スーザン博士の自動馬車
亀です。更新が遅くて申し訳ありません。今回も、短めです。
「スミス殿、これ、なんですか?」
俺は、完全に答えがわかっていたが、激しい頭痛と戦いながら聞いてみた。嫌な予感がする。
「こ、これ、自動馬車なんだなー。」
うん、そうだよな。そうだよな、アウトー!ってちょっと待てー!
「で、ここを押すと、自動追尾の飛翔体が飛び出すんだな。そして、これが、光学兵器なんだな。」
えーと、つっこみどころ満載だ。なんなんだ、これ!
「これが、自爆装置で、これが、脱出装置なんだな。」
ちょっと待ったー!!!なんだ、このイギリスのスパイが使っていそうな車は!
「え、えーと、スミス殿、これ、誰が依頼されたのですか。」
「うん、それが・・・・・・・。」
スーザン博士、いやさスーザン、お前泣かす!
どうも1週間前にスーザン博士がスミス殿を訪ねて、自動馬車のコンセプトを教えたそうだ。それで、スミス殿が作ったのだが、こんな田舎に、自動車などいらぬ!危なくてしょうがないぞ。道路も、そんなに舗装されていないし。馬車だって、ほとんど王侯貴族以外は、徒歩か、足での移動だ。どうしても仕方がない時は乗合馬車だし・・・・・・。
それになんで兵器がてんこ盛りなんだよ!おかしいだろ!
俺は、息急き切ってスーザン博士の部屋に駆けずり込んだ。
「おいおい、スーザン博士、一体なんだって、こんなものの制作を頼んだの?」
「あ、いやー。バレちゃった。ちょっとここらへんの土壌のサンプルなんかを手に入れようかと思って。バカーンとミサイルで大穴開けてさ、多分、きーもちいーよ!」
はぁ?何を言っているんだ、この人は?アホかとバカかと。
「まあ、百歩譲って、自動馬車はいいとしましょう。」
「あ、いいんだ。」
「百歩譲ってですよ、百歩譲ってですってば!でねえ、こんな馬車、誰が持ってるんですか。みんな欲しがって奪いにきますって。」
「そのための兵器です!」
「やっぱりかー!!!」
というわけで、御者を座らせることにした。前に馬がいないのでシュールだということで、作りものの馬をもたせた。ラムダが、たずなっぽい鉄のパイプですごい力で持ち上げているのだ。ちょっとだけ浮いているよ。
えーと、でもだな。ちょうど、ラムダが暇だったので、座ってもらったら、なぜかあほのへっぽこ丸も付いてきた。何がラムダお兄様とデートだ、けっ!
「で、なんで、お前らまで、ここにいるんだ。」
「私は、へっぽこ丸の監視役です!」
ケチャが薄い胸をえへんと突き出して、答える。あーあー、そうですか、そうですか。
「で、シェール、お前はなんで付いてきてるんだ。」
「ケチャの監視です。」
うん、そうだと思ったよ。つまり、この自動馬車、偽物の重い馬<いらない>を御する、御者の振りのラムダがいて<やはりいらない>、その付き添いのへっぽこ丸がいて<これまたいらない>、その監視役のケチャがいて<やっぱりいらない>、そのまた監視役のシェールがいる<全然いらない>となっているわけか。とんでもない無駄の入れ子構造、無駄の連鎖になっているわけだな。アホか!俺は頭を抱えた。抱えたって言っても傍にデュラハンみたいに抱えたわけじゃないんで、そこんとこヨロシク!
ま、いいか。俺たちは、過ぎ行く景色を楽しむはずだった。だったのだが・・・・・・・。
「えーと今、何キロぐらい出てんのかな?」
「さぁー?」
スーザン博士が首を可愛らしくかしげる。そんなポーズとっても誤魔化されんぞ。今、歩行者に抜かれたぞ!ちょっとまで、杖をついたおばあさんにまで抜かれたぞ。これ、すごく遅くないか!
どうやら、定員オーバーだったようです。だいたい作りものの馬とラムダの重量がすごいのに、俺たちまで乗ったもんで、遅くなったようです。でも、実は、2人だけ乗った状態で走らせてみたのですが、これでも、自転車の方が微妙に早いような気がします。えーと、これだったら誰も羨ましいとか欲しいとは思わないでしょう。だって、歩くのと大差ないんですから・・・・・・。
その日から、スーザン博士の亀のろ馬車は、ちょびっと有名になったそうです。アホか!
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