表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/290

夏の夜の夢

おとぎ話って好きですか?

王子様は、長い苦難の道を乗り越えて、魔王がいる城にたどり着きました。その途中で幹部との戦闘で、同じ志を持っていた戦士が倒れました。戦士は、国に残してきた王子様の妹の婚約者でした。最後に、屈強な戦士は、涙を一粒流しました。その涙が地面に達した時、奇跡が起きました。それまで、光を失っていた聖剣が光り輝き始めました。


真実の愛、それこそが、聖剣を光り輝かせる最後の秘密だったのです。光輝く、聖剣を手に、勇者は、皆に戦士の復讐を誓いました。戦士と勇者様は、親友だったのです。勇者様に対する憧れを隠さない王子様と違い、戦士はいつも勇者様をライバルとして競い合っていたのです。しかし実は二人の間には強い絆がいつの間にか生まれていたのです。


次に倒れたのは、思慮深く、皆を励まし、ここまで導いて来た賢者様でした。賢者様は、王国一の召喚士ガウラン様でした。ガウラン様は、勇者を召喚し、国を守ってきた最大の功労者であり、最高の英雄でした。ガウラン様は、にっこり微笑むと、皆に国の未来を託しました。


「って、死んでねえじゃん!」

「タクトうるさい、今、いいとこなんだから黙りなさい!」


と、サーシャ。なんだ、この謎の紙芝居。しかし、みんなは、食いついて離れない。


「す、素晴らしいです、ガウラン様〜」


感激で泣いているのは、タール爺さんだ。こう見えても王立筆頭召喚士らしい。まあ、俺の方がレベルは高いけどね。それを言ったら、ガウラン様より、レベルは高い。多分人類最強。


「わし、すごいのう、すごいのう、かわいそうじゃ、死んじゃって、わし!」

ガウラン様、だからあんた死んでいないってば!しかし、インキチ紙芝居ここに極まれり、だよな。


そして、なんということでしょう。


こっちを睨みながらサーシャは紙芝居を読み続ける。


次に倒れたのは、なんと、人類最後の希望であった、勇者様でした。勇者様は、聖女様をかばって倒れたのです。普段の勇者様でしたら、簡単に避けられた幹部最大の攻撃、自分の命と相手の命を共に滅する禁忌魔法、道連れだったのです。勇者様は、実は、王子様の婚約者の聖女様のことを深く愛していたのです。報われない愛とは知りながら勇者様は、愛し続けることをやめることができなかったのです。勇者様は、微笑みながら逝きました。


「ふぉーなんてことじゃ、これこそ漢の中の漢!勇者様!!!!」


筋肉ダルマ、うるせい!自重しろ!


そして、なんということでしょう。聖女様も、王子様をかばって倒れられたのです。にっこりと王子様の腕の中で微笑むと、王子様の涙を拭われました。頼みます、あなたならできます。自分を信じて。そう一言残して聖女様も逝かれました。90年の短い生涯でした。


「って、一言じゃねーじゃん。それになんだよ、90歳の若い生涯って。怖いわ!」

「うるさいわね、タクト、聖女様は、エルフなの。エルフの90歳って人間の15歳程度なの!」


おお、怖、みんなも俺を睨むなよ。追い出すぞ!


聖女様を失った王子様には一片の力も残ってはおりませんでした。しかし、国の人々を守る王族としての強い誇りと義務が、王子様の足を前に前にと進めたのです。ただ、実は、王子様の心には、後悔とやましさがあったのです。なぜなら、聖女様は、もともと、亡き兄の婚約者でしたし、聖女様が、自分を慕ってくれていた気持ちは、弟に対するもので、その愛は兄に永遠に捧げられたとしっていたからです。


えーと、こういうドロドロした昼ドラ情報、子供も見る紙芝居に必要ですか?


ついに王子様は、魔王様の前に立ちました。王子様は、魔王、ここで会ったが100年目!今こそ兄の仇を討とうと叫ばれました。そうです。実は、王になるべく教育を受けられていた兄のクリフォードは、魔王の卑劣な奸計によって亡き者にされていたのです。


なんだ、その巨大な赤い犬みたいな名前は。


あの出来損ないの幹部どもにしては上手くやったの。ついに、勇者までも倒してくれるとは。ククク、返り討ちにしてくれるわ!!

魔王は、緋色の目を更に輝かせて剣を構えました。今こそ、父上の仇をとってやる、と言いながら。


「ほぁ?なんか、変な話キター!どういうこと???」

「うるさいわね。王子様のお父さんの王様が、先代勇者で魔王を討ったっていうことよ!」


冷たい目をして、部下すらも道具と割り切るその冷酷さ、非情さに王子は身震いしました。父上は、人間との共存を望まれていた、そして、そのための話し合いで誰も連れずに行った父を串刺しにしてだまし討ちにしたお前らを私たちは許せない!


「うわーん、可哀想なお姫様じゃ!」


ケイトが泣き出した。待て待て、どこに泣ける要素があったんだ????


二人は激しく斬り結びました。そして、その戦いは三日三晩に渡って行われました。

地は裂け、大地は荒廃しました。そして、二人の体には、もう一撃の力も残ってはいませんでした。


すげえな。おい。そんなに戦えるか?


王子様は、知っていました。もう次の一撃が最後であると。王子様は、初めて神に祈りました。すると、聖剣が再び光り輝きました。


魔王もまた、知っていました。彼女の体の中には、もはや、一撃も加える力も残っていないと、そして、彼女も邪神に祈りました。


すると、空から、女神と邪神が降臨しました。


さあ、王子、あたしの仇をとってくれ!あたしのことをバカにした旦那に目にものみせておくれ!!女神様が叫びました。何をいうてけつかる。おい、魔王、ちゃっちゃとこのくされ尼に、わしの方が正しいことをおしえてやんな!


なんと、この戦いは、二人の夫婦喧嘩の延長だったという驚きの事実がわかりました。そのとばっちりを人間と魔族は受けていたということがわかり、二人は全てが嫌になりました。そして、二人は手に手を取り、逃げ出しました。二人は結婚して、新しい国ができました。これが私たちのすんでいる国の始まりです。


「うおーん、素晴らしい!」「ブラボーですのん!」「泣ける!」「うおおおん、猫ちゃんかわいい!」


猫カフェで皆が一斉に叫びだしちゃったよ。うるさい!しかしこの与太話のどこに泣ける要素があったんだ????


「さ、寝よう」


俺は定位置の庭のハンモックに身を投げた。ぐぅ〜。


その夜、ベッドで横になっているとコタローが話しかけてきた。


「タクちゃま、タクちゃまは、戦いに出てしなないでくださいね。」

「でるわけないじゃん、だいたい、もう戦争なんてないし、そんなこと面倒だし」

「タクちゃま、でもタクちゃまは変なところで責任感が強いんにゃから、嫌なことに巻こまれないでくださいネ。」

「はいはい。ささ、寝よ、寝よ。」


それを聞いていた、ミケがコタローをそっと撫でるのを見ながら眠りにつきました。涼しい夏の終わりの夜のことでした。

寝ることが何より好きです。ぐぅ〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ