パイの午後
亀です。いつもありがとうございます。
俺は変化を肌で感じていた。折しも夏が終わり肌寒い日が近づいている。なんだか、これから黄昏の時代になりそうで、ちょっと寂しい。
「おーい、タクトさーん、あそぼー!」「タクトくーん。遊びたいー!」「あにきー!」
外から子供達の声がする。
「もう、店長は忙しいんだからまた、今度ね。」
「ランちゃーん、この間もそういったじゃんか!」「タクトくんどこー!」「あそぼー!」
ランちゃんがいつものごとく追い払っている。うーん。俺は久しぶりに顔を出すことにした。
「おー、みんな元気?」
「タクトさん!」「タクトくん!」「あにき!」「おひさー!」
「もー店長ったら!せっかく私が追い払おうとしてんのに!」
「へへー!そうは行くかってんだ。」「タクトくーん、あそぼー!」「ランちゃん、悪妻!」
ランちゃん、俺が出てきて自分の努力が無駄になって、ちょっとおかんむり、すまぬ。
俺は、みんなに、いつもの冒険者飯をあげた。
「タクトさん、いつもすまねえ。」「タクトくーん。ありがと!」「あにき、かたじけねえ!」
「今日、遊べないんだ。でもさ、悪いんだけど、お使い頼まれてくれないかな。」
「もちろん!」「何?」「合点承知の助だ!」
「街のあちこちにある栗の実が落ちてるのを悪いけど、拾ってきてくれない?」
「わかった!」「いいわ!」「行くよ!」
みんなは、わーっと走って行った。結局やることさえあれば、遊びなんて、なんでもいいんだよな。
俺は、ランちゃんの頭をぽんぽんすると中に入った。よし、こっちは準備するか。
俺は丁寧に、粉をこねて、適度に水を加えながらまとめた。発酵させるために、丸めて、少し放置だ。
その間に、トッピングを作る。今回は、フルーツに砂糖をまぶしたものにしよう。
作業をしていると、サーシャが今度は何を作るの、何を作るの、といったように覗きにくる。その後ろにミリカも見える。無関心を装っているが絶対興味深々だ。シェールまで落ち着きがない。ケチャに至っては、包丁を構えてこちらを見ている。怖いわ!
「みんな、そこで見られると落ち着かないから、こっちにきて座って、座って!」
俺はみんなを座らせて、コーヒーを入れてやった。そして、この間焼いたクッキーを出してやった。これで間をつなぐといいわ!ふははははは。
「かみさまー。手伝わせて〜。」
「リース、座ってな。みんなも、もうすぐ、頼みたいことが出てくるから、それまで、ちょっと待っててな。」
もうちゃっちゃっと終わらせるから。アリーもアイカも落ち着かないようでムズムズ体を揺らしている。
「タクトさん、とってきたよ!」「きたよー!」「たくさんあるよ、あにき!」
よし、きた。
「ごくろうさま。手伝って行ってくれたら、美味しいもの食べさすぞ!」
「ほ、ほんとう?」「もちろん、もちろん!」「やるぞー!」
「じゃ、ここのみんなと一緒に手伝ってね。あ、その前に、これ飲んで。」
冷たいジュースをだして、喉をうるわせてやる。
「さ、みんな、手袋して、この木槌で、栗を割って、中を取り出して!それが終わったら、栗むきだよ!」
あっという間に栗剥きが終わった。人数がいると楽だな。
俺は半分を栗パイ用に、そして、半分を今晩の栗ご飯用に取り分けた。
俺は、できていた生地に、上手に栗を練りこんで形にしていく。そして、型に入れたら、上にトッピングをして、オーブンに入れる。あとは待つだけだ。
待っている間、みんなでコーヒーとクッキーとおしゃべりを楽しんだ。最近、近所の子供たちと話していなかったから色々なことを知った。俺の大切なゴシップの入手先の一つだ。まあ、たわいもないゴシップだけどね。
俺は、楽しく、誰それが結婚しそうだ、とか、今年は豊作になりそうだから、今から祭りが楽しみだとか、色々な話を聞く。みんなも興味があるようで、質問も出る。
そんなことをしている間に、パイが焼きあがる。サックサクだ。3つ大きなパイを焼いたから、1つだけここで食べよう。
パイを切り分ける。たくさんあるから、2つずつは食べられるな。
みんなよだれダラダラだ。匂いに惹かれて、大人バージョンるーたんとポチも登場だ。
「うーん、いい匂いなん!」
女神様たちにはあとで持っていかなくちゃな。
まったりした、午後がこうやって過ぎていく。
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