精霊王様の大逆襲?
亀です。皆さまお元気ですか。遅くて申し訳ありません。
「タクしゃま。精霊王さま、呼んでう。」
トトトト、と猫バージョンのコジローが俺のところに現れた。うーん、久しぶりにコジローが猫カフェに現れたと思ったら、どうやら、精霊王さまのお呼びだったらしい。
最近は、みんな神化して、いろいろなところで活躍している。コタローとコジローも例外ではないが、時々、元気な様子を見せに来てくれるのが嬉しい。
そういえば、精霊王さま、結婚したと聞いたが、何やっているんだろう。俺は、そう思いながら、精霊王さまの新しい住居に向かった。
「そういえば、黒竜さま、よく、姫さまとの結婚を許したね。」
「うーん、子供できちゃったから仕方ないの。」
うへえ。まさかのできちゃった結婚でしたか。うーん、精霊王さま・・・・・。
「タクしゃま。ここなの。」
ほう、ここが。しかし・・・・・・。
俺は、唖然として声も出なかった。その建物の前には、大きな看板が出ていて、『精霊王〜ヒップホップ教室〜』と掲げてある。精霊王さま!あんた何やってるんですか!
「タクしゃま、入う」
「あ、ああ。」
俺はちょっと驚いて、思考が麻痺していた。
中に入ると、そこには、精霊、エルフ、竜の子供達が並んでダンスレッスンを受けていた。教えているのは、姫さま。いや、美しい。ミリカより美しい人間は見たことがないが、姫さまも同じぐらい美しい。まあ、姫さまはよく考えたら竜だから特別なのか。
その横では、精霊王さまが、子供達にラップを教えている・・・・らしい・・・・。
「お前ら、ラップ、なめんなよ。ラップ、すなわち、それ、い・き・か・た・人生のこ・し・か・た・行ったり来たりの人生で、韻踏む、連ねる俺のフロウ、そして踏む虎の尾、そして言え、ノオ、ヒェー!」
えーと。どこから突っ込んでいいものやら。すると、精霊王さま、俺を見て、指差した。
「ヘーイ、スチューデント、イッツマイマァアアン、タクト!ショーヒムサムリスペクトウ!」
えーとなぜに英語。しかも適当な発音だし。子供達が俺をキラキラした目で見ている。うーん。困った。
「これ、俺のホーミー、タクトォ、こいつ、すごいインパクトォ、怒涛ぉ、の勢い、こいつ、トップを走る、マイク握れば、誰も敵わねえ。信じねえ。」
なんか苦しい韻の踏み方だ。
「えー。ラップを披露してよ。」「先生、僕たちにラップみせてー!」「精霊王さまの師匠ってどんなにすごいのぉ!」
えーと期待されましても。
「ヘイ、タクト、いっちょかましてやれよ、お前のラップ。フリースタイルの化けもののな、みせてやんな。」
はぁ?俺、ラッパーじゃないぞ!好きだけど、趣味で聞くだけだし。もう。
仕方ない。
「Hey YO! Say hey! I say! Say あ!Say what?
Say あ
Sayあ・い・う・え・お!YEH!
明日の朝、ありがたく仰げ、いっぱい、意思をいかんなく言え、後ろをみるな、噂を聞くな、うずくまるな。遠路、は・る・ば・る・永遠を描け、追うもの追い落とし王の姿みせろ!これが、俺のあいうえおラップ、イエー!」
決まった!しかし、みんなポカーン状態だった。
「精霊王さまのラップと違うの!」「もっとへぼいのがいいの!」「もっとダサイ方が楽しいの!」
えーと。ちょっとみると精霊王さま涙目だった。ちょっと待て、みんな精霊王さまのラップがださいって分かってんの?
「ちょっと待て、みんな、俺のラップ、ださくねえぜ、それを俺、証明してやるぜ。このマイクで。」
あ、精霊王さま、マジだ。
SAY, 天下無敵のこの俺様、マイク握って、口上のべるぜ。これから、向上、相乗、効果で、こうか、YEH こうだ。俺は、見せるぜお前に俺の姿。マイメン、タクトにマジ感謝リスペクトゥ、そして、つかむぜ、天下、のぼるぜてっぺん、はげたか、つるつる、光るぜ、ハゲ頭!イェー!」
うーん、出だしは良かったが、最後はナンジャ!
しかし、大受けだ。みんな手を叩いてはやしている!
「精霊王さま!マジ素敵!」「イケメン!」「ダサキング!」「うお、ひどいラップ大好き!」
よくわからんが、こいつらがいれば、精霊王さまも食いっぱぐれしなさそうだな・・・・。
コジローが小首を傾げて囁いた。
「タクしゃまの方がいいと思う。」
うん、俺も同じ気持ちだが、これでいいんだよ、コジロー。
振り向いたら、姫さまがうっとりと精霊王さまを見つめている。
「ああ、なんて素敵なの。」
あ、わかった。女性受けする甘いマスクと、下手なラップが庇護欲をかきたててるんだな。うん。
これからもよろしくお願い致します。




