タクトの憂鬱
亀です。暑い中、いかがお過ごしでしょうか。更新速度、またぐっと遅くなりそうです。すみません。
「ダ・ダァー。」
「ガブちゃん、風邪?」
「ダァー・ダ。」
なんだか、だるそうにしている。神様でも風邪引くもんなのか?俺は不安になって、ヘーちゃん様に聞いてみた。
「あ、それ、風邪っていうかさ、多分、成長するための熱が出てるのよ。心配ないわよ。」
「は、はぁ。」
「心配しなさんな。すぐよくなるから。」
まあじゃあ、大丈夫か。今日は月に1回のアンのコンサートだからガブちゃんに頑張ってもらわないと困るんだよな。
「ガブちゃん、どうも、風邪じゃないみたいだよ。大丈夫?」
「ダァ・・・・・。」
というわけで俺は早速アンを呼びに行った。すると、なぜか、いそいそとネズミバージョンのチュウ太郎を肩に乗せてアンが現れた。相変わらず仲がいい。俺は、ちょっとチュウ太郎のモフモフをアンに奪われて寂しいが、のぞみちゃんもいるからいいか。
「じゃ、ガブちゃん!お願い。」
「ダ・・ダ・・・・。」
なんだか力のない返事だったが、俺たちは、別の星に跳んだ。
えーと、ガブちゃん・・・・・・・。どうやら、同じ星のようではあるが、別の場所に跳んじゃったのかな?えらい、田舎なんだけど・・・・・・。
すると、向こうから大勢人があたふたと、やってきた。
「おおおお、こつらで、光が見えたもんで、やってきたんですが、もすかして、あなた方は?」
「神様のつかいですけど、ここ、どの地方です。間違った場所にやってきたらしくて。」
ところが、場所はあっていたのだ。違っていたのは時代だった。ずっと昔に、やってきてしまったようだ。俺たちは途方にくれた。まあ、自己紹介が先か。
「俺はタクトです。こっちはガブちゃん。」
「チュウ太郎です。初めまして。」
「私はアンです。チュウ太郎様の妻です。」
すると、ガブちゃんの熱が上がったのか、赤く光輝き始めた。まずい。
「わるいけど、チュウ太郎、ガブちゃんの熱を抑えてくれ!」
「わかった!!神様!」
「おおお、やはり、この方が神さま!」「ありがたや、ありがたや!」
俺はひれ伏す人々を尻目に、ガブちゃんの熱をとるために、空中から氷を取り出して、ガブちゃんの熱をとった。
どうやら、ガブちゃんの熱が少し抑えられたようだ。しかし、平常の熱からは、まだまだ、ほど遠い熱さだ。うーん、ダメだ。こうなったら、最後の手段だ!
「アン!わるいけど、歌ってくれ!」
俺はポケットから耳栓を取り出してはめた。
そして、アンが歌い出した。すると、ガブちゃんは、衝撃を受けて気絶してしまった。よかった。これで、力の暴走は避けられるはず。
見ると、チュウ太郎は、うっとりと、している。その他の人々はボーっとしている。かわいそうに、直接聞いてしまったか・・・・・・・。気の毒に・・・・・・。
俺は、耳栓を外した。すると、みんな口々に興奮して話し出した。
「なんだか、分からねえども、すごかった・・・・・。」「おら、衝撃受けただよ。」「何だったのか、体っこふるえたぁ」
ゲゲゲ!もしかしたら、俺たちこそが、ここの人たちの感性を捻じ曲げてしまったのは・・・・・。ここが、俺たちが知っている星の過去の姿とすると、このアンのせいで、全ては始まったのか・・・・?今まで音楽なんて聞いたことのない連中が、初めて音楽にふれて、これが最高とか勘違いしたのでは???
みなさん、スミマセン。どうやら、この星の人たちの感性のずれは、俺たちのせいだったようです。というか、アンのせいだな・・・・。
すると芸術家と名乗る男が、出てきて、神の使いたる神獣と、アンの姿を描き始めた。なるほど、こういうわけか。それにしても、そんなに感性が狂ってしまうほどアンの歌声は凄まじいんだな。人間兵器だ・・・・。
俺の姿もうつしたいと請われたが必死で断った。将来神として祭り上げられるのはごめんだ。
「ダ!」
おお、ガブちゃん、目覚めたか。どうやら、熱も下がったようだ。よかったよかった。
「じゃ、皆さん、行きますね。」
「あああ、そのめえに、神獣さまの奥様の歌を聞かせてくだせえ。」
完全に、チュウ太郎が神獣として、アンは、その妻として定着したようだ。
俺たちは仕方なく、7日間、そこにとどまり、アンのコンサートを開いた。請われて、星全体でコンサートを行った。アンは、すごく喜んでいたが、俺とガブちゃんは、アンの歌で疲弊しまくった。やれやれ。
俺たちは、皆に別れを告げた。
「アン様、ありがとうございました!」「神獣様!ありがとうございました。」
みんな口々にアンとチュウ太郎との別れを惜しんだ。
「神様もお元気で。」
絶対とってつけたな。あ、やべ、忘れてた、って顔してたし。まあ。いいか。
俺たちは現代にとんだ。そして、また、アンのコンサートをして、帰って来た。
時間はガブちゃんがうまく調節してくれたので、出た時の時間に帰ってこられたけど・・・・死ぬほど疲れたような気がする。
「では、私たちは、これで!」
アンは、嬉しそうに、チュウ太郎を抱えて帰って行った。ちぇっ!完全にチュウ太郎をモフる権利を奪われたよ。俺はちょっとさみしく2人の後ろ姿を見つめるのだった。
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