あべこべの日
亀です。暑いです。皆様、きちんと水は摂取して、ポケモンをお楽しみください。もちろん、亀はしていません。うちの近くにポケストップなんてありません!うちの中からでも、モンスターボールがもらえるなんて奇跡もないんです!!!
リースとチュウ太郎が仲良く店の前を掃除してくれている。
「かみさまの店、綺麗にしないとねえ。」
「うん、神様の店、きれいきれいしよう!」
この2人は、俺のことを神様と慕ってくれている。いい子たちや。チュウ太郎は、時々、ネズミに似たふわふわ形態に戻るから、癒しにもなるし。
すると後ろから、声がした。
「うなぎよ、お腹減ったから早く作ってくれよ。」
これは、のぞみちゃんだ。やはり俺の癒しだが、口が悪いのが玉に瑕だ。でものぞみちゃん、可愛くてもっふもふだから、嫌いになれないんだよなぁ。
俺は、みんなのために朝ごはんを準備した。今日は、庭で育てている根菜のサラダと焼きたてのパン、そして、果物のスライスだ。パンに挟んでもよし、根菜サラダに入れてもよしの絶品だ。これならベジタリアンのスーザン博士も大満足だろう。
俺は、テーブルに朝ごはんを並べると、アイカが女神さまとスーザン博士に持って行ってくれる分をトレイにきちんと置いた。アイカも相変わらず、ヘーちゃん様にパシられてるよな。
朝ごはんを終えて、冒険者飯を作り終わった俺は、ランちゃんとケチャに全てを託した。アンをあべこべの星へ今日は連れて行ってコンサートを行う日なのだ。
その星は、信じられないことに、アンがまるで女神のように崇められているのだ。というのも、その星の価値観が、俺たちと相当ずれていたからだ。
この星をどうにかしてくれというコレーちゃん様のたっての願いで、俺はなんとかしようと思った次第だ。そうでなくてもコレーちゃん様には色々お世話になったので、なんとか、借りをお返ししたいと思ったのだ。
その星の連中は、相当エンタメに飢えていた。なんだ、その星の神様であるコレーちゃん様に頼んだら、すごいエンタメが味わえるよ、といったら、ぶるぶる震えて、それだけは勘弁ときたもんだ。やっぱり、感性があべこべでも受け入れられないものはあるんだなとしみじみ実感した。
そこで、俺はオペラ歌手のミリカに頼んで、歌ってもらったら、10分もたたないうちに、涙を流しながら耳を押さえて、やめてほしいと訴えた。
「ご、ごんな、ひでえ歌聞きたくないだよ。」「おらだぢを殺す気け!」
ぷんぷん怒るミリカを宥めて、俺は、コレーちゃん様からこの星の人たちの感性がほとんど俺たちと真逆であることを告げられたのだ。というわけで、やることといったら、アンをリクルートすることだった。
するとどうだろう。聴衆たちは涙を流して、アンを崇め奉ったのだ。
「ああ、なんとすんばらしい歌だべ!顔はイマイチだけど。」「すんばらしい、たますいが洗われるようだんべ。顔はまんずいけどなぁ。」「ああ、美しい声だぁ〜。まあびずんとはほど遠いけんど。」
というわけで、アンのチケットは売り出されると争奪戦が起こるほどだ。本当に、これだけ売れていたら、向こうに移住したくなるもんだろうが、いつも、歌を褒められて、顔をくさされるので、アンもイマイチ、移住まではしたくないようで、俺がこうして、時々、アンを連れて行ってコンサートを行っているのだ。
とことことこ、と人バージョンのチュウ太郎がやってきた。
「神様、ぼくも、ついていっていい?」
可愛く上目遣いで俺を見る。うーん、かわええのう。最近、こいつはなぜかアンのコンサートにはまっているようだ。
「いいよ!じゃ、しっかりつかまって!じゃ、ガブちゃん、お願い。」
「ダダ!」
俺たちは跳躍した。
コンサートは今日も大入り満員だ。売り上げはコレーちゃん様と折半で、もらっているが、それでも、1回のコンサートで、普通の冒険者の1年分の収入が得られる。まあ、アンに渡したお金のほとんどが、俺たちのフィギュアと猫カフェに還元されているので、俺たちも嬉しいけど・・・・・。アン、俺が言うのもなんだが、お金は貯めておいたほうがいいと思う・・・・・。
さあ、コンサートの始まりだ。俺は音を完全に遮断してくれる音漏れなしくん4号を耳にはめた。
「ダ・ダァ・・・・・・」
ガブちゃんもしっかり、音漏れなしくん4号ミニを耳にしっかりはめた。前のマイクロバージョンでは音漏れが少しあったらしく、コンサートの終わりに、ガブちゃんが、ひくひく痙攣していたのは内緒だ。
俺は、音漏れなしくん4号ミニをチュウ太郎にも差し出したが、頭を振られた。こいつの感性も、もしかしたら、ここの住人に近いのかな?
そして、コンサートが始まった。もしこれが、俺たちの星でのコンサートだったら、阿鼻叫喚、死屍累々だろう。しかし、ここでは、みんな感謝感激、雨あられ、感涙、感動の嵐である。信じられない。
なぜか、チュウ太郎も涙を浮かべている。わからん・・・・・・。
アンコールが終わって、コンサートが終了してやっと俺は、耳栓を外した。苦行である。
音を完全に遮断するはずなのに、少し体がダメージを受けているのは秘密だ。恐るべしアン。人間兵器だぞ、アン!
楽屋に行くと、そこは花で埋め尽くされていた。
じゃ、帰るか、俺が声をかけると同時に、ノックの音がした。
そこには、中肉中背、普通の顔をした、男が立っていた。しかし、きらびやかな服を着ている。これは、確か、ここの国の第1王子ではなかったかな?
「アンどの、私はあなたに結婚を申し込みます!」
「えーと、決闘ですか?」
俺は、思わず声を出してしまった。
「そうそう、親の仇を・・・・違う!結婚である!この国の未来の王妃として、アンどのを迎え入れたい!」
するとひそひそとお付きの人たちが小声で話しているのが聞こえた。
「あー、やっちゃったよ。」「王子様、普通の容姿なのに、なぜか、ゲテもの好きだからなあ。」「王子様の変顔好きにも困ったものだ。」「アンさまは、声はお美しいが、お顔が・・・・・。」
アンも酷い言われようだ。彼女の名誉のために言うけど、アンも相当綺麗な女性だ。多分、そこがいけないんだよな。なんたって、ここの人たち、感性があべこべだから。でもさ、王子の普通の顔はここでも普通なんだな。そう考えると面白いものがあるよな。
「すみません。王子様、お気持ちは嬉しいのですが、私は、この方が好きなのです。」
王子は何を思ったか俺を見て叫んだ。
「確かに、この人もハンサムだ!しかし、私のほうがイケメンだぞ。」
「違います、私の思い人は、この方です。」
そして、アンは、なんとチュウ太郎を指差した。なんと、お前ら、そういうことだったのか。できていたのか!なんてこった、パンナコッタ!
「うーむ、この子だったら、私のほうが、イケてるぞ!」
その言い方が既にイケていないと思います。王子様。俺はこころの中で突っ込んだ。
「違うのです。このお方は・・・・チュウ太郎さま、お願いします。」
するとぽんと、チュウ太郎は、もふもふネズミにちょっと似たフォームに変身した。
「この方は私の歌が好きなだけではなく、このようにもっふもふなのです。」
すると、王子も周りの付き人も驚いたように、ささやいた。
「こ、これは、神獣さま!」「っ、神獣さまだ!」「神獣さまが現れた!!」
なぜか、チュウ太郎は人々にうやうやしくかしづかれた。どゆこと?
どうやら、この星の伝説で、もふもふのネズミのような生き物がレリーフに彫られているようだ。
その時、はっと付き人の一人が、アンを指差して叫んだ!
「あああ、神獣さまの奥様のオカチメンコ!」
「だれがオカチメンコじゃ、こら!」
アンが激昂する。しかし、どうやら、言いたいことはそうではないらしい。
すると、付き人の一人が、写しをもっていたらしく、レリーフのモチーフを見せてくれた。
確かに神獣の隣にアンが佇んでいる。だれがどう見てもアンだ。
「私たちは、この芸術家の腕が悪いから、奥様がオカチメンコに描かれていると思っていたのですが、実物がそんざいしたなんて・・・・」「芸術家の腕がわるいんじゃなかったんだ。実物が悪かったんだ。」
酷い言われよう。アンはカンカンになって、もう帰る!と泣いて叫んだ。
なんだかんだで、帰って来た。アンを一生懸命チュウ太郎が慰めている。なぜか、もふもふをやめないアン。シュールだ。まあ、いいか。こいつらを夫婦にしても。どうやら、アンの酷い歌に耐えられる初めての男だしなぁ。俺はそう思って、庭に出ると、ハンモックに身を任せた。
「ダァー。」
ガブちゃんも疲れたようだ。
よしよし、俺はガブちゃんを抱いて星を見上げた。気がつくと、ミリカが俺とガブちゃんを撫でていてくれた。肌寒くなってきた秋の夜のことだった。
チュパランドのお姉さんの服装をしている子供を見かけました。イベントがあったのでしょうか?
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