宇宙エレベーターを見あげれば
いつもありがとうございます。
気がつくと俺は恐ろしいほど高い構造物を見上げていた。ここはどこだ?
「あんたも、あれが気になってここに来さったのかい?」
老人が俺に話しかけた。
「え、ええ。すごく高い構築物なので、驚いています。」
「あれが、宇宙まで伸びているっちゅうんだから大したもんだ。宇宙エレベーターってやつは。」
俺は、一番上を見ようとしたが、上の方は雲の上で霞んで見えなかった。
「あれで、ステーション経由で、第1の月に行けるっちゅうんだから大したもんだ。あんたは、もう処理を受けなすったかい?」
「処理?」
「ナノマシンのこった。」
「ああ、それならもう。」
「わしはあんまり好きになれねえが、時代っちうやつだな。うちの孫なんかは、生まれた時から、ナノマシンを注入されてっからな。もう、スクリーンさ、見るっちゅうことすらしねえらしいな。」
たしかに、俺も望めば窓が開いていろいろ教えてくれるが、あまり、好きじゃない。そう爺さんに言うと、嬉しそうだった。
「だべ?自然が一番だ。人間さ、いじり回したってろくなことねえ。じゃあな、兄ちゃん。」
爺さんは、スタスタ行ってしまった。
それにしてもどこだ?ここ?これは、夢の中じゃないな、すると現実か?
「やっと見つけたにゃ!」
「お、ミケ!ここ、どこだ?」
「うーん、それは、ここどこだ、じゃなくて、ここいつだ?かな?」
どうやら、俺は時間跳躍をしてしまったらしい。しかし、俺にはそんな能力はないぞ。
「違うのにゃ!こいつのせいにゃ!」
ミケの後ろから、すまなそうに、アリーが出てきた。
「タックン、ごめんなさい。夜、抱きついてたら、力がタックンから流れ込んできたから面白くなって、ずっと、吸い込んでいたら、いつの間にか、タックン、消えちゃって。」
どうやら、アリーのせいのようだった。
そして、俺たちは、元に戻った、はずだった。
はぁ?フクロウカフェ、ミツキ????
俺が戻ったのは、同じ家だったのだが、フクロウカフェに変わっていた。
「にゃ?これは?アリーまた、何かした?」
「ううん、お姉さま、何もしてないわよ!」
俺は、アテナさまとアルテミスさまを探しに行った。
「もう、あんた、誰かと話したでしょ?だから、この時間線にとばされたのよ。あんたが話したのは、科学大臣で、あの後、ナノマシン禁止キャンペーンを打ったのよ!あんたのせいよ。」
「でもそれだけで、こんなに、時間線が狂うもんなんですか?」
「あたりまえだのクラッカーよ!」
うーん、古いギャグだ。
アテナさまが話し始めた。
長い時間の中では些細な違いも、大きな誤差に繋がる。キャンペーンのために、長生きできなかった子が存在し、どんどんその誤差は大きくなった。まあ、ここの時代のタクト、ここでは、ラルフなんだけど、そっちも頑張ってるから、あんたは、元の時間線にお戻り。
そして、一気に何かが捻られた感覚があり、気がつくと、いつもの猫カフェの前だった。
「なるほど!やり方がわかりましたにゃ!」
「じゃ、ここのあたしにもよろしくね。」
アテナさまと、アルテミスさまは、消えた。
「おかえり。向こうの私たちに送ってもらったのね。」
隣の家の窓から、アテナさまとアルテミスさまが、こっちを見ていた。
うーん、わけがわからん。
「アリーもこれに懲りて、タクトの魔力をあまり吸わないようにね!」
まあ、何はともあれ、元に戻ったからいいや。俺は、アリーの頭を撫でると、我が家に帰った。ここが一番だな。うん。
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