タクトの神様ごっこ
りんご、ごりら、らっぱ、ぱり、りんご・・・・・・あれ?りんごって、もう言ったっけ?
気がついたら、また、変なところに飛ばされていた。アリーのやつ!こりんやっちゃ!
しかし、ここはどこ、またはいつなんだ?空を見あげると、なんと、太陽が3つあった。うん、ここ、元いたところじゃないね。
しかも、月もたくさんありそうだ。ヤバイ。ここ、どこ?
すると、足元にズズズズ、と這い寄るものがあった。手のひらより少し小さな物体だ。粘菌のようなものだ。これは生物なのだろうか。
ここは、どうやら、完全な異世界らしい。うーん。異世界転生した俺が、また、異世界にいるというのもどうなんだ?
すると、なぜか、俺の力がほんのわずか吸われた気がした。粘菌が、俺に触れたとたんに、ちょっとした魔力の移動があったようだ。そして、その瞬間、粘菌は、輝いて、なんと、見慣れない形へと変貌した。はぁ?進化?まさか、ポ・モン?
形が変わった粘菌が、いくつかできたところで、変わった現象が起こり始めた。
進化した、粘菌群が、古いタイプの粘菌たちを導いて、こちらに寄ってきたのだ。その瞬間、また、古いタイプの粘菌が、進化を遂げた。
どうやら、この粘菌たちの寿命は恐ろしく短いらしい。次から次へと、粘菌は、進化し、分裂し、動かなくなる。
どうやら、この粘菌たちには、雌雄の差はないようだが、2つのつがいが、いないと分裂しないようだ。つがいができた瞬間に、どうやら、何か核のようなものを交換して、そして、4つから8つ程度に分裂する。最初の2つは、分裂したあと、少し、動いているが、じきに、動かなくなる。これが、どうやら、この生命体の死のようだ。
多分、この生命体にとっては、気の遠くなるほどの年月がたったと思う。こっちにしてみれば、たった、5時間だが、もう何世代も粘菌は代替わりしている。
ちょっと眺めていたら、尿意を催したので、粘菌の群れを踏まないように、俺は、離れて排出行為を行った。って、単におし・こしただけだけど。
すると、粘菌が、我先にと争って、俺のおしっ・に群がった。その瞬間、また、進化が起こった。
いままで地面を這いずり回っていた粘菌が、8本の触手で動き始めた。
粘菌は、どうやら、俺の尿があった場所を、聖地か何かに定めたらしく、そこには、大きくて、リーダー的な個体しか入れなくなったようだ。また、俺の周りにも、柵のようなものがいつの間にかできて、その一番上の個体だけが、時々俺に触れに来るだけになった。
そうなると退屈なので、俺は、ちょっと移動してみた。すると、粘菌が作っていた街も移動するではないか!何が起こっているんだ。
それから、更に3時間後、どうやら、この粘菌たちは、かなり変わった文明を作り上げたようだ。
粘菌の集落に生えている草のようなものを加工して、それを乗り物にしたり、建造物を作ったりし始めた。
あいも変わらず、俺の周りは、リーダーしかやってこなくなってしまった。
俺は退屈で寝ることにした。
次に目覚めると、俺は、すっぽりと巨大な建造物に覆われていた。しかも、内部には、精緻な俺の絵が描かれていた。うーん、結構すごい芸術だ。
どうも、それは、絵になっているので、俺も少しだけ意味がわかった。どうやら俺はこの国の神で、俺によって、この国のものたちは知恵を授かり、そして、神の水?によって、ついに文明を得るにいたったらしい。うーん。こんなんでいいんだろうか。
しかし、閉じ込められていては、観察もできない。俺は、瞬間移動を使うことにした。
魔力を集中させて、外に出た。すると、そこには、信じられない光景があった。
完全にそこは、大きな都市となっていた。奇妙な乗り物が、地上を、そして、空をも埋め尽くしていた。うーん。
すると、粘菌たちは俺が移動したのに気がついて、周りを囲んだ。しかも、どうやら、俺を崇拝するような態度を示した。うーん、俺は、神ではないんだがなあ。
「パパ、神様になったん!」
お。この声はるーたんか!えらい、見つけてくれたんだな。
「あ、みんなが、神様、ありがとうっていってるん。」
「るーたん、言葉がわかるのか?」
「うん、なんとなく。」
「じゃ、これから、俺たちは、別の世界に行くけど、頑張れ、また、いつか戻ってくるから、心配するなって、いってくれ!」
「わかったん。」
それから、るーたんは、ちょっと妙な顔をした。
「なんだか、みんな、神の水を最後に欲しいっていってるん?何、神の水って?おいしいん?」
ああ、あれか。ちょっと俺はうんざりしたが、るーたんに後ろを向くようにいった。後で、家に帰ってから、いいものあげるからとなだめすかした後にだけど。
「パパ!みんななんだか、とってもよろこんでるん!」
「そうか、みんなに伝えてくれ。俺はタクト、そして、皆のことをいつまでも思っている。仲良く平和に暮らしてくれと。そうすれば、また、帰ってくると。」
「わかったん!」
そして、俺たちは、懐かしい、と言っても1日ぶりだけど、猫カフェの前に戻った。
「パパー、どうして、さっき、おしっこしたん?神の水はどうしたん?」
るーたんが、俺に聞く。るーたんや、知らなくていいこともあるんだよ。
俺はドアを開けて言った。
「ただいま。」
そして、みんなが微笑んで俺に言ってくれた。
「おかえりと。」
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