勇者散る!
おお、勇者よ!死んでしまうとは情けない。
「な、なによ、こんな誰もいないところにあたしを呼び出して!はっ!だ、だめよ、だめ。嬉しいけど。だめ。まず、お風呂に・・・・」
「サーシャ、困ったことになった。勇者が、ぴょん子さんに懸想をしてる。」
「はあ?あたしに、用じゃないの。バカじゃない、あんた。一回死ね!」
なんだなんだ。ひどい言われようだ!
「賢者がこれを知ったら・・・・・・」
「ああ、もう遅い、そろそろ着く頃よ!」
「はぁああああ???」
「だって面白いじゃん!連絡しておいた!そしたら、一番高い白竜便ですぐ来るって!」
「ア、アホー!なんでそんなことすんだよ!」
「映像化するために決まってるじゃない!」
鬼だ!ここに鬼がいる!!
俺はがっくりと膝をついた。
「お呼びでありますか。山田ぴょん子、ここに参上であります!」
「あー。ぴょん子さん、勇者のことどう思う?」
「はあ?どうか、というのは?まあ、ふつうでしょうか。」
「男としての魅力についてはどう思う?」
「男?あ、そういえば、あれは人間の雄でありましたな。すっかり忘れておりました。」
「悪い。聞いた俺が馬鹿だった。」
「はあ、治るといいですね。その馬鹿。」
俺は打ちのめされた。ぴょん子さん、こえー。
「まあ、あの方は気色わるいですが、仕事ぶりはふつうです。」
「気色悪いって?」
「時々、耳元ではあはあしますし、私に触ろうとしますし。とにかく気持ち悪いです。」
勇者アウトー!!!あいつどんだセクハラ野郎だったよ!
その時、ドカンと巨大な音がした。うわ、初めて見たよ。白竜便。たっかいんだよな。一回白金貨10枚だもんな。絶対使えん。
「あの馬鹿はどこー!!!!」
うわ、あれが聖女の口調かよ!ひどいな。後ろから、商人がへこへこ頭を下げてはいってくる。かわいそうに、こんな奴と仕事していると身がもたんよな。
「おや、どうしたました?白竜便が来たからてっきりお父様たちだと思ったら、聖女様でしたか。」
「こ、これは、王女様、どうしてここに?」
「ほれ、このご主人様に嫁ぐためにちょっと花嫁修行をな。」
「そ、それはおやめになったほうが。タクト殿は、一見無害な男性のように見えますが、一皮むいたら勇者と同じです。」
なぜか、それがつぼったのか、ぴょん子さんが笑い出した。
「サーシャ殿、それでは、これが?」
「そう。あなたの旦那が懸想している相手、山田ぴょん子さん。ご覧の通り変な奴よ!」
「す、すみません。失礼いたしました。山田ぴょん子ともうします。お見知りおきを。」
「どこかで見たことあるわねえ。」
「さ、さあ、そうでしたっけ?」
実際に会っていますけどね。まあ、聖女様、すぐ叩きのめされたんで覚えてないでしょう?
「サーシャ殿、ところで、あの馬鹿は?」
「あ、もうすぐくるわ。」
バタンとドアがあいた。
「ぴょん子さん、なんだい話って、ついに俺の愛を受け入れて・・・・・」
そこまでいって勇者は氷ついた。
「ひどいひどいと思ってはいましたが、あなたは、最低の男です!」
王女様が、きつい口調で叱る。
「え?え?え?」
現状が把握できない勇者ぱにくっている。
「あなたと私の赤ちゃん、どうするつもりなのよ!」
「え????え????け。け、けんじゅわ!??」
おろおろする勇者。
「いや、この離婚、ごっつう、たこうつきまっせ!」
なんだか嬉しそうな商人だ。なぜに大坂弁?恐ろしい。
「お、お、俺は、なあ、め、め、目覚めたんだよ、真実の愛に!」
どでかい声で叫ぶ勇者。
「帰ってきたら、お前と結婚していたが、俺は、全く覚えがないんだよ、結婚の申し込みも、結婚も何もかも!」
「だから、すべてを放り投げるというのか。勇者よ!それでも勇者か!恥を知りなさい!聖女様のお腹の中のおこは、どうするのか!」
厳しい口調で詰問する王女。正論だ。まあ、知らないのは当たり前。俺たちが、でっちあげたんだし。
「もうしわけありません。王女様、私はもう嘘をつくことができません。ぴょん子殿!」
「ふ、ふあい?」
他人事だからと聞いていなかったのに、急に名前をよばれてキョドるぴょん子さん。
「わ、私と結婚してください!」
「えーと、結婚って?」
俺は耳元で囁いた。
「ずっと一緒に住むということだよ!」
なるほど、と納得するぴょん子さん。
「いや。」
「え、ど、どうして?」
「うーん、今が幸せ?それに。」
「そ、それに?」
「私のお腹の中には、もうタクト様の子が〜!!!!」
時間が止まった。王女が泡を吹いて倒れた。
それに続く勇者!
「お、お前なにいっちゃってくれてますか!俺の信用がガタ落ちだよ!」
「いや、サーシャ様が言えって!」
というわけで廃人となってドナドナされていく勇者と王女!
涙目でこっちを見ている。満面の笑みで手を振るぴょん子。鬼か!
ま、これで一件落着!王女もいなくなってラッキー!
と思っていたら、2日後、白竜便で帰ってきた!
「え?どうして?」
「ケチャ殿とアイカ殿が教えてくれたのです!ひどいですわ。お芝居なら、お芝居と最初にいっていただかないと!」
ケチャ、アイカ、裏切ったな!胸が自分たちより薄い女性を集めて優越感を感じたいだけだろう!ゆるさん!
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