イーダの日
亀です。暑いですね。いかがお過ごしですか。ちょっと短めです。
時間は一方向だけに流れるものではなく、様々な方向に拡散していく。それはわかっていたのだが・・・・。
えーと、ちょっと待ってください?俺が移動したら、全く見覚えのない場所だった。あれ?ここはどこだ?俺は愕然とした。なぜなら、目の前には巨大なコンクリートの施設があったのだ。
「あ、あ、あ、あ!」
後ろから声がした。そして、よほど驚いたのだろう。手に持っていたバケツを落とした。
「あ、こ、こんにちは。驚かせるつもりはなかったんです。俺、タクトって言います。どうも。ここどこですか?」
若い女性は、まだ呆然としている。
「こ、この世界に生き残っている人はもう私だけだと思っていた。ああああ、わたし、わたし・・・・・・」
そして、さめざめと泣き始めた。
ちょっと落ち着いたのか、10分ほど泣き続けて、女性は話し出した。
「わ、わたし、イーダ。この間まで、と、隣の大陸に1人残っていたのは知っていたの。でも、その人も死んでしまって・・・・・・。残ったのは、母と私だけだったの。でも、この間、母も死んでしまって・・・・・。」
俺は情報が少なすぎるため、聞き手に回ることにした。
どうやら、この世界は死にゆく世界らしい。ある日、謎の病気が蔓延し、ほとんどすべての人間が死に絶えてしまったようだ。たまたま、世界に、抵抗があった全世界で100人程度が生き残っていたらしいのだが、30年の間に次から次へと人々は消え、そして、最後に2人だけとなってしまったようだ。
困ったことに、男性が、この病気に罹患しやすく、また、抵抗性もないということで、男性は、100人程度の中に4人しかおらず、2人は老人ということだったらしい。イーダの父親は、若者の1人だったが、10年前に亡くなってしまったらしい。その後、残りの1人も死んでからは、人類が滅びる運命が決まってしまった、そう皆が考えて、滅びが加速したのではないかと、イーダの母親は考えていたらしい。
男性の最後が死んで、人類の黄昏に終焉がきた世界だったらしい。しかし。困ったな。
「で、でも。あなたはどこにいたの?男の人が生き残っていたなんて、き、きいたことがなかったから。」
「うーん、実はちょっと旅をしていたから誰も俺のことを知らなかったんじゃあないかな。」
「で、でも、これで、き、希望がでたわ!これで、人類は、再び、私たちから、始まるのよ。」
そういうと、イーダは俺のことをジロジロ見た。
「悪いんだけど、タクトは、何歳なの?」
「12歳だ。」
「私は16歳だから、そんなに違いないわね。よかった。」
「えーと・・・・」
「結婚するのに、あんまり歳が違っても・・・・・」
「えーと、あー、大変言いにくいんだけど、ちょっとしたら、また、旅にでなくちゃ・・・・」
「うん、いいわよ。もちろん、わたしもついていくわ!当然でしょ!最初の男と女なんだから!」
「えーと・・・・・・。」
俺は、神がどこかにいないか必死に探ったが、どうやら、この世界は神がいない世界だったらしい。アテナ様とアルテミス様たちは、正しかった。世界の数に比べて、神様は、全然足りていないようだ。うーん。
「まあ、旅に出るって言っても、まだ少し先だよ。とりあえずちょっとこの辺のことが知りたいし。」
「わかった、じゃ、ちょっと私たちの家を案内するわね。」
巨大なコンクリートの建物は、しかし、老朽化が進んでいた。
「かなりボロボロだね。」
「仕方がないわ。もうこの世界には私しかいないし、私もどうやって直すのかわかっていないから。」
「そ、そうだね。で、食料はどうしているんだい。」
「自給自足。野菜は育てているし、この近くで魚を釣ったりして生活してるの。」
「そうか、じゃ、今日は俺がごちそうしようか。」
俺は取り寄せで、食事を出した。最低限のラインの食料だったが、ごちそうだったらしく、驚きながらもぺろっと食べた。
「あなた、す、すごいわね。こ、こんなに素晴らしい食事、母が死んでからは・・・・」
イーダは涙ぐんでいる。少ししてから、イーダは、俺の隣に座った。
「じゃ、そろそろ始めましょうか。」
「へ?何を?」
「人類を再び増やさないと。」
「え、えーと。ちょっとタンマ!とりあえず、今日はちょっとそんな気分じゃないから、もっと話し合わないかい?」
イーダは、不満そうな顔をしていたが、しぶしぶ同意した。そして、いろいろなことを話し合った。
次の日、食事をしてから、俺は伸びをした。どうやら、力が溜まったらしい。
「イーダ。驚かないで聞いてほしい。俺はもともとこの世界の人間じゃないんだよ。俺は神の使いなんだ。俺たちは、この世界に神を増やすために頑張っているんだ。この世界には神様がいなかった。だからこんなことになってしまったんだよ。」
イーダは、呆然と俺が言ったことを聞いた。
「それで、君をここに一人で残してはおけない。俺たちの世界に連れて行ってあげる。そこには、神様もいれば、人類も山のようにいる。だから、じっくり、そこで、自分のパートナーを決めるんだ。」
俺はイーダの手を握って跳躍した。もう夕方だった。
イーダは、たくさんの建物を見て、氷ついている。
「ここが俺の家だよ。さあ、入って入って!」
「店長、おかえ・・・・・・・・えーまた女性を連れてきたんですか!」
シェールが大声で叫ぶ。その声にびっくりして、イーダは俺の後ろに隠れた。
「タクト!あんたまた、女をたらしてきたの?」
みんながワラワラと集まってくる。こんな数の人を見たことがないイーダは恐ろしがってますます俺の後ろに隠れてしがみついている。震えがこちらまで伝わって来る。
「みんな、何か勘違いをしているようだけど俺は、この子を保護したんだよ。」
「はあ?どういうこと?どんな言い訳よ、それ!」
俺は、今までの話をした。ミリカは、そっと目頭を押さえた。サーシャの目も潤んでいる。
「こわかったですわね。でも大丈夫ですわ。この世界には、大勢の男性がいますので、そこから、いい殿方を選べばよろしいですわ!わたしの愛しのご主人様も助けてくださるでしょうし。」
「妾もお主のためにいい男性を探してやろう!妾の愛しの旦那様のたっての願いだしな。」
なぜか、二人とも微笑みながら、目を合わせている。目が笑っていない。それに気がついて、イーダはますます怯えている。
「店長は、ボクの愛しの結婚相手だよー!」「ランちゃんのだってば!」「かみさまは、リースのものです!」「アイカのものだってば!」「ちがう!アリーのものなの!」
その時、包丁を持ったケチャが入ってきた。
「何言ってるの!私のものなんだからーっ!」
どうでもいいから包丁を置け、ケチャ。完全にイーダが怯えているぞ!すると、ケイトもやってきた!
「もちろん、わたしも妻だ!」
お前、話をややこしくするな!イーダがおずおずと話し出す。
「素敵。うちの家みたい!」
「はあ?」
どうやら、イーダの家もイーダの父親1人に大勢の女性が妻として存在していたらしい。しかし、残念なことに、生まれたのは、イーダだけだったらしい。
「わたしも、妻になりたい!」
イーダがいう。
「ちょっと待って。何もわざわざタクトを選ばなくてもちがう旦那を選べば、独占できるわ!考え直して!」
というわけで、なぜか、妻見習いがうちに見習いとしてやってきた。なんなんだ?
いつもお越しいただき申し訳ありません。これからもよろしくお願いいたします。