サーシャとの別れ
別れは突然に訪れるものです。亀です。短めですが、すみません。
その日、俺は、寝つけなかった。秋だというのに、ちょっと寝苦しい暑い夜だったので、俺は夜中に抜け出して、ハンモックの置いてある場所に行った。もしかしたら、何かの予感があったのかもしれない。
星がキラキラと瞬いている。美しい夜空だ。月が綺麗だ。
すると、すでにそこに先客がいた。いつもは、ひっつめている銀の髪を下ろして、月明かりに髪がキラキラと反射している。サーシャだ。この状態のサーシャは本当に美しい。ミリカにだって負けていないと思う。
俺が見とれていると、サーシャが振り返って微笑んだ。
「タクト、あんたも、感じたのね。」
その瞬間、俺は悟った。そうだった。こんな日だったな。サーシャとの最初の別れは。
「私としては、もっと普通のやり方がいいんだけど・・・・・」
俺たちは、両手を合わせた。力が高まっていく。そして光がどんどん集まっていく。
そして、その光が収斂し収まった時、赤ちゃんが微笑んでいた。俺が手を出すと、ガブっと咬まれた。
「ガブちゃん。この子を生み出すために、あなたも私も存在していたのかもしれない。」
「俺も、それは感じたよ。」
俺たちは黙って見つめあった。気が付いたら、二人とも涙を流していた。しかし、これは、新しい始まりなのだ。サーシャは、これから、長い長い仕事が待っているのだ。この世界を崩壊から食い止めるという長い仕事が・・・・。
「じゃ、黙っていくけど、みんなによろしく。」
「たまには、帰って来なよ。」
「悪いけど、うさカフェは、アンに任せるから。あと、みんなの召喚も引き継いでね。ま、あんたが引き受けたら、すぐ神さまになっちゃうかもしれないけど・・・・・」
最後の方は、声が小さくなって、よく聞こえなかった。サーシャは、一瞬眩しく輝き、そして、消えた。
サーシャが光り輝いて消えると、あとに、優しい光が残された。その光が、ガブちゃんの上にそっと止まった。ガブちゃんが、その光に手を伸ばすとその光は、ガブちゃんの上に暫し止まって消えた。
俺がガブちゃんを撫でようとすると、俺の指にガブガブ噛みついてくる。うーん。
「行っちゃったねえ。」
後ろを見るとランちゃんが涙ぐんでいた。俺はランちゃんの頭をくしゃっとしてガブちゃんを預けた。そっと大切そうにランちゃんがガブちゃんを抱く。ガブちゃんが笑うと、なぜか、ミケとるーたんの赤ちゃんも空を飛んできて、ガブちゃんを誘った。何か二人にも予感があったのだろうか。すると、ガブちゃんも最初はおずおずと、少ししてから自信を持って空を飛び始めた。
「なんだか、天使みたいだね。」
「ま、ある意味、天使だからね。」
俺は3人が楽しく空を舞っているのを眺めながら言った。
「えーと、私が店長になるっていうことは、もう二度と、この猫カフェに戻って働けないということじゃないですか!却下です!」
うーん、困った。翌日アンに店長就任を頼んだら、けんもほろろに断られてしまった。
「ま、店長代理ならやってみてもいいですけど・・・・」
「わかったよ。それで頼む。」
「そうじゃないと、もう二度と会えないような気がするんですよ。」
「あ、それはないない。大丈夫だよ。」
「そうですかねえ。」
アンも寂しそうだ。俺は、ぽん、とアンの頭を叩いた。そして言った。
「まあ、いつか帰ってくるさ、その時まで、店、預かっておいてくれよな。」
「う、ば、ばい・・・・・・」
アンも泣いている。結構慕われていたんだな。
俺は、空を見つめた。空はどこまでも高く秋が深く俺たちを包み込んでいる。そんな秋の暖かい日のことだった。
いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。