それいけ、お使いクエスト
お使いは嫌いです。
「でさ、坊主、いやタクト殿、薬草を集めてきて欲しいんだ。」
「そうなんだ、タクト殿、みんな困っているんだ。」
セオドアとケイトが俺のところにお願いを持ち込んできた。なんなの?この冒険者初心者的なお使いクエストは?
どうやら、最近ではみんな冒険者もダンジョンで宝を探したり、素材をはいだりで儲けているらしく、手間も時間もかかる薬草採取をする人が誰もいないらしい。そのため、薬草が高騰して、騎士団もほとほと困っているらしい。その上今度は演習があるので、できれば、薬草の数を揃えたいということらしい。でもなんで俺なんだ?
「それは、お前、一番暇そう、ゲフンゲフン、一番、ボランティアしてくれそうなやつに頼んでいるんだ。この町で一番責任感が強そうなやつを探してだな。」
あ・や・し・い。俺が暇なのは、俺がまったりしたいからであって、断じて暇だからではないのだ。それは、努力して、暇になっているのであって、暇だから、まったりしているのではないのだ。たぶん。
その時、コタローが肩の上に乗ってささやいてきた。
「タクちゃま、僕もいきたいですにゃ。町の外のせかい、見てみたい。」
というわけで、町の外に出てみた。よく考えたら1年ぶりだった。どんだけ引きこもり体質なんだ。俺。ちょっと歩いただけで息がきれるぞ。本当に12歳なんだっけ?俺?
この世界では12歳から一人前なので、ギルドに属してさえいれば、出入りは自由だ。これでも一応商業ギルドのメンバーですし。
ちょっと歩いたら、ブラックベアに遭遇した。
「あ、幻獣様、こんにちは、この変な人間を散歩させているんですか?」
失礼なやつだ。普通の冒険者ならブラックベアにびびって、死を覚悟するだろうが、幻獣たるコタローと一緒なので、びびることはない。だって、幻獣は、モンスターの尊敬を一身に集めているからだ。これが、俺が冒険者になれなかった理由の一つだ。だって、自分の幻獣を敬って話しかけてくる相手を倒せるだろうか。そんな鬼畜なことは誰かにはできても、俺には無理だ。
しかし、歩いていると、動物たちやモンスターたちがコタローに挨拶にやってきてうるさいうるさい。
「タクちゃま、こっちに薬草があるらしいです。」
そんなこんなで、薬草、毒消し草、上薬草などの草をいっぱい採取した。
それだけではなくブラックベアーや他のモンスターからの献上品でハチミツやら果物なんかをたくさんもらった。
午後に王宮の近くの騎士団の詰所に行くと、若い兵士に止められた。
「おい、坊主。ここはガキがくるところじゃねえんだ、帰りな、ひぇ!」
後ろから筋肉ダルマに首を掴まれて持ち上げられたのだ。
「お前、タクト殿に口を聞くとは、10年はやいわ!」
「死にたいらしいな。」
その首に剣先をちくちくしているのはケイトだ。
あ、気絶した。その上もらした。きちゃない。かわいそう。あしたから、こいつのあだ名はおもらし君になることうけあいだ。やれやれ。
「そこらへんで、かんべんしてあげてください。ほら、持ってきましたよ、ご依頼の品。」
たくさん渡すと目をひんむいていた。おかげで金貨5枚ももらえた。散歩がてらにやったにしては、上出来だ。
みんなのためにおいしいミルクでも奮発しようか。
コンビニで全て買ってしまうのはよくないでしょうか。