダンジョンに行くのん!」
「わ、わかりました。そ、そこで、魔物をたくさんやっつけると!」
「違うのん、全然、違うのん!そこで、たくさんのお札を買いなさいのん!とにかく、持てるだけ買いなさいのん!その後は、海上国家へ行くのん!そこの王様、コサブローに会うのん!そうしたら、コサブローに、買ったお札を渡すのん。その後、また、ここにもどってくるのん!それをこなせばいいのん!」
「わ、わかりました。まず、お札、それから海上国家ですね。わかりました。」
「事態は一刻を争うのん!」
「は、ははー!」
勇者は出て行った。くくく、コシチがお札がだぶついているって言っていたからちょうどいい。これで、在庫処分もできるし、一石二鳥。しかも、コサブローに渡すということは、こっちに戻ってくるということだから、たくさんまた作らなくてもいいし。なんて、ナイスなアイディアだ。
1時間後、つばでベトベトになった人間バージョンコシチが涙目で、抗議にきた。
「えーと、ごし人さま。在庫処分はありがたいけど、ペロペロやはむはむは勘弁なの・・・・・・。」
「うーん、なんかごめん。それで、もう旅立った?」
「うん、ぽちが張り切って、勇者セットを売ったの。ものすごくお金つかってくれて嬉しかったの・・・・・。でもペロペロは、もう勘弁なの・・・・・・。」
す、すまなかったコシチ。しかし、これで、時間も稼げたし、いいか。
1ヶ月後、俺たちがすっかり忘れたころ、勇者は現れた。
「海上国家へ行ってまいりました。あれ?女神さまは?」
「えーと誰だっけ?」
「勇者、勇者!ひどいな、忘れるなんて!イライザよ、イライザ!」
「ああ、そうだった。イラ、なんとかさん、そうだった。ちょっと待ってね。」
俺はるーたんに、また神託を出してもらった。そして、再びダンジョンを目指すように伝えた。
「えーと、女神さま、海上国家に行ったことに何の意味があったのでしょう。」
「あのお札は、身につけて、海上国家に奉納すると、あなたの勇者としての品格が、10倍にも20倍にもあがるのん!気がつかなかったのん?」
「女神さま、そ、そういえば、力が湧いてきます。」
いや、お前のわいているのは、頭だけどな。
「さあ、おゆきなさい、そこに復活した邪悪な魔王がいるはず!見事打ち倒しなさい!」
俺たちは、録画をしに、ダンジョンに入った。
「くくく、俺は、最後の魔王だ!よくきたな。」
「パワーアップした私の力を見よ!勇者スラッシュ!」
「くくく、きかぬわ!」
「ふ、では、なぜ、血が出ているのか。」
「この魔王が、高貴な血を流すだと!くそー!この国ごと破壊してくれん!」
「ち、勇者スラッシュアルティメット!」
「ぐぎゃー!」
アホくさい芝居が行われております。ただ一つ今までと違ったのは、勇者が、完全にマジだということです。
「悪は滅びた!」
すると、るーたんが現れた。
「よくやりました。エライジャよ。」
「あ、か、神様、イ、イライザです。」
「しま・・・・あ、今日から、魔王を倒したあなたには、真名を授けますのん。それが、エライジャですのん!さあ、エライジャよ、猫カフェに今一度赴くのん!」
俺たちは、金メダルと、契約書を用意した。
金メダルをかけると、イライザ、改めエライジャは、感極まって泣き出した。うーん。
「じゃ、ここにサインをお願いします。」
「す、すまないが、字が読めないんだ。」
「お、ラッキ・・・・じゃなくて、じゃ、ここにバッテンして。」
「これはなんと書かれておるのか?」
「あ、記録映像の契約・・・・・あ、今回の報酬についての取り決めだよ。テヘ!」
「おおう、そんなものまでもらえるのか。」
「それから、有名になったんだから、ダンジョンで時々、働いてもらうよ、もちろん、お金は出るよ。」
というわけで、俺は記録映像の権利と、ダンジョンのスタッフを手に入れたのだった!どうやら、コシチのことが気に入ったようなので、そちらで住み込みにした。実は、結構料理がうまいので、コシチも随分、栄養バランスが取れた食事を食べ、いい生活ができているようだ。よかった!
暑いですね。寝苦しいです。とほほです。コメント、ブックマークありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。